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RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
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皇帝陛下の大号令

 皇都アルスティーナには各公爵領から招集された日本の高校生たちが集められていた。


「よくぞ戻って参った。各公爵領に預けられし四人の戦士よ」


 ザドキル皇帝陛下の一声を合図に両端に控える兵士達が騎士剣を正面に構え歓迎する。

 広間には他に陛下の補佐であるガイウス宰相、王女殿下フィーエル、皇都を防衛する近衛騎士団の団長と皇都の運営を陛下に代わり代行する子爵達、そして、各公爵家から皇都へ派遣されている侯爵達が訪れていた。


 この日、この面会により、どこの貴族が皇帝派あるいは殿下派に付くかが決まる。

 分かりやすく言うなれば国の行く末が決まる大事な日だ。

 ここに出席することの出来なかった貴族は勿論、隣国すらも注目する一大イベントといえるだろう。


 フィーエルの進行により面会は進み、海の都クウィールに居た柏木巴と岩の都ガーディアに居た味島光輝がそれぞれ皇帝派に付くことを宣言した。


 柏木が少し不機嫌そうに見えるのは恐らく勘違いではないだろう。

 彼女の性格を考えるに皇帝陛下のやり方に賛同できるはずもない。大方、クウィールのレイアース公爵に食い下がったものの聞き入れて貰えなかったのだろう。

 それに対し、光輝は何か期待に満ち溢れた顔をしている。


(この国の、陛下の為に身を尽くせると知って興奮しているのか?)


 隼人はそう推察したが、同時に光輝の期待は幻想でしかないと知っている。

 侵攻すると言うことは戦争をするということなのだから――

 少しオタクの素養があるからか、この手の展開に弱いのかもしれない。


 次に回答するのは皇都に残っていた間宮真司だ。昨夜の時点で答えを決めている真司の顔は晴れやかで、勇者である真司の回答にその場に居た貴族たちは期待をした。


「皇都アルスティーナの代理人、間宮真司です。私は先に回答した二人と違い皇都に残りました。そして、どちらに付くのか選べる立場にあります。長い時間を頂き迷った末に皇帝派に付かせて頂くことにしました」


 真司の宣言に子爵は勿論、集った皇帝派の兵士に陛下本人も満足気に頷いている。

 宰相と近衛騎士団長は目を瞑り想像通りにことが進んでいるからか喜びを示してはいなかった。

むしろ――


(何色を示しているようにすら見えるな……)


 隼人には二人の考えていることは分からない。

 何せ、名前も先程聞いて知ったのだから当然だ。


 派閥の宣言は後半戦へと突入する。

 しかし、既に三人が皇帝派に付き、その内の一人は勇者だ。

 もはや、王女には打つ手なし――集まった皇帝派の人間は多くがそう思っていた。


 故に、次の綾香の回答は今の流れを一気に変えることとなる。


「森の都ウィディアの代理人、桜庭綾香です。ウィディアの領主ライカ・レイフォルト公爵に代わり返答させて頂きます。我々、レイフォルトとその家臣は殿下派に付かせて頂きます」

