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61話 神話世界の再来ですか?

( √˙ω˙ )√えい、しゃぁ、とうこうしたよ

 殴る。ただひたすらに殴る。殴って殴って殴って殴って、見渡す限りの紫に近いピンク色の肉を、殴って殴って傷つけていく。


 弾力のあるその中身だったが、消化器官を特に必要としていないのか全く胃液などの危ない液体が満ちることもないので、要は蒸し暑さとの我慢比べだった。


 しかし、忘れてはならない。本来の記憶を取り戻した俺が出来ること、それは付与魔法である。


 自身の呼気に氷属性を付与したとしたら?


 そう、この蒸し暑い蛇の腹の中もすぐに冷えて、ただの快適空間へと変わる。


「いやー、なんでもっと早く気づかなかったかねー」


 まぁ、呼気に付与魔法使おうとか考える方が馬鹿らしいというか、頭が多少逝っているのは確かなのだが。


 壁が次第に冷気で冷えて、氷で固まっていく。肉の内側も凍っていたのか、殴るたびに氷が砕けて肉が一緒に砕けて行った。


「うわ、さっむ……全身に炎熱属性を軽くかけとくか」


 幸い、時期が時期なだけに来ていた服は薄い長袖のTシャツとジーパン。大して熱はこもらないだろうと思う。あくまで予想なので、生地の成分がどうとか突っ込まれだしたら色々と困るのだけれど。


「さて、どうするかね。なかなかどうして、こいつの肉はぶ厚いじゃないか。流石にただ殴り続けるだけじゃあ無理があるかね」


 なかなか終わることのない掘削作業にイラつきつつ、俺はただひたすらに相手を殴ることに従事したのだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 地上に乱立する、何本もの蛇の柱。


 人間への憎悪を吐きながら人を食らっていく魔物は、大元の蛇一体を元に無限に増え続ける。


 本来であれば魔力が足りず、増殖は頻繁には行えない。しかし、日本で今回1番最初に捕えられた人間は速水映士。



 規格外の魔力を兼ね備えた人間である。



 彼の、その無尽蔵というほかないそのエネルギーは、いくら減らされようとも時を追うごとに回復していく。


 それもなんの代償もなしに。


 そんな動力源を得てしまえば、あとは最初の一体が子機に必要なエネルギーを渡せばいい。


 それだけで勝手に人間を食らってエネルギーを得る独立兵器となるのだから。


 そして今、日本政府は各国に救援の要請を出したが一向に返事が来る様子はない。


 これは日本政府も知るよしのないことだが、本日午前、日本以外の国は滅ぼされてしまったことに起因する。


 多くの神性住まう国を後者に回し、最後に日本の八百万(やおよろず)の神性を喰らい、破壊し尽くした。


 もとより内側にいた蛇たちの行動も活発化し、より激しくなった一方的な蹂躙が、次第に各地を覆い尽くしていく。


 そのような怪異に対応できるかつての特性を残した都市、街などならある程度耐えることは出来たが、そうでない地域は一瞬にして壊滅。


 人間はただ、蹂躙されていく様を見つめて、ただ滅んでいくことしか出来なかった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ちょっと、あんたの言っていた協力者たちはどうしたのよ!?」


 轟音を立てて崩れ落ちるビル、ごうごうと燃え盛る街並みをみて、シルティスはバルトラに吠えた。


「それは仕方なかろう、この国の八百万の神性すら破られたのだぞ!? 他なる国にもかなりの神性たちが残っていただろうに、それを倒してきたというのか!?」


『端的に言うとそういう事になりますね』


「イリア、あんた今までどこ行ってたのよ!?」


『ちょっとこの非常事態なので各地の神性が如何程のものか調査をしてきたのです』


「なるほど。結果は以下ほどかな、女神よ?」


『この世界の神性、神性をもつ人に髪と崇められている者達は、神性を与えられた自然現象、または神性を与えられ、世界的に名を馳せて多くの人間が共通の認識を得ることが出来るようになった人物の虚像です』


「つまり?」


『人からの信仰、そして観測されることが減ると極端にその能力が下がるのです。故に、人を先に滅ぼされれば彼らはなすすべなく崩されていくのです』


 丁寧に説明されても簡単に理解出来ることではない。自分達の世界を滅ぼさせないため、宇宙を滅ぼさせないためにこの星から帰ろうとしていたのに、その出発点の世界諸共自信が消滅の危機にある。


『恐らく、ほかの陸地の蛇たちの増殖源はこの神性たちのものと思われます。この島国の増殖源はキモヲタクソ。まんまとやられてくれましたですね……』


 無闇矢鱈に神性の能力を使うと、この星の破滅に加担しているであろう本来の神性に邪魔をされる挙句、自分自身が増殖源として食べられかねないので、イリアは一切の能力の使用ができなかった。


「くっ、こうなれば仕方ない。第3班、第7班、魔力砲の準備を、第4班、第8班は自警団の面々へのフォロー、第2班、第5班、第6班は魔力砲の魔力補給のため、手頃な蛇を狩って魔力炉にぶち込め! 第1班、そして第9班以降は我らと共に戦地に赴く、今は死ぬ気で我らがテリトリーを死守するぞ!」


 うぉぉぉ、と所員たちから特大の歓声が上がる。行軍だァァ! と、時代を間違えた雄叫びが聞こえるが、もう誰も何も突っ込まない。なぜなら、これより再現されるは神代の戦争。


 悪しき大蛇の群れと邪神を倒すために奮闘する、ごく小さな魔術兵団の戦いの記録。


 それがハッピーエンドになるのか、バッドエンドになるのか。すべての賽は投げられた。


 あとは役者がどう動くかのみである。ἐλπίςが自身が生まれてきた意味と与えられた役割の矛盾に気がつくか。それがこの周回の命運を分けるのだ。

読んでくださりありがとうございます(*´ω`*)


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