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RelicCode(なろう版)  作者: 初仁岬
Ⅰ.皇都炎上編
13/22

皇国軍の情勢

間が大分、空いてしまいました。本当に申し訳ない。

 今回のラミュリアへの遠征は、国境の防衛を担う騎士団と皇都の守護を担う騎士団以外の騎士団が参加することになった。

 ただし、それは皇帝派に有利なように組まれていた。国政に対してあまり口を出せる立場にないフィーエルに取って、これは乗り越えなければいけない最初の壁だった。


「で? どうするつもりなんだ」


 こういう時に悪知恵を働かせる隼人と綾香も、流石に皇国軍の情勢を知らなすぎた。そうなると頼りは王女であるフィーエルのみとなる。


「現状の戦力で赴くしかありません。幸い皇帝派は自分たちで入手することに重きを置いていますから、私たちの戦力が少ないというのは、むしろ願ったり叶ったりでしょう。あとは、如何に遺跡で皇帝派を欺き私たちの手で聖遺物を入手するかという問題になりますね」

「こっち側に付いた参加騎士団はガウィンのところだけ。フィーって人望ないのか?」

「そういう訳ではありませんよ」


 フィーエルが拗ねたように返す。彼女自身も隼人が冗談で言っていると分かっているものの質が悪すぎた。


 確かに皇帝派と殿下派を比べると圧倒的に皇帝派の方が騎士団の参加率が高い。しかし、全体的に見ると未だ無所属の騎士団の方が多いのだ。

 特に、国内最大規模の四大騎士団はガウィンを除いた三つが、未だどちらにも付かず様子を伺っている。


 ガウィンが今回、殿下派の騎士団として参加する以上、それなりの戦力は整えられたということになる。というのも、皇帝派は騎士団の数と騎士の数で勝るものの、小さい騎士団を寄せ集めただけの軍隊に過ぎず、連携面ではガウィン達に軍配があがるのだ。

 だからと言って、帳尻が合うかというとそうでもない。それは、国境付近の防衛を担っている騎士団の大半が殿下派であるため、参加する騎士団が炎牙だけになってしまったためだ。

 結局、人数差は圧倒的。連携面だけで補える範疇を越えている。


「まぁ、遺跡の調査だしな。少数の方が動きやすいこともあるさ」

「逆に言えば、広範囲を探せないから不利というわけだけれども……」

「綾、それは言わない約束だ」


 綾香の返しに返す隼人だったが、隼人自身もそのことは痛感している。ガウィンの話で興味が出たので少し過去のレポートを漁ってみれば、調べれば調べるほどに所謂ダンジョンとしか思えない内容が出てくる。

 ここは人気の衰えない某アニメのようにゲーム世界というわけではない。主人公たちにチート能力でもあれば話は別だろうが、少なくとも現状は五人ともそれらしい能力は開花させていない。

 あえて言うならば、真司の勇者という肩書がそれに相当するかもしれないが、聖剣・クレイブの能力を引き出せていない内はチート能力とは言えないだろう。そして隼人もまた規格外の魔力生成量を持っているが、魔力保有量の上限が魔法をまともに発動できないほどに低いためチート能力として成立しなかった。


「フィーは遺跡に入ったことがあるのか?」

「一度、攻略済みの遺跡には行ったことがあります。魔物も狩り尽くされ、新たに魔物が出てくることもありませんでしたが、その惨状から酷い戦いだったということはよく分かりました」


 魔物。魔族の国エンボステンの族長が代替わりした関係で魔族の活動が活発化しているという噂は、隼人達が来る数年前からアルスティーナでも囁かれている。それに呼応するように魔物も近年、人里に現れて暴れるというのは普通に起きている。

 騎士団が増えているのも地元民が自警団として結成していたりするためだ。国としても自身の故郷を自分たちで守ると言っている若者を追い返す訳にはいかず、よっぽどのことがない限りは騎士団の結成を認められているようだ。


「そもそも、魔物と魔族って関係あるの?」

「ああ、あるらしいぞ。アルスティーナが儀式や魔紋による白魔法とするならば、エンボステンはまさにイメージ通りと言うか……簡単に言えば呪いなどの所謂、負のエネルギーを司る魔法、つまり黒魔法を得意とする種族だ。

 ただ、魔族は竜族や精霊族達と違って人族からの派生だそうだ。他に例を挙げると獣人とかもかな。

 日本のアニメではよくある話だろ――人体実験とかね。

 彼ら彼女らの先祖様達は人だった。奴隷だったのか捕虜だったのか、はたまた自らだったのかは分からないが、アルスティーナは竜族や精霊族に対抗できる力を得るべくして攻撃特化の魔法種族を創造することにしたそうだ」


ーーその結果が魔族という種族なのだ。


「当初、実験は上手くいったかのように見えたが、この実験には大きな欠点があった。それが感情――自尊心の欠落だ。彼らは大概的にあまり語られないが臆病な種族なんだよ」

「その分析は確か城の研究員も以前ちらっとお話していた気がしますね。ですが、彼らはかなり好戦的な種族ですよ?」


 フィーエルの疑問は世間一般的に誰もが思っていることだ。

 実際、魔族は故意に魔物を生み出し人里に放して人的被害を引き起こす。ここ数年は代替わりの影響か活発に活動してこそいるが、人的被害は少ない。にも関わらず恐れられているのは過去に村をまるまる焼き払うといった事件があったためだ。

 残念なことに村の生存者はいないとされていて、犯人も本当に魔族なのかは分からない。元々、残酷な種族として認知されているがため、誰かが漏らした『魔族の仕業』という根拠のない言葉はあっという間に広まってしまったのだ。


「魔族は好戦的なんじゃない。彼らは人が人体実験によって生み出した種族。その人体実験のせいで自尊心を失った彼らは負けることを恐れている。

 当たり前だ。普通に考えれば実験は失敗ということになるんだからな」

「失敗? 黒魔法は使えるんでしょ?」

「その通りだ。ただ考えてみろ。感情の欠落は人に取って不都合じゃないか?」


 一瞬、考え込むような素振りを見せた綾香だが、すぐに隼人の言いたいことが分かったようだ。


「意思の疎通が難しくなって対立してしまうからかしら」

「そういうことだ。機械は人の指示に従って動いてくれるから原発事故の時に無人機を送って内部を確認できた。だが、もしあの機械に感情があったら戻れない場所に行くのは当然嫌がるだろ?

