最終話 聖獣様のもとへ
聖獣、それは、創造神が作りだした世界のバランスメーカー。
世界に災いがもたらされた時、知恵や力を選ばれし者に授け、平和へと導いてくれる。
と言い伝えられています。
大きな円卓の周りを英雄パーティーや魔王軍幹部が集まっています。
リーダーのレンチョン様が張り詰めた空気の中、話始めます。
「皆、忙しい中良く集まってくれた。」
忙しかったのは、魔王様の子守りをしていた僕だけです。
「準備は、整った。 聖獣様の元へと行こうと思う。」
僕の背中には、3歳にみたいない魔王様がいるのですが良いのでしょうか?
「今度こそ聖獣様を倒すぞ! エイエイオー!」
「「「「「エイエイオー!!」」」」」
「はぁ!?」
聞き間違いですか?
なんかこの人達とんでもない事言いだしてませんか?
「・・・・あのぉ~、質問良いでしょうか?」
「安心すると良い、トイレに行く時間は、ちゃんと設けてある。」
全然違います!
「いえ、そっちじゃなくて、さっき聖獣様を倒すと聞こえましたがどうゆう事でしょうか?」
「えっ?」
皆が驚いたような変な表情になっています。
警備の兵隊達までもがあり得ない者を見るような目で見ています。
あれ、僕が間違っていたのでしょうか?
「ふむ、フル、ポンタは、知らなかったのだな。 フル、ポンタ実はな・・・・」
「あっ、呼びやすい方で良いです。」
「実はなフルポン、我等は、あの聖獣様に騙されていたのだ!」
名前統合されちゃったー!!?
「・・・・い、いったい何があったのですか?」
「あれは、そう雨が降る・・・・おっと、時間だ! 出発するぞ~!!」
「「「「「おお~~~!!」」」」」
良く分からないまま、聖獣様を倒す旅に出る事になりました。
何故か王都へと戻って行くパーティー一行。
そして、立ち寄った町は、王都の近くでありながらも戦争拠点としても価値が無く、魔物の出現もほぼなく、始まりの村と呼ばれていて、この世界でも珍しく、平和な所、僕の実家がある村です。
「・・・・あの~、何故ここに?」
「良い質問だ、この村のすぐ裏にある山脈に兎が住む山があると聞いた事はあるか?」
「あ、はい。 おとぎ話で聞いた事あります。」
「そここそが兎型聖獣・麗兎の縄張りなのだ!」
「!?」
実家のすぐ後ろが最終目的地!?
この長旅は、いったい何だったんでしょうか?
「驚くのも無理はない。 これから我々でも苦戦する相手と戦うのだからな。」
違います。
僕は、それよりも大きい問題に直面しています。
「あまり長い話をしてもアレだな。 明日の朝出発するから、親と久しぶりの再会を楽しんでくると良い。」
なんか僕も一緒に行くような話になっていますが神話級の戦いが始まる場に僕必要ですかね?
とりあえず言われるがまま、実家へと顔を出しに行きました。
「誰だ!!」
しまった~!!
ポンタのままでした!
必死に今までの経緯を説明します。
「・・・・、まさか、息子が娘になって帰って来るなんて。」
「アナタ、しかも子連れよ。」
しまった~!!
魔王様、おんぶしたままでした!
この後、朝までしっかり、家族会議が開かれました。
家族会議から逃げる様に英雄パーティー一行と合流しました。
「目にクマまで作って、よっぽど別れが寂しかったのだな。 だが安心してくれ! すぐに戻って来れるさ!!」
違います。
一睡も出来なかったからこんな事になっているのです。
ちないみに魔王様は、しっかり寝ていました。
山の1合目を登った所で。
「いたぞ!」
早い!
本当にすぐに戻れそうです。
すると大きなモフモフの可愛い兎から聞こえて来るプリティーな声。
『貴様達、コリもせずまた来たのか?』
「今度は、勝たせてもらうぞ!」
『ふん、何度やっても無駄な事だ。』
「こちらは、この日の為に考えうる最強のメンバーを集めたのだ!!」
『・・・・そこの新顔もか?』
「そうだ!!」
聖獣様がボクの方に視線を向けてきました。
違いますよ~。
僕、まったくの無関係ですよ~。
「今日こそは、その肉食べさせてもらう!」
『何度も言っているが我が肉を食べさせる為に負けてやるつもりはない!!』
「・・・・はぁ?」
何か急に低レベルな言い争いになったような気がしますが・・・・。
「あの、質問良いでしょうか?」
「どうしたのだフルポン。」
「聖獣様のお肉がどうとか聞こえたのですが?」
「そうだ! 兎種の魔物ホーンラビットの肉でさえドラゴンの肉を超える美味しさ! 聖獣様ともなるときっと超美味しいはず!! だが拒まれるのだ!!!」
「・・・・当たり前だ~~~!!!」
僕の叫びもむなしく、聖獣様と英雄パーティー一行の戦いは、始まってしまいました。
僕は、さっとこの場を離れて、村へと戻りました。
「大変だ! 神話級戦いが始まった! この村は危ないから逃げるんだ~!!」
「「「「「誰だお前!?」」」」」
「それはもう良いから! 早く逃げて~!!」
こうして、歴史に新たな1ページを追加する・・・・わけにもいかず、美化された話が後世に語り継がれたのです。
ちなみに戦いの決着はというと・・・・アホらしくて墓場まで持って行く事にします。