「「なんだと!?」」


 そう声を上げたのは誰か。全員が少なからず声にしたのかもしれない。それほどまでに衝撃的な発言だった。

 しかし、驚く要素など本来であれば何処にもない。

 誰もが陛下に賛同している訳ではない。その一人が綾香であり、ライカ・レイフォルトであったのだから。


 対し、集まった皇帝派の貴族には絶対の自身があった。

 勇者とは聖剣クレイブを扱える者を指し、聖剣クレイブは皇族の保管している宝具である。故にその力は絶大というのが世間一般的な認識なのだ。

 その勇者と対立するなど誰が考えようか……


 周りが困惑する中、陛下は少し楽しそうだ。なにせ、隣国に攻め入ると宣言している皇帝だ。親族とはいえ対立とは彼にとって娯楽の一つなのだろう。


「ほう、世と対立するか。まぁ、よい。我が不肖の娘に精々使い潰されないことだ」


 陛下はそう残すに留める。

 見るからに皇帝派の貴族達は不満気だが、陛下の言葉を無碍にすることは出来ず何も言わずに次の回答者を見やった。

 最後に出番が回ってきたのは隼人だ。


「空の都ラミュリアの全権(・・)代理人、桜城隼人です」


 ガラスの割れる音が響く。陛下の持っていたグラスが割れたのだ。

 隼人に注目していた子爵達も顎が外れないかと心配になるほどに口を開けている。


「今、なんと申した?」


 陛下は信じられない物を見るかのように聞き返す。だが、隼人の答えは変わらない。


「空の都ラミュリアの”全権”代理人と申しました」

「誇り高き四大貴族の当主が貴殿に全ての権限を授けたと?」


 静かな声で確認するのは宰相ガイウスであった。

 数々の問題を解決してきた凄腕の宰相たる彼は流石と言ったところだろうか。眉一つ動かさずに確認してきたのだ。


「ええ。今後のアズールとその家臣の動きは全て私に任されています。ガイウス宰相閣下殿宛に手紙も預かっております。目を通して頂ければ幸いです」


 隼人は懐から封筒を取り出し、近くの兵士に目配せをした。目配せされた兵士は納刀し隼人から封筒を預かる。

 安全を確認し宰相に渡した後、定位置へと戻っていった。


「ふむ。確かにアズール公爵殿は彼に全てを任せているようですな」


 そう、これこそが切り札たる隼人にとサイ・アズールが用意した最高の肩書である。

 全権代理人ということはつまり、アズールの参謀あるいは軍師を担うことを示し、隼人の発言は貴族の発言と同様に扱われる。ある意味、勇者という肩書と対抗する唯一の方法とも言える。


 今のやり取りで平静を取り戻した陛下は宰相を見た後、隼人を見て続きを促す。


「全権代理人に関しては了承した。その上で貴殿にどちらに付くのか問おう」

「我々、アズールとその家臣は殿下派に付かせて頂きます」


 驚きはなく、変わりに怒りが漂う。歴史を重んじる彼らにとってこれ程までのイレギュラーは侮辱されているも同然だった。

 しかし、運命とは変えられないもの。真司が危惧していた通りに隼人と真司は対立することとなった。きっと、この展開も遠の昔に決まっていたことなのかもしれない。


「ふふ、どうやらこれで結論は出たようですね。綾香、隼人。これからよろしくおねがいします」


 そんな緊張が漂う中、フィーエルは何事もなかったかのように微笑むのだった。


 § § §


 両者の対立はすぐに国民にも広がった。

 何せ国の勢力が二つに分かれようと言うのだ。国民とて他人事として流すことなど出来ない。


 勿論、ルールがないわけではない。先にも述べた通り、王家の人間が対立したときには、お互い対等の立場で政を行うことが出来る。ある意味、二大政党制のようなものだ。

 西は皇都、海都、岩都の三都市、東は空都、森都の二都市による政治体制となる。

 どちらも、頂点は皇族であるが故に、国民にもどちらを支持するか選ぶ権利が与えられる。


 本来であれば政に意見することを許されない王権制度であるが、対立時は例外となるようになったそうだ。それは対立自体、前例があることだからだ。


 何でも初めて対立した時は力を振りかざして皇帝側が無理やり政を押し通していたものの、国民の支持を得られず、後に半年ほどで国が崩壊したそうだ。

 今の国は崩壊した国を攻め落とした側の孫が建国したとか。


 そういった出来事があったからか、対立した場合を想定した規則もある。

 皇都の城が左右対称になっているのもその為だ。というより、この城は日本から来た五人から見ればどう考えても、国会議事堂を合成したようにしか見えない。


 当然のように彼らはそれぞれの派閥で話し合うため東西の建物へと散っていった。


「それで、どうするんだ?」


 応接間を後にした隼人はフィーエルに訊ねる。

 今の状況は近衛騎士団長が居たとは言え貴族を分割しただけに過ぎない。軍の者や、国民を自陣に率いれるのは勿論のこと、活動地域や拠点に関しても考えないといけないだろう。


