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RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
8/22

寂れた工房

 さて、忘れてはいけない。喫茶店のマスターから意外なほどに興味深いことが聞けたが、隼人たちの本来の目的はこちらの裏通りで聞き込みをすることにある。


 昨日の探索で分かっていたことだが、裏通りは寂れているーーなんてことはない。個人商店を展開しているため、一つ一つが小さいお店になっている。

 その分、専門性は高まり表では手に入らない掘り出し物があったりする。


 よくよく観察してみれば、家紋の刺繍された服を着た者がちらほらと見える。彼らは物好きな貴族だったり、貴族に仕える鍛冶師などだ。


 貴族にはそれぞれお抱えの鍛冶師がいる。というのも、アルスティーナ皇国が魔法と武術によって発展してきた魔法武術国家だからである。

 魔法の開発をする者は大抵、その魔法を行使するに相応しい武術を心得ている。ただし、魔法の行使には一部の例外を除き発動媒体が必要になる。

 そこで登場するのが鍛冶師である。


 例えばレイピアを扱うライカ・レイフォルトの場合、レイピアの刀身に刻まれた魔紋に魔力を通すことでエネルギーを体外へと放出する。

 魔紋には使用者の意思で魔力の塊を変異させる力があり、その結果、魔法として具現化されるのだ。


 ちなみに、この世界にはヲタクには馴染み深い魔法陣も存在する。

 ただし、儀式の類でしか使用されることはない。また、お約束の空中に魔法陣ーーなんてものもない。

 身近なものであれば召喚の儀が魔法陣の必要な魔法となる。どこかの錬金術師みたく、何かで地面に魔法陣を刻む必要があるのだ。



閑話休題



 鍛冶師は必然的に二つの職に分かれている。一つが武具職人。もう一つが魔紋彫刻師だ。


 武具職人は名前通り、武器を作ったり、魔紋を刻めるアクセサリーを制作したりする職業だ。

 

