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RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
7/22

華麗なる潜入調査

 隼人の嫌な予感は的中した。


「あの糞王女は何を考えてる……」


 鞄を開けてみれば入っていたのは制服だった。

 同封の手紙には「記者を装って行きましょう」とある。フィーエルが記者、綾香が秘書、そして隼人が護衛という役配分だそうだ。


 制服は皇都でアズールが運営している士官学校のものらしい。”どちらかと言えば王女殿下派な人が取材に来た”と思わせたいのだろう。

 実際の所、士官学校の生徒が課外活動の一環として護衛業務を引き受けることは珍しくないらしい。


 だが、隼人は頭を抱えた。何故か?



ーー入っていた制服が”女性物”なのである。



 ご丁寧に化粧品と小物、パット、ウィッグにタイツまで入っている。どう考えても間違えたとは考えにくい。

 しかも、当然のことながらスカートである。タイツがあるのだから当たり前なのかもしれない。タイトでないだけ贅沢を言ってはいけないのかもしれない。だが、それ以前に――



なんで、”女装”せねばならないのか?



 どう考えても何らかの力が働いているとしか思えない。それが何か隼人には分からなかったが、フィーエルに聞けば「きっと男の娘が大好きな神様なんですね」と返ってきそうだからやめることにした。


 隼人はいつだったか綾香から聞いた化粧品関連の話と、どこかの雑誌に載ってた情報を頼りに何も考えずに化粧をする。


(そもそも、こんなに色々とあっても何使ったら分からんぞ?)


 使わないわけにもいかないので、適当に幾つか知識のあるものを見繕い使ってみる……制服を着込み、片手ナイフをスカートの内に二本ほど納刀する。

 唯でさえ、スカートに慣れないというのに、更にナイフ用のアクセサリを太ももに付けているもんだから余計に落ち着かない。


(女子はよく平気でこんな格好できるな……)


 隼人はブツブツと文句を言いつつも着替えを終えたのだった。


 そして、片付けを済ませ隼人は部屋を出る。部屋を出る時に「あれぇ? 意外と似合ってる?」と思ってしまったのはフィーエルと綾香が知る由もない。


 § § §


「綾香、お待たせしました」


 最初に来ていたのは綾香だった。

 普段と違いポニーテールにまとめた髪と伊達メガネ。そして、秘書らしくスーツを着ている。

 異世界なのに日本風なのは過去にも日本人が召喚されていたなんてことがあったのかもしれない。

 声をかけたのはフィーエルだ。

 ラフな私服姿に帽子を被ってペンとメモ用紙を持っている。勿論、伊達メガネもだ。

 如何にもアニメに出てきそうな記者だ。


「待たせたな」


 最後が隼人だ。ただし、当然ながら見覚えのない女がそこには立っていた。


「え゛っ?」


 フィーエルがクスクスと笑う中、綾香だけはぽけぇっとしている。

 ただの女装少年がそこに立っているなら、綾香もこんなに取り乱したりしなかったのだろう。だが、そこに居たのは誰がどう見ても美少女だった。


「いや、綾。気持ちは分かるがそんな反応しないでくれ。全部コイツのせいだ」


 フィーエルをジト目で見つつ弁明をするが、綾香はあまりの衝撃に反応できずにいた。


「そう言えば、隼人は綾香のことを綾って呼ぶんでしたね。潜入調査である以上は本名で呼ぶわけにいきませんし、私のことはこれを機にフィーと呼んでください」


 なんて、綾香のことをそっちのけで話を進めるフィーエルに隼人はチョップをお見舞い――フィーエルは微妙に嬉しそうだった――しながらそれを承諾する。


「わかったよ。で、俺はなんて呼ばれるんだ?」

「”わ・た・し”ね。早子」


 間髪入れずに答えたのは綾香だった。ネーミングに悪意を感じる。

 しかし、受け入れざるを得ず、そのまま早子ということになってしまった。


「ふふ。流石、早子ですね。順応と物分りが早くて助かります」

「でも、話すとボロが出そうね。無口キャラという設定にすればなんとかなるかしら?」


 見た目は変えられても声までは変えられない。

 護衛という設定を活かし、無口で無愛想な護衛という設定になった。


 画して、新米記者と名乗る王女を含む美少女”三人組”は街へと繰り出すのであった。



――非常に不本意である。(隼人体験談より)



