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マヤと魔法使いのネコ  作者: 癒雨助
1/1

マヤと魔法使いのネコ (1)

 私の人生が大きく変わったのは、中学二年生の夏。

 このお話は私の人生を大きく変えた、中学二年生の夏のお話です。



 私の中学校には七不思議があるらしい、だけど私は興味も無いし怖くもない…話だったんだけど…。

 夜の学校に行くとなったら話は別、七不思議が怖くて怖くて仕方がない、特に夜中の食堂で人を喰う化け猫の話が超怖い…。

 マヤは授業中にも関わらず、頭を抱えて悩んでいた。

「あんな約束しなければ良かっ…あっ!」

 マヤは我に返り口を手で抑えた、しかし声はもう出ていた。マヤはチラッと右席を見た。


麻夜マヤもしかしてー、ビビってんのか?」

 最悪、怜衣に聞かれた。二階堂 怜衣(にかいどう れい)はお調子者でうるさいバカ、そして私の幼馴染み。

 怜衣の挑発に乗ってしまい、今夜学校に肝試しに行く事になってしまった。

 マヤの右隣の席の怜衣は立ち上がり、マヤに指を差して声を上げた。

「麻夜が肝試しビビってる!ビビってるでー!」


「二階堂君、授業中はお静かにしなさい!あと授業中立ち上がらない!制服の第一ボタンも留めなさい!」


「ごめんなさーい!」

 怜衣は元気に返事をし、第一ボタンを留めてから座った。クラスメイト達の笑い声が廊下まで響いていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 時間は夜の11時、ほとんどの家の灯りが消えていて、星が綺麗に見える時間帯。私と同じく肝試しに行く事になった月本 栞(つきもと しおり)と一緒に学校に向かって歩いていた。

