#1
「明日から中学生かぁ…」
僕は溜息混じりに独り言を言った。
夕ご飯を食べて、お風呂に入って、明日の入学式に向けての確認をして寝ようと、僕の部屋に入ったところだった。
部屋にはまだ一度しか着ていない学生服がかけてある。
小学生の時とは違って、ズボンが長い。冬は寒くなさそうだけど、夏は暑そうだな…。
学生服の隣には、学校指定の学校鞄とナップサックがかけてある。
明日から通う紫熊中学校のイメージカラーである紫色のナップサックは、まるで焼き芋みたいだ。別に美味しそうではないけど。
その横には、服を仕舞うための箪笥がある。
タンスの上には、小さなトロフィーが置いてある。
[紫熊地区少年野球大会優勝]
こんな文字が刻まれていた。
小学三年生の時に、父さんの勧めで野球を始めた。入団したチームは、父さんも小学生の頃に所属していた。
このトロフィーは小学五年生の時に、地区の小さな大会で優勝したときに貰った。…というか、団体戦だから僕個人が貰ったわけじゃないけど、その試合で一番活躍したのは僕だからと、監督がくれた。でも、次の試合に出ることはなくて、小学六年生の夏にはもう野球をやめてしまった。
だから、僕が野球で唯一結果を残したのはその試合だけ。そもそも試合に出た回数も少なかった。
これだけしか結果を残せてないって、ショボいのかな…?
昔から、こんな考え方に苦しめられてた。
「まあいいや、野球やめたんだし。明日から中学生だし」
寝よ。
部屋の電気を消して、もぞもぞと布団に入った。
なかなか寝られなかった気がした。