クリスマスには大切な人にハートを捧げよう6
クリスマスには大切な人にハートを捧げよう6
2190年12月24日、23時55分。渋沢市 とあるビル街。
二人は互いの思いをぶつけるように、刀を全力で振っていた。
「全く、なんて力。衰えてないわね。」
新井愛華はあきれたように言った。
「まだまだ現役じゃからの。」
清水は首を狙った2本の斬撃をしゃがんで避けた。愛華が次の斬撃を繰り出す前に、腹に刃を突き立てる。
「清水さん、増援を要請したの?」
突きを刃で受けながら、涼しい顔で言った。
「いや、わしではない。誰か来たようじゃが。この感じは・・・。」
二人が戦うビルの屋上に、誰かが音も無く着地した。
「久しぶり。新井愛華君。」
「坂上君じゃないか。」
清水は愛華と距離をとり、新参者に声をかけた。
「清水さん、ご無沙汰しております。弟子の不始末を片付けにきました。」
腰には2本の刀を携えている。
「愛華君。余計な事は言わない。自分の覚悟を曲げるつもりは無いんだろう?私も覚悟を決めている。」
愛華は困った顔をした。
「この二人を相手にするのは、さすがに厳しいかな。坂上さん、せっかく来てくれた所悪いけど、もう終わりよ。」
「終わり?君の予告した時間まで、あと3分しかないんだよ。これから襲撃して、施設を制圧するのはさすがに無理だろう。それとも3000人は諦めたのかい?」
「3分あれば十分よ。施設の警備状況は把握したし、既に3000人の心臓は私達の手の中にある。」
坂上は刀の持ち手を握った。
「そうかな。そう簡単にはあの警備は突破できない。」
「そうね。あの警備を突破するのは難しい。動態感知ナノクラスター爆弾まで配置してあるみたいだし。でも突破する必要はないわ。言ったでしょう、3000人の心臓は既に握っている。
さて、もうクリスマスになるわ。あいつらの魂に価値はないけど、肉体には価値がある。病に倒れ、臓器の移植を待つ人がたくさんいるからね。その人たちへ、3000人のハート(心臓)をしっかり届けてね。 魂を抜いても、臓器に損傷は起こらないし、十分に移植可能な状態だからね。今まで散々迷惑をかけてきた奴らだから、最後くらい誰かの役に立たなくてはね。」
新井愛華は空間の歪みの中へ、消えていった。