 § § §


 まずは、慣れるためにも失敗しても良さそうな表通りで取材をすることにした。

 ターゲットとなったのは三人共まったく入ったことのない喫茶店だった。


 ちなみに、選ばれた理由は周りとの付き合いがあまりなさそう、裏通りの店との関係はさらになさそうだからだ。フィーエル曰くここ最近できたばかりのお店らしく、失敗しても噂は広がりにくいだろうという結論に至ったのだ。


 迎えてくれた店員に軽く挨拶を済ませ席に座る。朝食は食べてきているので隼人はコーヒーを、綾香はトーストと紅茶を、朝食を食べていないらしいフィーエルは朝食セットをそれぞれ注文した。


「お待たせしました」


 程なくして注文したものが届いた。それぞれ自分の頼んだものに手を伸ばす。


「あら、このコーヒー……」


 そこでフィーエルが何かに気がつく。


「ふふ、気づきましたか?」


 カウンターから優しげな男の声が聞こえてくる。先程コーヒーや紅茶を入れてくれた張本人である。


「ええ、今まで飲んできたコーヒーとは少し違い独特な風味がします」


 フィーエルは率直な感想を述べる。隼人としてはアルスティーナ皇国のコーヒーの方が独特だと思っていたため、むしろこのコーヒーは懐かしい風味に感じていた。


「流石、記者殿。こちらのコーヒーは実は帝国のものなんです」

「帝国ですか?」

「ええ。元々コーヒーと紅茶は異世界より召喚された勇者がもたらした物です。その勇者が故郷の味を再現したのがこの帝国製の豆を使ったコーヒーなんですよ」


 ここで疑問を持ったのは綾香だった。


「なぜ、勇者が作ったコーヒーのレシピが帝国に?」


 この疑問は当然のものだった。

 何故なら、アルスティーナ皇国から見て東に広がるアルバレア帝国は魔導技術で発展した国だからである。つまり、純粋な魔術である勇者の召喚は魔族の国エンボステンかアルスティーナ皇国でしか本来は行えないはずなのだ。


 そもそも、アルスティーナ皇国の魔法とは体内を巡る生命エネルギーたる魔力を、己の意志で表に放出し事象に影響を与える術である。

 日本のアニメのような詠唱は必要なく、どちらかと言えば超能力に近い。


 それに対し、アルバレア帝国の魔導技術とは使用者の魔力を機械的に吸い上げ別のエネルギーとして放出する技術である。

 例えば、ソーラーカーであれば光のエネルギーを電力に変換して走る。火力発電であれば火による熱エネルギーで電力を生成する。帝国とは魔力という生産可能なエネルギーを使って発展した国なのだ。


 皇国の技術者の見解によれば、本家には劣るものの魔導技術による擬似魔法の発動は可能らしく、正確な演算が必要となる転移などは魔導に軍配があがるとも言われているが、儀式である召喚の儀を再現することは出来ないそうだ。


 よって、皇国にない勇者のもたらした文化が、帝国にあるというのはおかしな話のはずなのだ。

 しかし、どうやら認識を改めないといけないらしい。


「これに関しては諸説あって正確なことは分かりません。ただ、喫茶店を営む者の中では帝国とは”勇者によって作られたのではないか”という説を信じている者が多いですね」

「それなら聞いたことがあります」


 反応したのはフィーエルだった。


「たしか、最初の勇者召喚は魔族の侵攻を防ぐために行ったという説です。

 その当時の大国はアルスティーナ皇国とエンボステンのみで、召喚された勇者は次々と殺されていく民を見て魔族を追い返すため戦ったと。

 アルスティーナ皇国側の被害が多かったのと、心優しい勇者の意向で滅ぼしはしなかったみたいですね。

 全てが落ち着いた後に勇者は故郷へ帰還するための旅に出る。

 そこで虐げられた民を見て魔法の才能がない者のための国を作ろうと、魔法至上主義に反対する者を集めて帝国を作った――というものだったはずです」


 その後にマスターに――実はコーヒーを入れてくれた男こそがここのマスターだったようだ――聞いた話によれば、帝国製の豆を取り寄せるのはそれほど難しくはなかった(・・・・・・・・)そうだ。今は情勢が変わりかなり厳しいらしい。

 マスターは外を見ながら「皇国民のために制度を変えていった優しい陛下が、中々に過激なことを今は仰っています。願わくばそれが我々、皇国民のために悩み抜いた末に選んだ道であることを――」そう言っていた。


