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パラサイト戦記  作者: 五月雨拳人
第一章 生きる目的と、その意味
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第十九話 いいと思ったんだけどなあ

 短時間なら脳から離れても大丈夫で、触手も再接続できる事はわかった。

 だが問題が一つある。

 離れている間、身体は抜け殻になってしまうのだ。これでは目標に攻撃すると同時に俺が傷口から体内に入り込む、という動作ができない。

 困ったものだ。

 そこで俺は考える。

 狼の噛む力は強力だ。それに発達した長い牙は、一度獲物の肉に食い込んだらまず外れない。素晴らしい。これを利用しない手はないだろう。

 というわけで、攻撃方法は必然的に噛み付きになった。

 段取りはこうだ。まず目標に噛み付き、その状態を維持したまま俺は脳から離脱し、鼻腔内から口内を通って傷口から侵入、というのはどうだろう?

 これならぎりぎりまで脳から離れずに身体を操作できるし、噛み付いた状態なら身体が機能停止しても牙ががっちり食い込んでいるからそう簡単に振りほどかれる事もないだろう。

 お、これイケんじゃね?

 名案に気を良くした俺は、さっそく試すべく適当な獲物を探した。

 運良く群れからはぐれた鹿を発見。

 単独での狩りは苦労したが、どうにか大きな傷をつけずに気絶させる事に成功する。

 さて、移動後にこの身体を使う事を考えると、下手な場所に噛み付いて致命傷を与えるわけにはいかない。慎重に場所を吟味し、俺は肉が分厚い鹿の尻に噛み付いた。

 牙が鹿の皮を貫き、肉と筋肉にしっかりと食い込む。これだけ深く入れば、仮に今鹿が目覚めて暴れてもそう簡単には外れないだろう。

 よし。移動開始。

 俺は狼の脳から触手を外し始める。二度目のおかげか、一回目よりも早く全ての触手を外せた。訓練を重ねれば、もっと時間を短縮できそうだ。今後の課題だな。

 触手を外し終わると、できるだけ急いで移動する。頭蓋から鼻腔を通り、口内へと向かう。

 口内にたどり着いた俺は、意外にも鹿の出血が少ない事に気づいた。どうやら牙が食い込んでいるせいで、それが栓になっているようだ。

 まあいい。気にせず傷口から鹿の体内に入……

 れなかった。

 血も出ないほど牙がしっかりと牙が肉に食い込んでいるため、俺が潜り込める隙間がまったく無い。

 牙の周囲を周りながら潜り込める隙間を探したが、結局そんなものはどこにも無かった。

 俺は溜息を一つつくと、すごすごと狼の身体へと戻った。失敗だ。

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