 魔族だって一緒だ。研究者達は失敗作が少ない内に処分した方がいいと思ったんだろうさ。そもそも人体実験なんかする非道な連中だ。そのくらい簡単にやってのけるさ」

「そして、言い伝えや血でその記憶が今の魔族に受け継がれているということね。勝ち続けないといつ滅ぶかも不安で生きていけないといったところかしら?」

「だな。彼らは人を傷つけることで自身の優越性を見出し、恐怖を和らげているんだろうさ」


 隼人の言葉にフィーエルも一応は納得したようだった。流石に何も知らない者が聞けば、隼人の言葉はあまりにも突拍子のないことのように聞こえる。

 だが、フィーエルからすれば未来ある言葉に聞こえた。

 フィーエルは侵攻を提言している皇帝派と対立している。それはつまり、各国と交流を深め手を取り合うことを目指すということだ。

 この大陸を支配しているのはアルスティーナ皇国、アルバレア帝国、エンボステンの三国。とはいえ、帝国や皇国の同盟国として未だに独自の政治を行う特別自治区とでも言うべき所謂、小国が多数存在するのも事実。

 今回の侵攻は皇国の周りにある自治区を巻き込む可能性が大いにあり、同盟を帝国に移すものが増えるかもしれない。また、四大騎士団の内の二つはその自治区生まれであることから、皇国の戦力を大きく失いかねない危険性がある。

 となれば、フィーエルは当然ながら魔族とも対立する気はサラサラ無いのだ。


「どちらにしても、皇帝派に聖遺物を渡すわけにはいかないのです。あれが彼らに渡れば侵攻は避けられません。だからと言って、彼らに武力を行使すれば私達の言動や行動は矛盾してしまいます。それだけは避けなければ……」

「ま、あんまり思い詰めないことだ。向こうは寄せ集めだし、攻略経験者は少ないんじゃないか? 対してこっちは攻略経験者の炎牙騎士団が味方だ。それに、何かあればお互い地理の分からないところで、そうそう負けるってこともないだろうしな。いつもみたいにドンと胸張って待っててくれれば上手い具合にケリをつけるさ」

「やっぱり私はお留守番ですか……」

「フィーのことを信用してないわけじゃないけど何かあったら困る。私達が実働部隊なら貴方は私達の脳なんだから」


 フィーエルの護衛には炎牙騎士団の留守番組と国境の防衛に加わっている殿下派の騎士団、そしてサイが買って出てくれている。


「ラミュリアまでは私も一緒に行きます。アズールの屋敷でお世話になれるよう連絡も入れてありますから異論は認めませんよ?」


 二人を心配しているのがよく分かるが、それ以上に二人は自身の身を案じて欲しかった。

 今のところフィーエルが暗殺者などに襲われることはなかった。しかし、それは恐らく綾香や隼人が四六時中、一緒に行動していたからなのだ。

 というのも、勇者の離反を恐れている皇帝派は異世界から来た五人に対し、かなり気を配っていて、万が一にでも暗殺を決行して綾香や隼人に危害が及ばないようにしている節がある。その二人が遺跡にとなると、フィーエルは最大の盾を失うことになるのだ。

 だが、遺跡を放置できないのも事実。フィーエルのためにも二人は早々に遺跡を攻略しないといけなくなってしまったのだった。

非常に今更ですが新年あけましておめでとうございます。

というのも、早く出そう出そうと思っていた「RelicCode」ですが、「才女の異世界開拓記」のあとがきにもあるように、私、実は大学生な人でして……ぶっちゃけ、期末試験とか頑張ってました。

最後はインフルエンザBに掛かるというダメっぷりで、ようやく復活した感じですね。

そして、内容的に今回なんか書きにくかった(汗) ちょっと短く仕上がっちゃいましたしね。

今月から執筆再開ですが、2~3月の間は新人賞に応募してみようかと考えていまして(今月末のファンタジアになるか、来月末のMFになるかは未定)、「RelicCode」でも「才女の異世界開拓記」でもない完全新作を一つ書いてます。

しかも、なろうじゃないからと異世界モノから離れて普通に現代っぽいやつをね。

ただ、書き始めたばかりで全然書き終わってないので、暫くそっちが優先に……

なので、この期間は「RelicCode」も「才女の異世界開拓記」同様に不定期更新とします。

どうせ皆さんモンハンワールドで忙し――自分のことか(笑)

ただまぁ、春休みに入っている方もいらっしゃるでしょうし、読んでるか分かりませんが社会人の皆々様はお酒飲みながら暇つぶしに読んでもらえればと思います。


最後に、一応、メインで頑張ってる(つもり)はずの「RelicCode」ですが、累計PVがまだ400ちょっとなのに対し、ノリと勢いだけで何も考えずに思いつつがままに書いてて、着地点を完全に見失っている「才女の異世界開拓記」が累計PV1000を裕に超えるという嬉しいような何か違うような……みたいないたたまれない気持ちになっております故、皆様どうぞRelicCodeを今年も宜しくお願いします。

では、また次回。

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