 § § §


「意外と面白い話が聞けましたね。お二人はどう思いますか?」

「確かに辻褄はあってそうだったな」


 隼人は綾香に「声!」と言われつつも無視して続ける。


「以前、ガーランドの家で世話になった時に鹵獲した帝国の魔導アーマーを見せてもらった」

「魔導アーマー?」

「帝国が乗り回す大型の直立二足歩行兵器ですね。専用の魔力貯蔵タンクがあって、その魔力を燃料に動くとか。他にも大型のホウダイ(砲台)と言うのでしたか、長距離攻撃兵器も搭載されていて非常にやっかいな存在です」


 日本アニメで言うところの戦闘メカである。ザブ○グルでもエ○ガイムでもガ○ダムでもないが、OZのモビ○スーツくらいの性能はあるかもしれない。あそこまで大型ではないが……


「ああ、アレを弄らせてもらったが、どう見てもOSのようなものが入っていた。俺たちの世界にある科学の影響を受けていることは間違いないだろうな」


 隼人はそこまで話して一つ気づく。


「そう言えば、”皇国民のために制度を変えていった優しい陛下”って言ってたよな? こないだ会った時の印象じゃただの戦闘狂にしか見えなかったが……」

「それは少し事情がありまして――」


 そう言って説明するのはフィーエルだった。


 召喚の儀が行われる一年程前のことだ。

 現皇帝陛下は帝国と親交を深めるための場を用意したのだそうだ。しかし、何者かに会場を襲われ皇后さまが亡くなられた。皇帝陛下は未だにこれが帝国側の挑発だと思っているのだ。


「実際には向こうが全面協力して犯人の炙り出しもしたのですが、主犯格が最後まで分からなかったのです。そして、全てを統一して争いをなくすという短絡的な考えに至ったようです」


 フィーエルの表情は何かを心配する表情だった。

 その心配は無論、父親であるザドキル皇帝陛下のことだろう。対立しているとはいえ親であることに変わりはないのだから……


「まぁ、結局力には力をぶつけるしかないのは歯がゆいが、被害を最小限にしなければいけないのだから、他に危害が及ぶ前に正面からぶつかる他ないだろうな」

「そうですね。大丈夫ですよ、私はとっくに覚悟してますから。もしもの時は私がこの手で――」


 その目が本気なのは充分すぎるくらいに伝わってきたが、その目を見た瞬間に隼人と綾香は「それだけは絶対にさせない」と心に誓ったのだった。



かつての父親と同様に優しすぎる彼女が壊れてしまわないように――



 ぎゃー。またギリギリになってしもうた……

 というわけで、【華麗なる潜入調査】をお届けします。ちなみに、作中にある”何らかの力”とは私のことです。知ってましたか? 主人公が男の娘になるとメインヒロイン=主人公という等式がほぼほぼ100%の確率で成り立つんですよ。

 私が最初に男の娘というものを知ったのは恋愛アドベンチャーゲームの「花と乙女に祝福を」でした。原画は武藤此史(むとうくりひと)先生です。

 あれからですね。エロゲで有名所は大体やりましたし(「つり乙」とか「乙りろ」とか「恋楯」とか他は多すぎるため省略)、野村美月先生の「ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件」も読みました。ドレ僕はイラストをkarory先生が描いてて殆どイラスト買いしたのを覚えています。

 最近のお気に入りは小説版の「デスマーチから始まる異世界狂想曲(なろう小説ですので、読んだことない方はランキングに載ってるので読んでみて下さい)」、アニメ化が決まった「りゅうおうのおしごと!」ですね。

「りゅうおうのおしごと!」は将棋の話ですが、純粋に幼女を愛でる本です。「ロウきゅーぶ!」「天使の3P!」とか好きだった人なら大丈夫です――多分w ギャグ要素も多めなので電車でクスクス笑いながら読んでいます。きっとHENTAIと思われているでしょうが、その通りなので気にしないことにします。


 近況報告ですが、「Ⅰ.皇都炎上」の各サブタイトルが全て確定しました。中身が決まってないので多少変更はあるかもですが、流れは大方決まったことになりますね。

 余談ですが、今日の投稿分、まさか喫茶店のシーンだけで埋められると思ってなかったので超大助かりです。残りの文量どうするか困ってたからね。とりあえず、迷わず書くこと大事だと痛感させられました。


次の更新はいつも通りに来週月曜日(2017/11/27)の午前6時更新予定です。

では、次回【第一章-3 寂れた工房】でお会いしましょう。

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