クリスマスには大切な人にハートを捧げよう8
クリスマスには大切な人にハートを捧げよう8
2190年12月24日、23時59分30秒。浅間第二小学校 体育館。
「何もないじゃないですか。全く、やっぱりイタズラでしたね。」
青葉隆の緊張感もゆるんでいた。
「そうだな。指定時間までもうすぐなのに、何も動きが見えない。不審人物が侵入した報告もないし、今回は空振りかもしれないな。」
時計を見ると23時59分45秒。まさか、予告時間ぴったりに3000人を同時に殺害するのか。そんな事を一瞬想像したが、鼻で笑った。そんな方法あるわけないか。
「カウントダウンでもしますかね。」
同僚はすっかり気が抜けた調子だ。5秒前、4、3、2、1、0。
「ほら、何にも起こらない。」
同僚は苦笑いで言った。しかし、急に体育館内が騒がしくなった。
「おい。対象者の様子がおかしい。」
助けを呼ぶ大声に反応して、扉を開き、中に踏み込む。対象者が胸を押さえて苦しんでいる。床に倒れ、蒼白な顔で動かない者もいる。青葉隆は混乱した。一体何が起きているんだ。毒ガスの可能性も一瞬頭をよぎったが、中で警備している警官に異常はないようだ。あちこちで心臓マッサージが行われている。青葉隆も近くにいた30代ほどの男に駆け寄る。
「大丈夫ですか。」
男性は胸を押さえながら、倒れ込んだ。
「すまない。許してくれ。俺が、悪、かっ、た。」
息も絶え絶えに言うと、それっきり動かなくなった。青葉は心臓マッサージを開始したが、全く反応がない。
「医療班!こっちだ!早く!」
あちこちで怒鳴り声が聞こえる。俺が悪かった?何なんだよ。青葉に脳内では、これまで培ってきた刑事としての経験や知識がぐるぐると渦を巻いていた。しかし、その中のどれも、目の前で起きている惨状を説明してはくれなかった。