第十五話 非情
半耳は死んだ。
そして戦は掃討戦に変わった。
ボスを失った敵側のゴブリンたちは、一気に戦意と統率力を失い総崩れとなった。烏合の衆を蹴散らすのは簡単だった。背を向けて逃げ出すゴブリンを斬り殺し、武器を捨てて降伏するゴブリンもやはり斬り殺した。生かして帰すつもりなど最初から無い。これは、勝ったほうが全てを得て、負けたほうが全てを失う戦だ。
そう、全てを失うのだ。
戦はこれで終わりではなかった。
戦闘員たちを全て鏖にしたのを見届けると、ボスゴブリンはさらに進軍を開始した。ゴブリンたちは返り血や武器についた血を払う事も忘れて歩き出す。
向かった先は、半耳たちの巣だった。
主戦力を失った砦を落とすのは、笑えるほど簡単だった。勝ち戦の勢いに乗ったゴブリンたちが巣穴へと飛び込むと、そこから先はただの虐殺だ。
洞窟の中が血で溢れるんじゃないかと思うほどの、容赦の無い鏖だった。
生きてる者は全て殺した。
女、
年寄り、
子供。
半耳の側にいた。ただそれだけの理由で、彼らに生きる権利は無かった。
洞窟から漏れ聞こえる音や悲鳴と匂いだけで中がどうなっているか想像できた俺は、それ以上そこに居られず静かにその場を離れた。




