表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
9/22

語らずの武具職人

メモの位置を章の最初に持ってきました。確認したい方は章の最初を参照にして下さい。

2017/12/04中にメモは更新する予定です。

「ミギル?」


 そう声を漏らしたのは隼人だった。


「ミギルと言えば、ガーディアの公爵もそんな名前だったわね」


 綾香が同調する。

 この世界では”ミギル”という名は一般的なのかもしれないが、そんな紛らわしい一般的な名前を公爵が使うとは思えない。となれば、目の前の青年が普通ではないのだ。


「ええ、よく言われます。とはいえ、このミギルという名はそのミギル・デイファン公爵様ご本人から頂いた名前なんですよ」


 何でも、カーン家は代々鍛冶屋を営んでいるそうで、鉱石を扱う関係でガーディアとその領主であるデイファン家には昔からお世話になっているそうだ。

 知り合いから名前を貰うこと自体は結構あるらしい。


「さて、この彫刻台の話でしたね。これはガーディアから取り寄せた鉱石をここの主に加工して貰い、私が魔紋を彫刻したものなんですよ」


 この建物自体は鍛冶街通りの出来る以前からある建物だそうだ。

 しっかりした造りと設備、鍛冶街通りのメイン通りから少し外れていることが考慮され、当時の敷地を維持出来ているとか。


「製造はここでするとして販売もしているのか?」


「いえ、販売は特にしていません。試作品を作ったり、デイファン公爵様からの依頼に合わせて製造を行ったりしています」


「そうすると、ミギルさんは皇帝派ということでしょうか?」


 メモ帳とペンを手にフィーエルが乗り出して聞く。

 記者を意識しているのは分かるが、あからさま過ぎる気がしないでもない。


「別にそういう訳ではありませんよ。どちらかと言えば殿下派です。ですが、デイファン公爵様から受けた御恩を忘れて良いわけではありませんから……」


 ミギルはデイファン公爵が皇帝派に付くという事自体、予想外のことだったと言っている。

 聞けば聞くほど、デイファン公爵が悪い人とは思えない。味島が堂々と皇帝派を宣言したのも、後先考えずというよりかは、デイファン公爵を本当に信頼しての行動だったのかもしれない――そう、隼人は認識を改めることにした。


 となると、実質の皇帝派もとい武力派はクウィールのガルド・レイアースということになる。早くも結束の綻びが見えなくもない。


 しかし、今回の目的は公爵の話ではない――皇帝についてだ。


「皇帝についてですか? 一体何の取材なんです?」


 気前のいいミギルだが流石に直球過ぎて疑問に思ったらしい。


「実は、皇帝派と殿下派に分かれているもんだから、世間の人々はどっちを選ぶのかその理由も含めて調査してるんだ。俺は、ラミュリアの方に住んでいたから皇帝陛下のことをよく知らなくてね……」


