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RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
16/22

SS:ガーランド家

初のサイドストーリー的なもの。

ええ、本編間に合わなかったから埋め合わせです。

 ガーランド家はアズール公爵家を親に持つ士爵家である。


 本来であれば最下位爵位である士爵家が公爵家を親に持つことはない。

 なにせ、公爵家は貴族であっても、士爵家は貴族ではないからだ。

 世の中の共通認識としては精々、良識ある家柄という家格にしかならないのだ。


 ならば、何故、ガーランド士爵家が公爵家の子となったのか?

 それには、アルスティーナ皇国の建国について少々触れなければいけない。


 元々、この地はイルーナ帝国という今のアルバレア帝国同様、大規模な軍隊を所持する軍事国家だった。


 ある日を境にイルーナ帝国は二分した。保守派と改革派である。

 保守派は今まで通り、徴兵制を採用し、常に軍備を万全の状態に整えるよう推進している一派であり、対して改革派は、徴兵制を廃止し、他国とのバランスを保つよう軍備を調整するよう推進している一派であった。

 改革派が生まれたのは、この時はまだアルバレア帝国が存在せず、イルーナ帝国を除くと小国ばかりが集まっていたのだ。

 過剰な戦力は魔族を刺激するだけであり、何の意味もなさないとそういうことだ。


 幸いにして、イルーナ帝国には二大流派が存在した。ガーランド流とアズール流である。


 改革派の主張は非常時に限り、二大流派の門下生を徴兵すれば良いというものだった。アズール流はこの事に同意した。

 アズール流はどちらかと言えば一騎当千の流派であり、普段の剣山を重要視し、それを非常時に御国のために使えるのならばと考えていたのだ。


 しかしこの時、皇帝は保守派を支持していた。そして、皇帝に重用されていたのがガーランド家だった。

イルーナ帝国は魔法を重要視した国家であったが故に、魔法戦闘の名門ガーランド流は軍部の指定流派として、軍属の魔法師全員がある程度修めていたのだ。


 逆に、祖を共にするアズール流はあくまで武を主軸とし、魔法で強化することによって戦うスタイルであることから邪道として扱われていた。

 それもそのはず、アズール流とガーランド流では必要な処理能力が桁違いなのだ。ガーランド流を修めている者の方が魔法師として優秀と見られるのは当時としては至極当然であった。


 そのまま、両派は対立を深め内戦へと発展した。

 保守派は破れ、改革派が新たな国、アルスティーナ皇国を建国したのだ。


 初代皇帝には改革派の長を務めていたアルスティーナ公爵家が選ばれた。皇帝陛下の遠戚にあたる家柄だったためだ。勿論、他の公爵家は皇帝側に付いていたというのも理由の一つだ。

 そして、アルスティーナの公爵家にはアルスティーナ公爵家と共に戦ったアズール家、レイフォルト家、デイファン家、レイアース家の四家が選ばれた。


 保守派の主だった家の者は処罰の対象となったが、敗残兵を全て処罰する訳にはいかない。よって、敗残兵の代表をガーランド家に決め、敗残兵となった家の全てを管理するよう命じた。

 また、そのガーランド家を管理する役目を与えられたのが、アズール新公爵家である。

 当時のアズール家当主の希望と、初代皇帝の配慮によるものだ。


 ガーランド家はその後、数百年に渡って内戦の影響で安定しなかった国土の防衛に一躍買い、士爵へと叙勲される運びとなったのだ。

 本当は子爵に陞爵するつもりだったのだが、流石に当時のガーランド家当主に断られたのだ。

 「この救われた命は全て主君であるアズール公爵家と、奉仕する対象である民の為に」と当時の当主は言い、士爵の叙勲と新たな門下生の教育を許された。


 そして、現在。

 ガーランド流の師範を務めるのはルーファス・ガーランド。魔法の制御に置いて今代に右に出る者がいないと言われている天才魔法師だ。


「ルーファス様」


 紋杖の手入れをしていたルーファスに声をかけたのは、ルーファスの父に使える執事だった。

 手には一つの手紙がある。


「どうした?」

「皇帝陛下より当家に招集がかかりました」

「招集?」


 つい数週間前に勇者達が皇都へと招集されたばかりだった。どう考えてもこのタイミングで呼ばれるのは不自然だ。

 ルーファスの疑問が顔に出ていたのか、執事は補足説明をする。


「なんでも爵位に関する案件だそうで……。旦那様は現在、アズール公爵家と何やら仕事をされているようで招集に応じることが出来ないそうです。ルーファス様が名代を務めるようにと言伝を預かっております」

「いや、丸投げされても困るんだが……」

「旦那様は『好きなように応えてこい。ただし、我らガーランド家は常にアズール公爵家に忠誠を誓っており、己が身を民に捧ぐ為、存在しているということだけはゆめゆめ忘れるな』と言っておりました」

