表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

雪柳 

 春休みも残すところあとわずか。お彼岸で帰っていた親戚連中がそれぞれの家に戻る日がきた。玄関先に荷物を置いて、のんびり雑談してたと思ったら――。


 出立の時間になって、一番下の従姉妹の姿が見つからないらしい。大人たちは大慌てだ。大声で名前を叫んで探し回っている。広い屋敷に広い庭、どこもかしこも大騒ぎ。


 知ってるのに、あの子の隠れる場所くらい。訊けば教えてあげるのに。


 僕はこっそり庭におりた。




 ほら、壁に沿った庭の外れ。幾重にも被さる雪柳の花の下。揺れる白波の間をぬって、重たげな枝をそっとよけると――。


 白い木綿のワンピースが丸くなってる。見つけてもらうのを待ちくたびれて、眠りかけてる。


 呆れ顔の僕を寝ぼけ眼が見あげてる。彼女は口を尖らせて、顔をしかめて人差し指を立てている。


「しいっ! ずっといっしょにいてあげるからね」

「僕のため?」


 僕は彼女のどんぐり眼をのぞきこむ。彼女はあひるのように口をつきだして大きくうなずく。


「なんで?」


 頼んだ覚えなんてないんだけど。


「お嫁さんになってあげるって言ったでしょ」


 嘘だろ! どうやら僕は売約済みらしい。

 流れる白いベールを被った子に、永遠の愛を誓われた。


 純白の雪柳の下で――。





 

観月さんの、「花言葉ものがたり」(自由参加コラボ作品)に参加させて頂いた掌編に、加筆したものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