「ラミュリアでは女装が流行ってるのかな?」


「おいおい、勘弁してくれ。ちょっとした罰ゲームだよ」


 ミギルは歳が近いからか何かと話しやすい雰囲気があった。そして、話しやすが故に油断したのが誤りだったと気づくことになる。


「それは嘘だね。他に理由があるんじゃないか?」


「どうしてそう思う?」


「ただの勘さ」


 暫くの間お互いを見ていた二人だが、先に音を上げたのは隼人だった。


「分かった。俺の負けだ」


 驚いて、フィーエルが何かを言おうとしているが、綾香が止めに入る。

 フィーエルは理解出来ず小声で綾香に聞く。


「フィー。多分、彼はスキル持ちよ」


「――ッ?!」


 それを聞き、あるスキルを思い出す。


――超直感能力


 研ぎ澄まされた観察力で相手の表情を読み解き、相手が嘘を付いているかを見分ける能力。

 その能力から逃れられるものはいないらしい。異世界版嘘発見器である。


「気づきましたか? 話によると私は生まれて間もなくその能力の片鱗を見せていたそうです。それが、デイファン公爵様からミギルという名を頂いたキッカケだとか」


「そういうことでしたか……」


 ようやく落ち着きを取り戻したフィーエルの矛先は次に隼人と綾香に向く。


「ところで、隼人は何故すぐにスキルに気づいたのですか? 勿論、綾香も」


 その笑顔は少し怖い。まるで、二人が何か悪いことをしたかのようだ。


「私は隼人が何か気付いたみたいだから推測しただけよ?」


「俺も単に目を見てそんな気がしただけだからなぁ……」


「隼人もスキルが?」


「いや、それはないな。確かにスキルは持ってるが超直感はない」


 そこまで話して自分たちが貴族あるいは貴族と同等の存在であることをミギルに教えてしまったことに気付いた。

 それは、スキルを確認するには身分証明書が必要となるからだ。存在の証明(プローヴァ・ザイン)と呼ばれるそれは貴族やその従者、または貴族に近しい地位にいる者にのみ与えられる特殊なアイテムなのだ。


