一歩目 旅立ち
僕は、貧しい農民の家に産まれ、フルッチと名付けられた。
父カースと母アルは、貧しいながらも僕を立派に育ててくれた。
運が良い事にお城務めとなった僕は、この職を逃すまいと一生懸命頑張り、今では、後輩の指導を任せらる様になり、実家共々生活が安定していた。
そんなある日、執事長に呼び出された僕は、何か粗相をしたのかとドキドキしながら執事長室へと向かう。
トントン トントン
「ヒノノニトン。 フルッチです。」
「入って良し。」
「お呼びでしょうか?」
僕の顔を見た執事長は、書類仕事を止め、一息つき、話し出す。
「罰する為に呼んだわけではないからそんなに怯えなくて良い。」
「では、どのようなご用件で?」
「これからする話は、一切他言してはならない。 もし、外部に漏れたら未曽有うの危機にさらされるだろう。」
「・・・・はい。」
「賢者マキヤットゥ様は、魔王が一月後、復活するとおっしゃられた。」
「!!? ・・・・、早すぎませんか!! 5年前に勇者様達が倒したはずです!!」
「その通りだ。 だがおかしな事態だという事は、英雄として一緒に魔王を討伐なされた賢者マキヤットゥ様が一番わかっていらっしゃるだろう。」
「・・・・はい。」
「そこで君には、各地にいる英雄達に国王様の手紙を届けて欲しい。」
「!? そんな大役、私には、荷が重すぎます!」
「・・・・、今回騎士や長職の者ではダメなのだ。」
「何故ですか?」
「他国のスパイや敵の目があるからな。 私達が動けば、おのずと監視が強化され、情報が漏洩する恐れがある。」
「他の使用人ではダメなのですか?」
「仕事ぶり、人間性、身分、どれをとっても君が一番適任なのだよ。」
僕は、嫌とは断れず、部屋で荷物をまとめていた。
まずは、勇者様の所へ行けと言われている。
荷物を背負い、慣れ親しんだ部屋を出る。
すれ違う同僚達。
「おっ、フルッチ、もう行くのか?」
「大出世のチャンスじゃないか? フルッチ。」
「フルッチ、お土産話期待してるよ~。」
「何で皆知ってるの!?」
「何でって、賢者マキヤットゥ様が街の真ん中で英雄話の続編って事でフルッチの事言ってたからな~。」
「何してくれちゃってるの!?」
そこへ、巡回の兵達がやって来て、僕を取り囲む。
「情報漏洩により、貴様を拘束する!」
「いや、僕じゃないですよ!?」
「最初は、皆そう言うのだ。 大人しくついて来い!」
「いややゃゃゃ~~~~!」
僕は、牢屋に入れられ、執事長が迎えに来るまで出られなかった。
「・・・・何やってるんだ君は?」
「・・・・僕が聞きたですよ。」