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お父さん  作者: 炎華
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悪性リンパ腫

かのさんが父を連れていくのをあきらめて帰ってしまった数日後、

父は癌研で気道にできた腫瘤をとってもらうことになった。

お隣りのご主人のかかりつけの病院では、

専門の医師がちょうど出張でおらず、

週明けに帰ってくるということだった。

それを待っていない方がいいというくらい、

父の腫瘤は大きくなっていた。

そこで、紹介状を書いていただき、癌研へ行くことになったのだ。


そのときから長くお世話になる癌研有明病院は、以前は大塚にあった。

正式名称『公益財団法人癌研究会 有明病院』。

今でこそ、ヘリポートもあるピカピカの大きな建物だが、

当時は普通の古い病院だった。


-悪性リンパ腫-


ここにきて、やっと父の病が判明した。

「最悪よ。」

父が入院した夜にかけてきた電話で母は言った。

最初に父の奇行を知らせてきたのと同じように、

何の感情もその声には含まれていなかった。

「喉の所にできたものがすごく大きくなってて、

もう少しで気道を塞ぐところだったんだって。

『気道を完全に塞いだら、死んでましたよ。

どうして、もっと早く連れてこなかったの?』

って先生に言われたよ。

そんな事言われたってねぇ。」

そんな事言われたってねぇ。

母に同意を示す。


担当の先生が、図を描いて丁寧に母に説明してくださったそうだが、

治療法、病状など説明を受けた事を細かく記録にとっておくような人達では無い。

全て「先生にお任せ致します。」状態なので、

父の悪性リンパ腫が、どの種類なのかとか、

何の薬をいつ、どのくらい、何度投与されたのか、とか、一切わからず。

「俺はそういうの、とっておかないんだ。」

未だに自慢げに仰いますが、お父さん、ちっとも偉くないです。

プロにお任せの姿勢が悪いとは言いません。

説明されてもわからない、という言い分もよくわかります。

しかし、もし万が一、何かあったときや再発してしまったときなど、

特別な、しかしあり得ないことではないできごとが起こった場合の事を考えれば、

先生の書いてくださった紙類をちゃんととっておくべきだったのです。

そうしておいてくれれば、私がこれを書くのにこんなに苦労はしなかったのです。

これがどれだけ重要なことかおわかりですか?お父様。


もう終わってしまったことを嘆いても仕方が無いので、

インターネットや本で勉強したことを、小出しに記そうと思う。

ここに書いたことは、15年以上前のことなので、

現在と違っていることもあると思う。

なるべく、新しい情報に訂正していこうと思っております。


まず最初に。

1.悪性リンパ腫とはなんぞや。

インターネットでは『血液の癌で、リンパ系組織から発生する腫瘍』とある。

『みんなに役立つ 悪性リンパ腫の基礎と臨床 押味和夫(敬称略)著 第三刷』

の序章によると、

『悪性リンパ腫はリンパ節などのリンパ組織からだけに発生するとは限らず、リンパ球は体の至る所に存在するため、リンパ節以外にも、あらゆる臓器から発生する。』

とある。


皮膚から、鼻腔から、胃から、C型肝炎ウイルスから等々、リンパ腫は発生し、個々の臨床経過、治療反応性、もちろん治療法、そして予後が大きく異なる。

大きく、『ホジキンリンパ腫』と『非ホジキンリンパ腫』に分かれ、日本では非ホジキンリンパ腫の方が多い。

インターネットの情報によると、ホジキンは日本では10%とある。


確か、『ホジキン』の方が治る確率がすごく高かったと記憶している。

当時、悪性リンパ腫を患った方のブログなどをいくつも読んでおり、

『ホジキン』ですとドクターに言われ、ほっとして泣いたというのを読んで、

父もホジキンだったらいいのにと思っていたのだが、

私が唯一目にしたドクター著の紙の一部に、『CHOP』の文字があったので、

父は『非ホジキン』なのだということがわかった。

『CHOP』とは治療法の一つで、現在は『R-CHOP』療法となっているらしい。

それについては後に詳しく書くので、ここではさわりだけにしておく。


今、もう少し調べてみると、

『非ホジキンリンパ腫』は細かく分かれており、

症状と療法から、父の悪性リンパ腫の種類は、

『非ホジキン性 濾胞性リンパ腫』

だったのではないかと思われる。

高い確率で再発とあるのだが、父はこの15年以上の間、一度も再発していない。

しかしながら、その後、腎臓癌、前立腺癌、大腸癌に罹っており、

それを再発というのなら、『癌』として再発している、といえる。


最初、癌だと言われ、まだ悪性リンパ腫とはわからなかったとき、

てっきり脳に腫瘍ができて奇行に走ったのだと思っていた。

後に調べたところ、悪性リンパ腫では脳に異常が無くても、

周囲が異常に思う行動をとることがあるらしい。

そして、本人は覚えていないそうだ。

父も常に幻覚が見えていたわけではなく、ほとんどの時で正常だった。

当日、癌研までお隣りの奥さんもついて来てくださったのだが、

行きの車で、父は奥さんに、見えた建物の説明をしていたらしい。

だが、そのときのことは「全然覚えて無い」という。

気がついたら、病院のベッドの上だったそうだ。



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