52話 現実はヌルゲーですか?
( 厂˙ω˙ )厂さぁ、3章の話をどんどん進めてくですよー!
「ステータス、オープン」
何となく呟いてステータスを開いてみる。言葉に明確な意味はなく、ステータスを開こうと意識するだけで勝手にステータスは開いてくれた。
柳沼の家から帰宅する時にステータスを出しながら一通りの多い繁華街を通ったが、誰にも気づかれることはなかった。
柳沼の説明によると、自分で他人に見せようとしない限り見られることはないということだったので、まぁそういうことなんだろう。
「異世界召喚……」
痛む頭を抑えながら、ベッドに倒れ込んだ。
―エイジ、ἐλπίςを受け入れろ―
頭の中で鳴り響く意味不明な単語は無視して現状を簡単にまとめようとする。
「柳沼の言っていることは嘘ではない。それはなんでか分かる……けど」
俺はまたなにか、人知れずに非日常に巻き込まれていたのか。
この記憶が消えているという状況だっておかしい。前例である柳沼がすべて覚えてきているのに俺がすべて忘れてこちらに戻ってきているのだ。
「なんで、俺は何も覚えていないんだ?」
ステータスを指でなぞって上から下へとスライドする。柳沼に見せてもらったものとは違い、俺のステータス欄にはスキルという欄に、異常量の特殊能力の説明が書かれていた。
正直数えるのも面倒くさかったので、柳沼が何故か俺の持っているスキルの数を1000個と覚えていてくれて助かった。
なんでも、俺は召喚時に最初に出会った神様に色々と絡まれていたらしく、大体の生徒教師は俺のステータス、主にスキルの多さについて把握しているらしかった。
「……」
―エイジ、ἐλπίςを受け入れろ―
自然と口数は減り、何もやる気が起きくなる。うるさい声を聞かないようにと努めても、響いてくるものはどうにもならないし、ただただグダグダと過ごす時間が長くなるだけだと頭で理解はしていても、実際になにか行動しようとすると、全身に粘っこい何かが絡みついて、俺の行動を遮ってくるような感覚があった。
同時に体の内側から、なにかに疲れきった時のような虚脱感に攻撃されてその場から動くことが出来ず、気がつくと既に日は昇って翌日の朝になっていた。
「朝か」
朝は嫌いだ。いつも部屋にこもって基本的に昼夜逆転生活をしているから明るいのになれないというのもあるけれど、それよりも俺は、あの惨劇をたった1晩で無きものにしたこの世界が嫌いだから。真実を照らすことの出来ない光なんて、無意味だ。
相変わらず、この年になっても厨二病のような思考は抜けきれないなと、ゆっくりと体を起こす。
昨日の柳沼の話だと、学校は完全に閉鎖されていて生徒全員が行方不明との事だったので、俺達が見つかると、取材やら事情聴取やらで動きづらくなるから近寄らない方がいいということだった。
柳沼に連れていかれたあの家は柳沼の父親が不倫相手に与えた家らしく、今は誰も使っていなかったので彼女が有効活用をしているようだ。俺も今日から荷物を持ってあの家にしばらく泊まりこまなくてはいけないらしい。
全く、何も覚えてないのに、みんなのためにあの世界に戻らなくちゃとか唐突に言われても、こちとらそんな急なテンションについていけねぇっての。
カバンに数日分の着替えと日用品を入れ、電波が届かないところにある扱いになっているケータイを急いで電源を切る。
日常的にモバイルデータ通信を自分でオンオフする習慣があったおかげで今までは恐らく誰にもバレずに住んでいただろうが、それもそう長くは持つまい。ほんの一瞬でも付けてバレたら大変だ。未練を断ち切る意味で家に置いていくことにした。
何故かもう戻ってこない気がする。そんな気さえしたが、1000を超える大切な嫁やグッズたちを持ち出すことは出来ないので、日々の着替えを痛Tにすることで気を晴らすことにする。
「よし、いくか……」
ダラダラと準備をして日が頭の真上に上がった正午頃に、俺は柳沼の家(正確には違うけれど)に徒歩で向かった。
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世界を超えるということは、人生をやり直すということだ。
本来ほかの世界の記憶があってはならない。
転移、転生で記憶が残っているのは、本来ありえない事象を、我々神が意図的に起こすことで、シナリオから外れた世界の道筋を元に戻すために行うことだ。
世界には各世界ごとのシナリオがあり、新たに世界に来訪する人間も含めたシナリオが最初から描かれている。
全ての人間は死ぬべくして死に、生きるべくして生きる。
それが、世界間移動を実現した知的生命体の宿命である。
知あるものは端的に言うと世界に対する毒だ。
故にほかの世界で得た知識は、自然な転移、転生であればほかの世界には持ち込むことは出来ない。
ただ一つ、シナリオに外れた人間の転移を除いては。
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「頭がくらくらする。ここはどこ? なんなの、この不思議な建物。ここは、まさか彼らが言っていた、ネオンワールド?」
東京で1番高い建物の頂上で、爪先立ちでバランスをとる少女。
「オーバーライトが本人と接続してなくても何故か使えたのはちょっと謎だけど、ここにご主人がいるのなら」
シルティス・ゲオルギウス。歴代の中で1番強いとされた勇者の従者。そして、人間の味方として、王国周囲の4魔王を下した最強の魔族の姿がそこにはあった。
「まっててね、ご主人」
その声は、びゅうびゅうと吹き荒れる風にかき消され、直後、その場には誰もいなくなっていた。
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