「さて、ではあなた方が何者かお話して頂けますよね?」


 それはもう満面の笑みでミギルはとどめを刺した。


 § § §


「なるほど。随分と思い切ったことをしていますね」


 一通り説明し終えるとミギルは何かを考え込むように顎に手を添える。


「実は、ここの主自体は今、奥にいるんですよ」



「何か作業を?」


「いえ。まぁ、作業もしていますが殿下がいるなら出てきてくれるとは思いますよ。ただね、問題があるんですよ」


「問題?」


「誰が相手でも無口なんです。本当に認めた相手にしか口を開かないんですよ」


 そこに、「勿論、私は普通に話せますよ」と笑顔で言う辺り、本当にいい性格をしていると隼人は思ったが口にはしない。何となく更なる追撃を喰らいそうだったからだ。


「私の意見で良ければお話しますが……」


「……」


 フィーエルは任せるとばかりに二人に視線を送る。隼人が頷き、綾香も同調する。


「「取り敢えず、その(ヌシ)を引っ張り出してきて?」」


 フィーエルが目を点にさせたその発言はミギルを笑わせる。落ち着くまでには少し時間を要した。


「ええ、勿論構いませんよ。ただ、先に忠告した通り無口な人ですから怒ったりしないで下さいね」


 「怒ったらつまみ出します」と冗談めかしに笑顔で言われたが、本気でやりそうで怖い。あまり敵には回したくない相手ではある。

 そう、隼人が考えているうちに奥の部屋から男が出てくる。

 小柄だがしっかりとした身体つきをしており、顎には髭を長く生やしている。如何にも親方!って感じの人物であった。

 男は席に座ると正面に座る三人を見据える。まるで、品定めをするかのような視線だった。


「スキル持ちでもないのに見るだけで分かるもんか?」


 主に聞いたところで答えが返ってこないと思った隼人はミギルに聞く。


「年配者としての経験と職人としての勘でしょうね」


「経験と勘か……まぁ、取り敢えず俺の鍛えた武器を手に取ってみろってところか。なら、コイツを見てみようかね」


「へぇ、弓ですか。てっきり紋杖(もんじょう)でも手に持つものかと」


「紋杖は使用者目線で言えば使いやすいだろうが、俺には不要だからなぁ……それに、弓は俺たち日本人の武器だぞ?」


 隼人は少し得意げな顔をする。

 日本にいた頃、綾香の行っていた道場で剣を少しばかり習ったら思いの外にハマってしまったのである。

 それをキッカケに日本の武術を習えそうなものなら習っていた。弓もその一つ。余談だが、武道以外にも伝統芸能である茶道、華道等々も習っていたとか。


「なるほど、帝国には鉄の塊を飛ばす一撃必殺の飛び道具があると聞きましたから、これはそれに対抗するものだとばかり思っていました」


「いや、実際のところ独自の進化は果たしていると思うぞ? 弓は本来、矢を持ち歩くものだからな」


「それもそうじゃないの?」


「まぁ、見慣れている綾がそういうのも無理はないさ。だが、コイツに書いてある魔紋を見ればそうではないことが分かる」


 隼人は矢を番えることなく弓を引く。そして、魔紋書に蓄えた魔法を流し込む――すると……


「矢が?! 魔力の塊で矢を練ったの?」


「そういうことだ。ミギル。帝国の銃も魔力が飛んで来るんじゃないのか?」


「銃? ああ、飛び道具のことですね。ええ、聞いた話ではそうらしいですよ。最も魔紋を使っていないので無属性らしいですが……」


「なるほど、話を聞いてやろう。お前の名前は?」


 ミギルの説明は唐突に中断された。ここの主によって――

 ようやくかと思いつつ隼人は主の問に答える。


「俺は桜城隼人。アルスティーナ皇国に召喚された日本の高校生さ。もっとも、今は空の都の全権代理人やってるけどね」


「ほう、面白い奴だ。それで、隼人。なんで、帝国が属性使えないかは分かるのか?」


 主の質問はまるで最終試験のようだった。隼人は難なく自分の意見を述べる。


「それは、アルスティーナ皇国に弓兵が少ないのと関係がある」


 そもそも、弓と銃の単純な撃ち合いなら銃が勝つ。それは、すべての工程を脳で処理する弓に比べて、引き金を引くだけで魔力量、射出、弾の生成まで全てをプログラムで行うため元の世界の銃と同様の速度で撃てるからだ。

 そのため、M○Sシリーズの無限バ○ダナのように(魔力ある限り)無限に撃ち続けられるが……銃は銃でしかない。


 だが、弓は違う。射た矢を起点に次の魔法(・・・・)を発動することが出来る。

 簡単なことだ。弓に二種類の魔紋を刻めばいい。一つ目が矢を生成する(しるし)。二つ目が矢を中心に発動する魔法の紋だ。


 これが銃で出来ない理由は魔法と魔導の特性違いにある。

 魔導は決まった位置にしか発動できない。しかし、魔法は空間認識力さえあれば位置など関係ない。遠くだろうが、近くだろうが、見えていようが、見えていまいが関係なく発動できる。

 魔導銃の場合は弾を飛ばすことが出来ても、飛んでいった弾との位置関係が一定でないために次の魔導を発動できない。それに比べ、距離の関係ない魔法弓の場合は次の魔法を発動できるのだ。

 速さで勝る銃と、一撃の汎用さで勝る弓ということだ。


「正解だ。なるほど、気に入った」


「なら、いい加減、名前を教えてくれないかしら?」


「……」←隼人


「……」←綾香


「……」←ミギル(ニコニコしてる)


「……」←フィーエル(お茶をすすってる)


「・・・。」←主


「? えっと……合格なら名前教えてくれないか? 俺も名乗ったんだし――」


「そうだな。俺の名前はイル・ド・スランフ。通称《語らずの武具職人》と呼ばれている。よろしくな隼人」


 そう言って手を差し出すイル。隼人は隣で憤慨して静かに刀を抜こうとする綾香と、それを必死に宥めているフィーエルを見つつ手をにぎる。

 どうやら、この職人が認めたのはあくまで隼人のみ。

 他二人に関しては語らずを続けるらしい。以外に難儀な堅物である。

 ただ、職人にはこだわりも必要かと思い直す隼人だった。

 というわけで、今週も無事更新。先週ほどではないにしても余裕を持って書き終えられて一安心。


 あとがきなので本編に関して少々。

 先週の時点で「ミギル・カーン」と「ミギル・デイファン」の二人にミギルって名前が付いてることに何人気付いてました?

 実は、自分も今週分書いてて気づきました。「ん? ミギルってもう使っとるやん!?」みたいな?(汗)

 これは一重にメモ作ってなかったのと、ネーミングセンスの無さが生み出した災厄ですね。

 ただ、今更直すのも癪だったので、そのまま同じ名を貰ったということにしました。万事解決――とまではいきませんが、何れ主人公達がお産に立ち会うなんて話を書けば釣り合い取れるでしょう。

 お陰で付ける気の欠片もなかった超直感能力とか、付いてミギル・カーンというキャラがいい感じに自分の中でキャラ固定出来ましたし、個人的には満足。行き当たりばったり万歳\(^o^)/

 余談ですが、イル・ド・スランフという主の名前ですが、まんまイル・ド・フランス(フランスの島という意)使いました。

 名前考えてて「主の名前どうしよ? ……。 取り敢えず、イルドと入れて……ん? イル・ド・フランス? よし、イル・ド・スランフにしよう」となりました。適当すぎる……

 これから出てくる私の知らないキャラ達に私はなんて名前を付けるんでしょうね(汗)


 次も月曜日(2017/12/11)の午前6時更新予定です。

 では、次回「青年の願い(仮)」でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