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ソウル2  作者: 宮川心
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不確かな生きる覚悟2

 不確かな生きる覚悟2


 メンタルケア支援プログラム研究所付属病院で宮田小百合に診察を受けた後、宮田診療所を紹介された。ここは宮田小百合の祖父の代から続く診療所で、現在は小百合の姉が院長を務めている。宮田小百合は頻繁に、この診療所の応援に来ているらしい。宮田小百合が応援に来ている日に、この診療所で診てもらう事になった。青葉の自宅から車で20分程の距離にあるので、通院する負担が少なく済む。距離的な負担を軽減するだけが目的では無く、青葉の精神的負担も鑑みた小百合の判断だった。


 この采配は非常にありがたいものであった。人の多い都市部の病院より、閑静な住宅街にある宮田診療所の方が落ち着く。何より青葉は電車に乗ることが苦手になっていた。休学届を出す為に、大学へ何度か訪問したが、それだけでかなりの体力を消耗した。


 毎日平然と電車通学していたはずなのに、こんなにも遠かったのか。大学に近づくにつれ、脈が速くなり、体が緊張し、胸のあたりが重くなった。大学に着いたら着いたで、知り合いと出会わないように、常に下を向いて歩いた。就職関連の掲示板の前を通る時は、ひどく緊張した。常に緊張し、ビクビクしていた。そんな状態なので、家に着く頃には、ゾンビのように顔色が悪かった。食欲は全く無く、食べやすいものを少量食べ、食後の薬を飲み、風呂に入り、布団に倒れ込む。


 本当は研究室の教授と面談をして、状況報告をしてから休学の手続きをするべきだったのだが、メールの報告のみで済ませてしまった。そのメール報告をするだけで、精一杯だった。休み始めてから、休学の旨を伝えるメールを送信するまでに、数週間を費やした。たかがメールを打つだけ、送信ボタンを押すだけなのに、それが出来なかった。情けない。教授と会う勇気が無かった。


 研究室に再び足を踏み入れる勇気がなかった。連絡せずに休みを続けた自分に、教授は何を語るのか。研究室に足を踏み入れた時、注がれる視線を想像すると恐ろしかった。連絡せずに休んだのは、自分の責任だ。教授が憤るであろう事も、注がれる視線が冷たいものであろう事も、当然の反応として予測できる。勝手に休んで、迷惑をかけたのだから、批判を受けるべきだとわかっていた。しかし、なけなしの勇気を総動員しても、できなかった。自分の甘さに幻滅した。


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