虚像4
虚像4
「そういう事じゃから、少しでもその気になったら、わしに連絡をしてくれ。その時に詳しい話をする。話を聞いてから、断っても全然かまわない。特殊な仕事じゃからの。」
清水は最後にぼそっと、特殊な仕事と加えた。
「わかりました。お話を下さってありがとうございます。」
俊介は頭を下げた。
「ふむ。ああ、もう一つ。話が長くなってすまんが、ちょっとばかりアドバイスを追加してもよろしいかの。」
「はい。是非聞きたいです。」
俊介が答えると、清水は嬉しそうに続けた。
「青葉君はRPGをやった事があるかの。ゲームじゃ。」
RPG?急な展開に戸惑う。
「ロールプレイングゲームですよね。キャラクターを育成させて、ミッションクリアを目指したりする。最近あまりやっていませんが、私もやり込んでいた時期があります。」
「おお、そうか。わしも好きでな。近頃のゲームはグラフィックも綺麗だし、ストーリーも良くできておる。」
清水さんもゲームをやるんだな。意外な一面を発見した。見た目だけでなく、心も若々しいようだ。
「人生をRPGに例えると、また違った景色が見えるかもしれない。人生という名のRPGをプレイするコツは2つ。自分を客観的に見る事、どんな時でも楽しみを見つける事。」
清水は指を2つ伸ばしてそう言った。
「自分を客観視する事。RPGでは、ステータス、属性、所持している武器等が重要じゃな。ゲームをプレイする時、これらの要素から、キャラの個性を客観的に判断するじゃろう。」
「そうですね。好きなキャラに感情移入する事はありますけど、冷静に考えて、そのキャラの特性に合わせて、育成方針を決めたりしますね。」
返答をした時、俊介はある事に気づいた。
「ほう。気づいた顔じゃな。そうじゃ、キャラを客観的に観察するように、自分を見るのじゃ。いったん頭を冷やし、自分の事を上から眺めるような視点を持つことじゃ。」
「でも、なかなか難しいですよね。自分を客観的に見る事なんて、必ず自分というフィルターを通りますからね。」
清水は深く頷いた。
「そう、難しい。しかし、自分に起きた出来事を、他人事のような目で見る事で、心に受けるダメージを減ずる事ができる。過度に多用すると問題があるかもしれんが、これも心を守る一つのテクニックとも言える。」
「その方法をうまく使えば、自分の個性や目標を発見する助けにもなる。他人から自分がどう見えているのか、聞いてみると精度が増すわね。」
そんな簡単に聞けるものでは無いけどね。宮田小百合が苦笑する。
「RPGの中に俊介君が出てくるとしたら・・・。属性は水、得意な呪文は回復魔法といったとこかしらね。こんな感じに考えてみると、面白いわよ。」
「その通り、面白いというのが重要なのじゃ。二つ目のポイント、どんな時でも楽しみを見つける事。何をやるにしても、遊び心を忘れてはいけない。こんな苦しい時に、楽しい事などない。
そんな場面は多い。しかし、そんな時だからこそ、楽しみを見出すべきなのじゃ。楽しみが0%になった時、人生は地獄に変わる。生きる事が、永遠に続く拷問に感じる。そんなのやりきれない。人は自分や友を幸せにする為に、生きるべきなのだ。」
清水の言葉は、心に深く刻み込まれた。