 栞は中学で出来た友達で運動神経良くて優しい。

「ねー栞、オバケなんていないよね?オバケなんて嘘だよね?化け猫なんていないよね?」


「マヤちゃんやっぱり怖いんやね。」

 栞は笑いながらマヤの顔を覗き込んだ。


 私は少し恥ずかしくなり、とっさに思いついた事を話した。

「よ、夜の散歩って涼しくて気持ちいいねー。」


「あっ話逸らしたね!」

 栞はニヤニヤと笑いながら、見つめてきた。


「そ、そう言う栞はオバケ怖くないの?」


「ウチは足速いから、すぐ逃げれるから怖くないねん!」

 栞は走って行った。


「えーーー!って、待ってー!」

 マヤが栞の後を追いかけ走って行った。栞はすぐに止まると、マヤに笑顔を向けた。2人は足並みを合わせて、学校へと歩いて行った。

 私は学校に着くまで、栞との会話を楽しんでいたけど…学校に近づくにつれて、心臓の鼓動が速く鳴っていたのを感じていた。




 夜の学校に着くと、怜衣が門の上に座っており一人で待っていた。怜衣はマヤと栞に気がつくと手を振ってきたので、私と栞も手を振り返し門まで駆け寄った。

 私は校舎を見上げると、寒気がした。


 怜衣は左手で柱を掴み、右手を2人に向けた。

「ほら、手掴んで!」


「ウチはだいじょうぶっ!」

 栞が門から少し退がり勢いをつけてジャンプして、門の上に手を乗せると、腕に力を入れて登った。


「おー!さすが栞。麻夜は力無いだろ?早く手掴め!」


 私は怜衣に馬鹿にされている気がして、自力で門を超える事にした。

 マヤは勢いをつけて門に飛び付いた。

「ふぅーーーんっ!!」

 私は腕の力を全力で使い身体が少し上がった。しかし、途中から上がらず足をバタつかせた。

「んーーーっ!やっぱ無理!!」


 怜衣はマヤの腕を掴み、しんどそうな顔をしながら持ち上げた。

 私は力を入れて血管が少し浮き出た、怜衣の腕をなぜか凝視していた。


「麻夜どうした?、ぼーっとして。」


「えっ!?いや、何でもないよー?」

 マヤは動揺を隠しながら、門から学校側に降りた。


 怜衣は手招きをして2人を運動場の方に誘った。怜衣の後について行くと、サッカー部の部室があり3人は部室に入って行く。

 この学校のサッカー部の部室と校舎は繋がっていて、怜衣がサッカー部という事もあり、サッカー部の部室から校舎へと忍び込む事になっていた。


「あまりその辺の物に、触るなよ。」

 サッカーボールや、ゼッケンなどが転がっていた。


「触らないよ、それより汗臭いね。」


「何匂い嗅いでるんだよー。」


「嗅いでなくても臭うほど、臭いって言ってるの!」


「マヤちゃん二階堂君、落ち着いて…。」


 たわいもない話をしていると、少し頑丈そうな扉があった。怜衣はポケットから鍵を取り出すと、扉の鍵穴に刺した。

 私はこの時、鍵が合わなければ良いのにと少し願っていた。ガチャリ!その音にマヤは体をビクッとさせた。

 扉が開き怜衣は校舎内へと、足を踏み入れた。マヤと栞も校舎へと入り、3人は持って来た懐中電灯を点けた。


「よし、まずは教室から行こうぜ!」

 怜衣が先頭を切り歩いて行った。


 私は静かすぎる真っ暗な廊下で限界だった。

 マヤは栞の腕にガッツリくっ付きながら、栞に引きずられる様に歩いた。




 教室や音楽室などを周り終わった。幸い何も怖い事は起こらなかった。だけど私の胸の鼓動は一向に落ち着かず、胸騒ぎがしていた。

 マヤはいつの間にか栞の腕から離れていて、怜衣の腕にしがみ付いていた。

 私はこの先が化け猫の話の食堂だと思い出して、すごく怖くなり怜衣の腕を強く引っ張った。

「もう、帰ろうよ、心臓が飛び出しそうだよー。」


 怜衣はクスクスっと笑った。

「後は七不思議の人食い化け猫が出る食堂だけだぜ。

 もしかして麻夜、人食い化け猫なんて信じてるのか?」

 怜衣はマヤに挑発するように話した。


 すると、マヤは怜衣の腕を離して、軽く突き飛ばした。

「信じてないよ!怜衣こそ、怖がってるのか歩くの遅いよ?」

 すると、怜衣は食堂へと走って行った。


「ちょっと!怜衣!」

 マヤと栞も小走りで追いかけた。

 今小走りで走っているの突き当たりを、右に曲がった所に食堂がある。マヤと栞は突き当たりを右に曲がった。


 怜衣は食堂の窓を覗いて立ち止まっていた。


「怜衣ムキにならないでよー。」

 マヤも怜衣の隣に行き、懐中電灯で窓から食堂を照らした。

 食堂には大きな黒い影があり、液体を飛ばしながら豪快に何かを食らっていて、無数の光る目が一斉に私の方を向いた。あまりの恐怖でマヤは腰を抜かし、大きな尻餅をついた。


「出たぁぁぁああああーー!!!」

「きゃぁぁぁああああーー!!!」

 そんな私を尻目に怜衣と栞は叫び逃げ去ってしまった。


「待って!怜衣ー!栞ー!待ってー!」

 叫んでも、二人は戻って来なかった。

 私の視線には動く大きな影の一部が見えていて、徐々に近づいて来て、ポチャポチャと液体が滴る音も聴こえて来た。

 あまりの恐怖で強く目を瞑り、体を縮こませて強く両手を握って、心の中で何回も謝った。

 ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい…。

 すると私の手に液体が滴り落ちてきて、すぐ側に化け猫の気配を感じた。私はパニックなり動けず、とっさに大きな声で叫んだ。


「ごめんなさぁぁああーーーいぃぃぃ!私は美味しくないですよぉぉおおーー!!」


「ニャッ!?いきなり叫ぶニャッ()!」


 マヤは人間の様な声と言葉に驚き、目を見開いた。

 目の前には全身黒い毛に、ヨダレを垂らした大きな口には牙がある、化け猫の姿があった。

「ギャァーー!!化け猫が喋った!?」


「化け猫?…よく見ニャッ()。」


 マヤは恐る恐る目をそっと開けた。あれ?

 猫耳が付いていて黒い刺繍が入っている、白いローブを被った、可愛らしい黒猫が二足立ちしていた。

 マヤは目をこすり、もう一度確認した。やはりそこにいるのは、白いローブを被った黒猫が二足立ちしていた。

「え!?……猫さんだっ、可愛いー。」

 マヤは声を上げて抱きつこうとした。


「バリニャー!」

 黒猫が両手を伸ばした。


 ゴンッ!