 それに対し魔紋彫刻師とは、武具職人の制作物に魔紋を施す者達のことである。彫刻師とは言うものの、実際に彫る訳ではないので、何度でもやり直しが可能だ。

 また、魔紋と使用者には相性があり、それぞれの使用者に合わせて調整しながら刻む必要がある。ここが魔紋彫刻師の一番の腕の見せ所だ。


 これらの理由から武具職人と魔紋彫刻師は一緒にお店を出すことが多い。実際のところ、表側は単体のお店が一つもない。

 だが、裏は違う。何せ、自宅に開くもんだから狭いのだ。自宅で二つも店を開ける所なんかない。

 結果的に二つは分かれて営業している。とはいえ、一箇所に集まる傾向があり、さながら鍛冶街通りとでも言うべきか……


 三人はその入口に立っていた。


「どうですか?ここが職人の街、鍛冶街通りです」


 ここら一帯は「明日のお楽しみ」と昨日の散歩で避けた場所だった。

 先程の理由もあり、その全てが武具職人、魔紋彫刻師、武具商人で構成されている。


 屋台のようなものを立てて外で商売をする者、自宅にある工房で客の以来に応える武具職人や魔紋彫刻師達。そこは、表側では味わうことの出来ない活気があった。


「何だろうな。この京都の観光地みたいな活気は……」

「ある意味でここは観光地と言ってもいいかも知れませんね。何でも皇国中から職人が移り住んできているそうですよ」

「だから、人柄がこんなにも入り乱れてるのか」

「行くなら早く行きましょ。人が多すぎて酔いそう……」


 綾香は人見知りという訳でもないのだが、人混みが苦手だ。

 困った顔で隼人の腕にしがみつく様は中々に絵になっている。特に、隼人自身も女装しているため、周りから見れば微笑ましいものに見えた。


 興味の的となってしまった三人は適当にあしらいつつ、鍛冶街通りを進む。


「そう言えば、お二人は普段何を携帯されているのですか?」


 フィーエルは隼人と綾香に確認する。場合によってはここで装備を整えてもいいと思ってのことだった。

 それに呼応するように綾香が腰に身に着けた武器を見せる。


「やっぱり、それが武器なんですよね? 剣と違って細いみたいですが、細剣(レイピア)でもないですし……」

「これは日本刀よ」


 フィーエルの疑問に綾香が答える。


「ライカに頼んだらすぐに用意してくれたから、てっきりこの世界でも広まってるものだとおもってたのだけど……」

「片側に刃が付いてる武器なんですね」

「ええ、私達の国の伝統武器みたいなものよ。レイピアは遠い西の国で使われているものだったはず」


 フィーエルは興味深げに日本刀を見る。



――霊刀・ツキカゲ



 それが綾香の持つ刀の名前だった。

 その刀身は素晴らしいもので、隼人の目から見ても異世界で作られたものとは思えない出来だった。

 後に知った話なのだが、この霊刀はレイフォルト家の倉庫に眠っていたものだったらしい。綾香の話を聞いて思い出し持ち出したものだとか。


「隼人は何を使っているのですか?」


 フィーエルの興味が次は隼人に向く。しかし、隼人は困ったような顔をするだけだった。

 その手には、一冊の本が握られていた。


「ちょっと事情があってな今は手元に武器がないんだ。だからコレを代用することにしてる」

「これは魔紋書?」


 魔紋書とは魔紋彫刻師が魔紋の研究に使用する魔法書の一種だ。通常であれば、魔紋彫刻師以外が持ち歩くことはない。


「実は魔紋彫刻師としての資格も持っててな……」


 隼人はこれまでの経緯を話す。


 アズール流とは武器に刻まれた魔紋を使い、身体強化などの魔法を用いた近接戦闘術の総称である。

 攻撃魔法と違い魔力を通すだけで出来る身体強化を武器に、圧倒的な火力のある魔法に戦闘術だけで対抗する為に開発された流派なのだ。


 アズール流は大剣がメインの流派であるが、当然、他の武器にも精通している。

 斧、槍、片手剣、弓、組討などが多いが、マイナーなところでは薙刀、刀なども伝わっている。ライカのレイピアもマイナーな部類に含まれる。

 当たり前だが、当主のサイは大剣を使用する。


 だが、一つ問題が生じた。

 隼人には人並み外れた魔力生成力があったが、その魔力を溜めておく魔力プールがないも同然だったのだ。そこで解決させるために作ったのが、この魔紋書だった。


「この魔紋書は俺の制作したものでな。魔力を溜めておくことが出来るんだ」

「魔力を溜める?」


 生まれた時から魔力と向き合っているフィーエルには些か信じ難いことだった。

 だが、お構いなしに隼人は続ける。


 本来、魔紋はアクセサリーや武器に彫刻して使用する。ただし、一つに対して書き込める魔紋は一つ。

 武器に複数の魔紋が影響を及ぼすのは大体、武器の装飾に魔紋が刻まれているためだ。

 それが、火、水、土、風、光、影などを操る魔紋なのか、身体能力を高める魔紋なのか――

 その為、安価で複数の魔紋を書き込める魔紋書が重宝される。というのも、ページごとに魔紋を彫刻出来るという至ってシンプルな仕組みだ。


 隼人はこの特性に目を向け、身につけている間に隼人から魔力を吸い取って蓄え、戦闘時には蓄えた魔力を使って魔法を行使するという一連の動作をそれぞれ魔紋に記し、そして連結させたのだ。

