56話 彼女は何者ですか?
( 厂˙ω˙ )厂……とうこうしたよ
「うにゃー、なかなかそれらしいものは見つからないねー」
「お前が探すのが下手なだけだろ常考。俺はもう10数件見つけたぞ」
「うぇー、ヲタミンが本格的にヤバいやつに見えてきたにゃー」
柳沼のストレートな悪口を無視しつつ、俺は今日も市営図書館のパソコンに向かってキーボードを叩く。
図書館でパソコンをいじって情報を探し始めてから4日。昨日から割と手広い範囲で調べるようになり、俺は数人の『転移経験者』と名乗る人間とコンタクトをとることが出来た。
普通こんなにわかりやすく移動をしていれば、警察はすぐに俺たちのことを見つけてしまうのではないかと思っていたのだが、俺達がいなくなっても構わないとか、いなくなることが分かっていたとかそんな様に思える、ガバガバな捜査を行っているようだった。
多くの人のが通る大通りがあって、なおかつ監視カメラも常備されているような市の施設。警察が目を通さないなんてことがあるだろうか?
まぁ、分かりもしない日本の治安組織の内情を考えても仕方ないのだけど。現状を考えれば見つかって保護されてしまい何も行動が出来なくなるよりは遥かにマシだ。
……さて、これが吉と出るか凶と出るか。
「おい、柳沼。俺は少ししたら昨日掴んだ記事の主とコンタクトが取れたから会いに行ってくる。お前はこのまま探しとけー」
「あいあいさー、閉館時間になったらアジトに戻ってるからにゃー、そこんとこよろぴ」
「パリピぶるのウザイからやめた方がいいぞ? どれだけ頑張ってもお前が漫研の姫、つまりヲタクのアイドルであることに変わりはないからな」
え、ちょっと、じゃあアイドルヲタクってなんなの? と叫ぶ柳沼の声が聞こえたが、意味のわからない質問を受け付けるほど俺はお人好しではない。聞こえないふりをして俺は図書館をあとにするのだった。
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ヲタクの街として有名な秋葉原という街がある。この街は、さすが都会といいたくなるほどにものの揃いがよく、多種多様なヲタクたちの趣味に対応していて、地方のヲタク達にとっては理想都市のような場所だ。
俺もその意見には全くもって同感で、うちの嫁たちの大部分はこの街で買ったものや、この街から送られてきたものである。まぁ、なんか変なこだわりで秋葉原からのものを選んでいる自分がいるのは確かだ。
聖地最高、聖地万歳。
そんな理想都市の駅前、アイドルの劇場があるところの前に今俺はたっている訳だ。
いや、断じて俺にそのような、3次元にかまけるような趣味がある訳では無く、今から会う相手がこの劇場の前を指定してきたのだという補足をしっかりとしておこうと思う。
そう、断じて俺は3次元の女子には興味はない。汚物は消毒、3次元は洗浄。すべてが2次元になれば万々歳だと思ってます。
さて、そろそろ彼が訪れる時間となずなのだが、おかしいな……一向に現れない。事前に貰っていたメールアドレスに今どこにいますか? とメールを打つが返答がない。いやー、これはやられたか? デマ掴まされたか?
あー、ちょっと期待してたんだけどな……帰るか。今は金を惜しんでいられない、そんな気がするから無駄にはキレないでおいてあげよう。
「ちょ、ちょっと……」
「はい?」
俺の服の袖を、そのか細い腕で引っ張る小柄な重装歩兵が1人。
え。
「私が、あなたを、呼んだ……あ、えと、その……叶 光」
「えっ、女子!?」
田舎者から見ると、典型的な都会スタイルと思われるスタンダードなヲタク兵装。白地に赤い線のチェック柄のシャツをジーパンにインした、独特な格好の女子が現れた。
黒縁の丸メガネとマスクで覆われたその顔面は、3次元に対するフィルターだと言わんばかりに強固な防御性を感じた。
「は、はぁ、一応女子という扱い、大きな括りだと」
「いやぁ、てっきりメールでの話し方が男性みたいだったので男の方と勘違いしてました」
「まぁ、むしろ、女子だと分かって、うっほーいとか飛び込んでくる、パリピクソ野郎じゃなくて安堵……」
ジロジロと俺の顔を見た後、再び彼女が口を開いた。
「ヲタクか……そうか」
「え、えぇ、僕もあなたを見て同じ感想を抱きましたよ……ただちょっとあなたの方が僕よりも根深い何かを感じましたけど……」
俺も自身でかなりのものだと思ってはいるのだが、彼女は度を越している。生まれながらにしてヲタク、ヲタクになるべくして生まれたヲタク。そんな印象を受けた。
「さて、私が、あの世界に行って得た能力、それらを、見せて欲しいの、だね?」
「唐突ですね。でも、そうです。出来ればその時のお話もお聞かせください」
うん。この人には強く出れないや、なんか怖い……何故かわからないけど何かが怖い。
「では、少し場所を、変える、か……」
そう言うと、彼女はついてきてと小さく呟き、スタスタと歩き出した。
「……本当に大丈夫かな、この人……」
思わず口から漏れてしまったその言葉を、俺はそのすぐ後で訂正することになる。
なぜなら、彼女は世界間移動に最も肉薄した魔術師だったからだ。
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