「いったーい、壁??」

 マヤは黒猫の方に手を伸ばして、ペタペタとパントマイムの様になっていた。


「魔法の透明な壁ニャ()。」


「えーっ!猫が魔法を使った!?

 えぇーーっ!猫が喋った!?

 ええぇーーーっ!猫が立ってる!?」

 マヤは驚き、大きな尻餅をついた。


「リアクションが遅いニャ()

 俺は人間が嫌いなんニャッ()、帰ってニャニャ(くれ)。」

 黒猫は手でシッシッとエモーションをとった。


「ええー!猫さんと喋るの初めてだからもう少し喋りたいなー!」

 マヤは目を輝かせながら黒猫を見つめた。


 黒猫はプイッと首を振り半回転して、食堂に四足歩行で歩いていった。


 私はゆっくり立ち上がり、食堂へと歩いて行く、食堂に入るとそこに黒猫はいなかった。

 なんだったんだろ〜?


「麻夜ちゃんごめんね、置いて行っちゃって大丈夫?」

 マヤが振り返ると、栞が走って戻って来た。


「大丈夫だよ、けど最初っから置いて行かないでよー!怖かったんだよー!」

 マヤは栞に抱きついた。

 マヤと栞は足速に歩いて帰った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 翌日…私は学校で、栞と他の女の子の友達と、先に逃げ帰った怜衣の話をしていた。

 すると怜衣が影から私の方を見ていたが、気にせず話し続けた。


 放課後…委員会で遅くなった私は少し昨日の事が気になって、食堂に寄ってみる事にした。


 食堂は閉まっており、中を覗いても生き物がいる気配はしなかった。

「何だったんだろー、昨日の猫さん…。」


 マヤは食堂から靴箱へと向かって歩いていった。




 靴箱から靴を取り出し上靴をしまって、靴を履いた時、何かが靴の中に入っていた。

 マヤは靴を脱ぎ靴の中に手を伸ばすと、カサッと音を立てて何かを摘み取り出した。

「紙?なんか書いてる…。」

 マヤの手には小さく折られた、メモ用紙を持っていた。


 花咲ハナサカ 麻夜マヤさんへ

 大事なお話があるので、屋上で待ってます。


 これってまさか…告白!? 誰からだろう?まさか、バスケ部のクールな長身イケメンの、水島ミズシマ君?

 まさか、成績学年トップなのにメガネイケメンの、松神マツガミ君?

 まさかまさか、天然キャラでふわふわしてて可愛いけどカッコいいイケメンの、砂糖サトウ君?

 まさかまさか、家庭的なイケメン服師フクシ君?

 マヤは浮かれた表情で、階段を駆け登って行った。




「私の王子様だーれだ?」

 マヤは屋上の扉を開けた。学校の屋上からの景色は遮るものが無く、少し田舎のこの街を一望出来る場所であった。

 その景色に私は少し見惚れていた。

「綺麗な夕日ー、そんな事より王子さ…ま…?」


 マヤの視線の先には怜衣が居た。

「何だー、怜衣かー。」

 マヤは怜衣の隣まで歩いていき、屋上の柵にもたれかかり景色を眺めた。


 2人は少しの間景色を眺めていた。

 すると、怜衣がマヤの方を向いて話し出した。

「麻夜、あのさー…俺…。ずっ…ずっと…前から……ずっと前から…。」


「ずっと前から…?」

 マヤは柵にもたれかかるのを止め、怜衣の方を向いた。

 あっ!!?王子様っていうか、告白って…まさか…まさか怜衣ー!?

 私は頬が熱くなるのを感じて、怜衣と目が合うとより熱くなった気がした。私は動揺を隠すため、とっさに景色の方を向いて眺めているフリをした。

 すると、私の視線に白いフードを被った猫が見えた。昨日の猫さん?あの場所はスーパーの裏の駐車場だ。

「怜衣ごめん、急用が出来た!また明日ねー!」

 私は怜衣に対して少し罪悪感を感じながらも、その場の空気に耐え切れず、飛び出してしまった。

 気を紛らわす為か、昨日の事が気になるのか、どちらが本当の気持ちか分からないけど、スーパー裏に行ってみる事にした。


最後まで読んで頂きありがとうございます!

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