「なるほど、つまり陞爵は断ってこいということか。まぁ、当然だな。俺も父上の考えに賛成だ。少なくともガーランドの名を与えられた者として、これだけは曲げられない。欲がないと言われるかもしれないが、誰かに必要とされる人生というのも悪くはないものだからな。ウチの門下生たちも同じように考えてくれているといいのだが……」


 ルーファスの考えはあくまでガーランド士爵家としての家訓に近い。代々、受け継がれてきた理念なのだ。

 ガーランド流を学ぶことにこれを強要することは出来ない。なにせ、ガーランド流を修める者は敗残兵の末裔だけではないのだから。

 しかし、ルーファスの不安を予期してか、執事はそれはないだろうと否定する。


「ガーランド流の門下生たちは皆、ガーランド家の主君たるアズール公爵家と奉仕する対象である民に対して絶対的な忠誠を誓っているその主従関係に憧れて入門する者が殆どです。それはつまり、ガーランド家の家訓に惚れて入門したということと同義。彼らには歓迎こそされども、反発する者は一人としていないでしょう」


その言葉に満足したルーファスは仕度を整えすぐに皇都へと向かった。


§ § §


「あれが本当に皇帝陛下なのか?」


 ルーファスのつぶやきは誰に対してのものか、虚しくも風に漂う。


 ルーファスが皇都に訪れた際、勇者たちは遺跡攻略の為にラミュリアへと発っていたのだ。

 変な時期の招集の裏には何か思惑があるというのは、その事実を知った時に確信した。


 そして、ガーランド家の陞爵の話である。

 今回はガーランド本家に対しての陞爵の話であったために子爵へということだったが、以前受けた辺境伯の話と違い、どう考えても皇帝派へ引きずり込む心積もりのようにルーファスには見えた。

 当然、つつがなく断ってきた。ここで受けては、先祖の二の舞な上、ルーファスやその父が尊ぶ家訓に逆らうことになるからだ。

 それに、一年前に出来た可愛い弟子と対立するつもりもなかったのだから。


 皇帝はなんとかして説得するつもりだったのだろう。

 皇都に数日、滞在するよう言われたが、自分が名代であることを理由に丁重にお断りした。

 城への滞在も上手く断り外に出たルーファスはアズール家が皇都に保有する屋敷へと向かう。

 サイ・アズール公爵は殆ど皇都に訪れないため、ここはただの連絡用の屋敷でしかなく、中には使用人しか居ない。

 ベルを鳴らすと顔なじみのメイドが出てきた。


「あら? ルーファス様。お久しぶりです」

「久しぶりだね」

「なぜ、皇都に?」

「皇帝陛下から招集があってね。父の名代で来ていたんだ」


 ルーファスは城でのことを軽く説明し、奥へと入れてもらう。そこは、この屋敷の書斎だ。

 ここには一つ特殊な魔紋がある。『念話』と呼ばれる魔紋だ。


『私だ。何かあったか?』


 声の主はサイ・アズール公爵だ。使用人が緊急の用で念話を使用したと思ったらしく、仕事人な応答だった。


「仕事中にすみません。サイ殿。ルーファス・ガーランドです」

『ルーファス? なんで皇都に?』


 どうやら、ガーランド家の陞爵の話はアズール家にも内密にされていたようだ。敵同士であるのだから当然といえば当然だが……

 そして、ルーファスは今日、何度目かになる説明をし、聞きたかったことを聞く。


「では、やはりそちらに?」

『ああ、昨日全員が無事に到着した』

「兵力の方は?」

『炎牙が参加してくれるが、俺は丁度騎士団を国境警備に出してしまっていてな……。ライカのやつに頼んで即席の連合軍を用意したが十分とは言えないだろう』

「では、至急そちらに戻りますので、時間稼ぎをお願いします」

『承知した。誤魔化せるところまで誤魔化してみよう』


 ルーファスは下手をしたら付いた瞬間にその足で遺跡に行かないといけないかもしれないなと覚悟しつつ、サイに門下生への連絡をお願いして屋敷を発つ。

 その表情は柔らかく。むしろ闘気を帯びていた。

皆さんこんばんは。もしかしたら、お早うございますになってるかもしれませんね。

遅い投稿になってしまったのは、安定の時間がなかった(と言う名の言い訳)からです。

というわけで、間に合わせで申し訳ないんですが、SSになるかは別としてガーランド家の補足的なお話を書いてみました。

一時間半くらいでパパッと書いた内容なので後で修正するかもしれません(汗)

取り敢えず、急いで「才女の異世界開拓記」の方書きます。時間欲しい。休み欲しい……

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