 現状、皇都は今まで通りの生活を送ることになるが、海都と岩都、空都と森都はそれぞれの政を行うことになる。

 例えば、海都と岩都が帝国への侵攻を目論んでいる間に、空都と森都は帝国と停戦契約や、情報提供と海都と岩都からの侵攻に備えなければならない。


 同じ国でありながら対立した別の国のようになるのだ。簡単に言ってしまえば内戦も同然の状況となる。


 皇都は不可侵条約に基づき中立都市として君臨することになる。でなければ、両派閥の会談が一切行えないからだ。


 とはいえ、安全というわけでもない。適当な証拠をでっち上げフィーエルを暗殺してしまえば彼らの勝ちになってしまうからだ。

 無論、アズールの領内に連れ込んだところでスパイのことも考えれば多少マシになる程度だろう。それも含めて今後の方針をしっかりと話し合う必要があった。


「申し訳ないことに何も考えていません。派閥が決まった後に話し合って決めようと思っていたので――って一応言った方が良いですか?」


 とても申し訳なさそうに見えない笑顔を向けながらフィーエルはそう呟く。

 だが、そう考えているであろうことは隼人にも分かっていた。


「結局、ここに来た時の夜話してくれた通りになったな」


 心なしか隼人も少し楽しそうだ。それに釣られて普段笑みを見せない綾香も笑みを浮かべる。

 そう、こうなることは三人共一年と三ヶ月前のあの日に分かっていたのだ。当たり前の様にフィーエルの見た星見の予言通りにことが進んでいる。


 少しでも未来を変えようと予言をわざわざ俺たちにフィーエルは告げたそうだが、次元の修復力とは凄いもので、今のところは何の影響もない。


「ただまぁ、でも何でも見た通りって言うのは面白くないよな?」


 隼人は悪い笑みを浮かべ呟く。それに同意するようにフィーエルも悪い笑みを浮かべ、綾香は勝手にしなさいと呆れる。


 だが最後には三人で笑うのだ。


「ふふ、そうですね。私に変な夢を見させる神様には少しおしおきが必要ですね」

「ついでに、あのわからず屋の王様ぶっ飛ばしてかしら?」


 綾香は相当にあの皇帝が嫌いなようだ。でなければ自分からぶっ飛ばすなんて言わない。それに


「なに心配はいらないさ。既に未来は変わり始めている。星見の予言に見せられた世界は俺たちが今日初めて会ったものだったんだろ?」


 フィーエルは肯定する。フィーエルの星見は無数に分かれたパラレルワールドで選ばれた一つの道筋に過ぎない。


「なら、現時点でフィーエルの見た未来は変わり始めている。少なくとも今の俺たちは星見の俺たちと違って下準備が出来ているからな。あとは行動あるのみだ」

「また楽しくなりそうね」

「さぁどうだろうね。あの馬鹿共は気づいてない、あるいは目を逸しているようだが、この分裂は必ず殺し合いになるぞ」


 綾香は押し黙る。綾香も決して忘れていたわけではないが、やはり再確認すると想像も出来ないことに閉口するしかない。


「でも、そこら辺もお二人なら上手く立ち回ってくださるでしょう?」


 フィーエルは期待を込めてそう呟く。だが、忘れてはいけない


「俺たちだろ?」


 そう、フィーエルも共に全てを打ち砕こうと立ち上がった同士であり共犯者なのだ。旗頭である彼女には今後も上手く立ち回って貰わなければならない。


 三人は立ち止まりお互いを見合う。その表情に迷いはなかった。

 三人は既に覚悟を決めている。

 流されていく世の中に抗い、変えるとそう誓ったのだから。

 そして、再び三人は歩を進める。



 真ん中には世界を良き方向へと導く姫巫女・フィーエル・アルスティーナ。


 右には敵も味方も恐れた紅蓮の魔法剣士・桜庭綾香。

 

 左には戦場を掌握した最高の軍師にして最強の武人・桜城隼人。



 それらは象徴であり、花であり、(つるぎ)であった。

 そう彼らだけが知る、誰も知らない改革の躍動が始まった瞬間である。

 先週みたいに朝の通勤・通学時間にサラッと読めればと思ったのですが、サボってたら日曜になってて慌てて書いたら推敲することが出来ず、何とか間に合わせた感じです。色々とやらかしてたらゴメンナサイ。

 どうでも良い近況報告ですが、発売日にiPhoneX入手しました。テンション上がりまくりです。CoDのサーバーダウンには呆れてものも言えませんが……


 一応、前回のと合わせて9000文字くらいですかね。なんでラノベのページとしては10ページ程と序章の構成としては悪くない感じがしなくもない?(笑)

 まぁ、投稿ごと完結な書き方をしているので続いて書くなら前回の最終部分には修正加えないといけませんが(;・∀・)←それ以前に文章稚拙すぎる説が濃厚な件

 次回はいよいよ御三方が行動を始める……と思います? いや、何か書いてみると思いつくままに適当に書いて後から修正みたいな感じで進めてるもんですから、この先の展開は最終局面と途中で入れておきたい要素を少し思い浮かべてるくらいで何も考えてません(´・ω・`)

 まぁ、来週もなるようになるでしょう。そうです。私はこういういい加減な人間です。


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