表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイト戦記  作者: 五月雨拳人
第二章 変わる目的と、その意義
84/140

第八十四話 おお、バロン

 こうして無事に山賊を退治した俺たちは、バロンに別れを告げて北の領地を去った。

 その道中。案の定、俺はコングとルーンに挟まれて両方から同時に文句を言われ続けるはめになった。

「なー、何で金じゃ駄目だったんだよー。いーじゃねーか金はいくらあっても困るもんじゃねーしよー」

「そーだそーだ。今は困ってなくても、使えば減るしこれからは戦で出費がかさむんだから、いくらあってもいいじゃないかあ」

 ああ、うるさい。まったくこいつらは飽きもせずに金かねカネと……。いい加減うんざりしてきた。

「これで良かったんだよ。むしろ金なんかで済ませたら勿体ない」

「何でだよ。金以上に価値のあるもんなんて滅多にねーぜ」

「あたしはそうは思わないけど、コングの意見には概ね賛成。同盟が無理だとわかったら、その対価ぐらいは請求すべきだったと思う」

 これはもう聞き飽きたんで、俺はこれまで何も言わずにいつも通りにこにこしているホーリーに意見を求めてみた。

「お前も金のほうが良かったか?」

「え? わたし? そうねえ、わたしもルーンと同じでお金が全てじゃないと思うけど、お金があれば助かる場面って結構あると思うな」

 なるほど。ある意味真理だ。

「けどスレイはそうじゃないって思ったんでしょ?」

「ああ」

「どうしてそう思ったの? それを話してくれないと、この話はいつまでも終わらないと思うな」

「そうなのか?」

 ホーリーはそうだよ、と言うとにっこり笑って「リーダーには説明責任があるんだよ」と教えてくれた。初耳だったが、人間のボスには他の動物とは違うルールがあるのだろう。

「わかった。じゃあ説明しよう。

 もうみんなわかってるだろうが、バロンはかなりいいとこの貴族だ。あいつやあいつの家を介した人脈は、いつか使えるかもしれない」

「なるほど。貴族とのコネはあたしらには無いものだし、こればっかりはお金じゃ買えないか」

「けどよ、そのコネが使えなかったらどうするんだ?」

「その時は別の形で借りを返してもらえばいいだけだ。大事なのは、俺たちに貸しが一つあるとバロンが思っていればいい。明確な約束じゃないからさじ加減が難しいが、状況に応じて自由に内容を変えられるという利点もある」

 俺の説明に、コングたちはなるほど、と感心する。それから少しして、コングが思い出したように言った。

「それに、今同盟を結んだとしても、こっちに大した得はないだろうしな」

「ま、あのお坊ちゃん戦はからっきしだそうだからねえ。足手まといが増えるよりは、先のために貸しを作っておくほうがマシか」

 やれやれといったルーンの声に、俺たちは「だな」と頷きあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