 武器と武器の装飾の魔紋を連結させる技術を応用したものだが、勿論、魔紋書でそんなことを仕出かしたのは隼人が初めてである。


「魔紋の連結――武器と装飾品ではよくある話ですが、魔紋書だけでそんなことが出来るのですか?」

「実際やってしまったからな。魔導アーマーのプログラムを見て思いついたんだ」


 武器と装飾品の連結が、銃と弾丸の関係性だとすれば、魔紋書だけで行う魔紋の連結はプログラミングの要領で行うものだと隼人は言う。


「といっても、プログラミングはC言語もJavaもJavascriptも触った程度であんまり分からないんだけどな」


 と言いつつ、サラッとこなすのが隼人である。


「私も多少は魔紋の知識を持ち合わせているのですが、この魔紋には属性関連の彫刻がされてませんよね?」


 隅々まで確認していたフィーエルが問う。当然の疑問だった。

 人並みの処理能力では魔法を操ることは出来ても、属性まで操るのが難しいからだ。


「それは、俺がガーランド流も修めているからだな。アズール流が極限まで磨き上げた武術であるなら、ガーランド流は極限まで磨き上げた魔術と言ったところさ」


 実際のところ、隼人はアズール流とガーランド流を早々に修めて皇都へ一足先に行く予定だった。

 しかし、前述の通り魔力保有量の乏しい隼人は魔法を発動する術の研究に時間を取られ、ガーランドを修めるのに遅れが生じてしまったのだ。


 武器を所持していないのには、また別の理由がある。

 本来であれば、隼人がアズール流を修めた時点で隼人専用の武器を用意するのが慣例なのだが、ガーランド流を修めることと、師匠の考えで用意が遅れているのである。


「まぁ、何か用意したいものがあるみたいだから気長に待つとするよ。その内、忘れた頃に届けてくれるだろうし、魔紋書でも今のところ充分だしね」


 そう言って、三人は特にどこに寄るということもなく鍛冶街通りを歩く。

 暫く歩いた頃だ。少し道を外れたところに寂れた鍛冶屋を見つけた。


「通りは賑わっているのに、ここは随分と静かね」


 好奇心から三人は鍛冶屋へと足を運ぶ。というのも、他の鍛冶屋に比べて非常に建物が大きいのだ。


「御免下さい」


 朝のような笑顔を見せるフィーエルを先頭に中に入る。そこは、鍛冶屋というよりも工房であった。


「なるほど。建物が大きいのは他と違って魔紋彫刻設備も備えているからか」

「あの台がそうかしら?」

「そうだ。魔紋はあの彫刻台を使用して刻むのが一般的だからな」


 当然、アニメなどにおける術符の様に特殊な墨で書き込んだ魔紋でも問題はない。実際、隼人の魔紋書はそうやって制作されている。

 ただ、あたり前のことながら時間がかかる。そこで登場するのが彫刻台だ。

 彫刻台には専用の魔紋が刻まれており、魔力を通して対象に魔紋を彫刻することが出来る。手書きよりも精度がいいため、非常に重宝される設備だ。


「このタイプは(うち)の工房でも見たことありませんね。古い機種か何かでしょうか?」


 フィーエルの疑問をよそに隼人は彫刻台に触れつつその出来を調べる。しかし、驚くべきことが判明した。


「いや、これは多分だがここの主の自作だろうな。ここまで出来の良い(・・・・・)機種を見たことがない」

「へー。これは、また凄いお客さんが来ましたね」


 突然聞こえた声に三人は振り向く。


「あれ? 今、男の方の声が聞こえたと思ったのですが……」

「ああ、すまんな。ちょっとした事情でこんな格好をさせられててな」


 隼人が誤魔化しきれないと思い白状すると、声の主は目を点にさせていた。


「いやはや、本当に凄いお客さんですね。そんなに女装の似合う男性には会ったことがありません。ぶっちゃけ、そこの二人とも張り合えますよ」


 にこやかにそんなことを言う。非常に不本意である――とは隼人の感想だ。

 というよりも、二人の視線が痛い。

 女性としての尊厳を脅かされたことと、簡単に隠すのを諦めたことに対しての非難だった。


「さて、改めて自己紹介を。ここの主の補佐を勤めておりますミギル・カーンと申します。以後、お見知りおきを」


 そう言って、青年は深々と頭を下げた。


 意外と余裕を持って書き終わって一安心した感じです。色々と言い回しとかにミスあるかもですが……

 何か用語増えて、名前も増えて私自身がこんがらがってきたので、近いうちに一覧作ります。

 あと、毎週継続して読んで下さっている心優しい読者の皆様はお気づきかと思いますが、詰め詰め文章から一変、なろう独特の書き方だと思うのですが、所々で一行開けるという書き方を真似てみました。

 色々な方の小説をサラッと読んでみましたが、改行の基準が良う分からんかったです……

 というわけで、私なりの改行なので相変わらず詰まってる所はぎっしりです。

 前回までの投稿分も全て先週の内に修正しておきました。

 間が開いている分、量は同じですが軽くなったように見えないこともないかと思います。

(多少、読みやすくなってるといいなぁ……)

 あと、継続的に読んでいる方は是非、ブックマーク登録してください。私のモチベが上がります。感想は「Ⅰ.皇都炎上」が書き終わるまでは書かないで頂けると幸いです。

 全体の流れを見て感想を書いてほしいので(;・∀・)


 次の更新は2017/12/04の月曜日、午前6時の予定です。

 では、次回「第一章-4 語らずの武具職人(仮)」でお会いしましょう。

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