第四十三話 決戦
ドラゴンの溜めた財宝を狙って、そいつらはやって来た。
俺は歓喜に震えた。とうとうこの日が来たのだ。仲間を殺し、ゴブ夫を殺し、俺を殺したあいつらと再び相見える日が。
俺を目にした奴らも、引きつった笑みを浮かべていた。
『とうとう来ましたね……』
ホーリーは、以前よりも成熟したように見える。だがいつもの笑顔の中に、今は不安を孕んでいるようだ。
『さすがにデカいね。こりゃ倒すのは相当骨が折れそうだ』
ルーンはどこも変わっていないように見える。そういえば、あの尖り耳の種族はやたら長命で、十年や二十年程度では見た目はまったく変わらないと聞く。
『だが見ろ、奴の腹の下を。あれだけの金銀財宝があれば、一生遊んで暮らせるぞ』
コングは、筋骨隆々な身体がさらに一回り大きくなった気がする。それは身に着けている鎧が変わったせいではないだろう。俺が寄生を繰り返している間に、奴も切磋琢磨したようだ。
そして、
『違うだろ、コング』
右頬に大きな傷のある男が不敵に笑う。
『この財宝は、コイツの被害にあった村々の救済に当てるって言っただろ』
傷の男――スレイ。こいつの顔だけは死んでも忘れない。ただあの時よりも月日が経ったせいか、幼さが抜けて精悍な顔つきになっている。だが真っ直ぐな眼はあの時とも少しも変わらず、むしろ様々な経験を経て世の中という不条理を知ってなお自分の信念を貫こうとする意思のようなものは、却って強くなった気がする。
『そうは言うがな、スレイ。村人が困ってるのは、ドラゴンにかこつけて税を上げた権力者のせいだ。だからコイツを倒せば税を上げる理由もなくなるし、村人の暮らしも少しは楽になるだろう。だったらこの財宝は、俺たちの苦労を労うささやかな報酬としてもいいんじゃないのか?』
コングの反論に、ルーンも同意する。
『そうよ。それに、今回もそうだけど誰かに依頼されたってわけじゃないんだから、あたしたちが身体を張ってドラゴンと戦う筋合いなんか無いんだからね。
だいたい、世のため人のためってのも結構だけど、あたしは苦労にはそれ相応のご褒美が無いと厭なの!』
ルーンの後で、コングが『そうだそうだ』と賛同すると、スレイは困ったように唸る。
やがて、魔法使いと戦士のやる気が削がれたままでは戦いに悪影響だと考えたのか、観念したように両手を上げる。
『わかったわかった。財宝の取り分に関しては、これが終わった後ちゃんと話し合おう。それでいいか?』
スレイの言葉に、コングとルーンが親子のようににたりと笑い、同時に頷く。
『そうこなくっちゃ!』
『よし、俄然やる気出て来たわ!』
こちらが見てもわかるくらい士気が上がった二人を見て、スレイも満足そうに笑う。
そして俺を見て、言った。
『行くぞ!』
スレイの掛け声に、全員が威勢よく応えて駆け出した。
戦闘開始だ。
あの時の恨み、必ず晴らす。




