第五十話 五人組
俺たちがもらった領地は国境に近く、早晩戦場になる。
なのに領民の奴らときたら、どいつもこいつも死んだような目をした負け犬ばかりだ。
俺がこの群れのボスとなったからには、こういう甘えた根性は徹底的に叩き直してやる。
だが小競り合いと言っても戦は戦だ。相手は本職の軍隊を動かしてくるだろう。そんなプロ相手にいくら付け焼き刃したところで焼け石に水だ。むしろ下手に自信をつけて生兵法になるのがオチだろう。
だから俺は奴らを戦力として鍛えるのではなく、とにかく死なないように生き残る力をつけさせる。あくまで戦うのは俺たち領主で、領民たちは少しでも敵の戦力を分散させてくれればそれでいい。無理に戦果を上げようなどとは思わず、俺たちが敵将の首級を取るまでどうにか生き残るのを再優先させる。
次に俺は、領民の中で何度か戦に出た経験のある奴らに、これまでの戦の詳しい話を訊いた。情報収集は戦の基本だからな。
すると面白い事がわかった。
これまでの戦いは小競り合いと称される通り、規模はかなり小さい。せいぜい多くて百人ぐらいの兵隊がやって来て、好き勝手して帰っていくそうだ。
それもそのはず、同じように国境付近にあって小競り合いが続いている村は、ここだけではなく他にも多数存在する。それでも未だ本格的な戦争になっていないのは、つまり敵は別段本気でこちらに攻め入る気はまだないという事だ。大方大きな戦の前の前哨戦か、新兵や貴族から預かった子息を戦に慣らすための予行演習をやっているというところか。
だったら、その油断につけいる隙はある。
向こうが本気でないなら、必ずどこかに穴があるはず。そこを上手く突ければ、最小限の力で最大の効果が得られるはずだ。
あくまで上手くいけば――だが。
俺の作戦は至って単純だ。俺たち四人が敵に突っ込み、敵の大将を負かす。だが問題は相手の数だ。いくらドラゴン殺しの俺たちでも、たった四人で百人を相手にできない。数ってのはそれだけで力だからな。
だから領民の奴らにも一肌脱いでもらうのだが、さすがに兵隊相手にまともに戦わせるわけにもいかない。むざむざ死なせるようなものだ。
なので俺は、奴らを五人一組にまとめた。




