お金にがめついのは悪いことだと思うの?
電車に乗るとすぐさっきまで、死んだ顔をしていたサラリーマンが血の色を変え、空いている席に飛び掛かり、あっという間に空いていた席が一つ残らず亡くなった。
ベンチの端二つが空いていたのは、きっとそこに座ったら位置的に電車で座れなくなるからだろう。
席の取り合いで、口論に発展している大人たちを吊革につかまりながら宗太はそう思った
「なんか社会人って大変だな」
「君もなるんだよ」
「怖いこと言うね」
「怖くないよ。むしろ、ならないとすればニートか死んでいるかだから、それはもっと怖いんじゃないかな」
淡々と、あずきもまた手すりにかるく腕をかけながら言う。
「妖怪なのにニートって言葉知ってるんだな」
「私は仕事で人間社会にだいぶ生活している方だからね」
「仕事?妖怪に仕事ってあるのか?」
妖怪と聞くと森や海などの自然で、自給自足をしてのびのび暮らしているイメージがある。ましてあずきは見た目から小学生、身長が低めといったら中学生に見えなくもない。そんなあずきから仕事という言葉が出てすぐに返す
「妖怪だって働かないと飢えて死ぬからね。あと君が思っているより、私は子供じゃないよ」
あずきは俺の後ろに立って、全員の死角である位置に身を移すと指をぱちんと鳴らした。音と共にあずきの体つきが徐々にでかくなっていき、高校生くらいの背丈までの体になった
「人間の寿命換算でいったら私は高校生くらいかな」
「あ、そうなんですか」
「幼女じゃないって分かるなりその反応は、かなり⋯いや、いいや。君を罵倒したらさらに喜びそうだし」
俺のがっかりとした反応に、あずきは瞳をさらに乾かせてそういう。まぁ実際、罵倒してくれたら、ありがたく「いただきます」させてもらうが
「それじゃあさっきの続きの確認だけど」
あずきは続けて
「サンタクロースは性格上基本的に地上付近には降りてこない。だから私が対空迫撃砲で打ち落とすから君にはおとりになって欲しいんだよね」
「なるほど、え?俺おとり役?」
「狙われている間に、もしかしたら君は死ぬかもしれない。もし死んだ場合は遺体の回収と破棄は私持ちでやらせてもらうから、手間賃と私へのボーナスはあなたの家族6割、友達3割、親友1割で公平にもらうから」
「え、いや俺死なない方法ないん?あと友達親友より割合高いん?てかまず頼んでないから勝手にとるな」
周りの人に変な目で見られないよう、静かな声で怒涛の質問を投げると、あずきは真顔で
「君はいっぺんに質問が多い。1つ目、死なない方法はある。私が頑張って君が死ぬ前にサンタクロースを殺せばいい。二つ目、必要になった割合分を、友人の人数で割るから、一般場合は親友の方が代金が高くなることが多い。3つ目、もし君の死体が放置する場合、それじゃ私が手間賃を取れないからよくない」
いつもどおりの冷たく静かな声で、俺の速度を上回るような早口であずきは言った
俺の言ったことに三倍くらいの分量で返されて驚くも、一点、いや2点、いや全部おかしなところがある
「まずだが、他の方法は無いのか?そんなお前が頑張るとかじゃないの」
「うーん。あるけど⋯」
「ならそっちにしよう」
あずきがそう言った瞬間に遮る
「君も迫撃砲を使って二台体制で打てばどちらかが死ぬより先に殺せるかもしれないけど、普通におとりをするより逃げにくくなるし、死亡率が上がるよ」
「あ⋯⋯⋯はい⋯。おとりさせてもらいます」
名前から重そうな武器を運びながら誰かからの攻撃を避けるのは、運動心怪我終わっている俺には絶対に無理だろう⋯
「ほんじゃ二つ目の、代金なんだけど、俺友達数人しかいないし親友なんていないから、一体いくらぐらいになるかしらないんだけど」
まぁ死ぬことなど絶対にごめんだが、友達が少ないことはなぜか絶対に伝えなければという使命感に迫られたのであずきに聞く。あずきは死んだ目を微かに輝かせて
「死ぬ覚悟着いたようでうれしいよ。君が友達が少ないことはリサーチ済みだから、先に調べておいたざっくりで言うと、死に方と飛び散り具合にもよるけど、友達は一人あたり大体30万円から最大600万円ぐらいかな。もし君が最期に友達を想いたいならどこか隅で窒息死するのが一番いいよ」
「最大600万」その言葉が一瞬頭を真っ白に埋め尽くした
「え、まじ600万円?」
「まじ」
友達はトロールかましてきたこともあったかそれくらいの報いはいいとして、これまで生まれてきてから今の今まで迷惑かけ続けてきた家族に割合上それ以上となってしまう負担をかけさせるわけには絶対に行かない。何としても生き延びなければ。俺は深く決意し拳を握る。
けれど、一応と思いあずきに向かって
「聞くだけだけどなんでそんな高いんだ?」
あずきは始めて表情というものを出し、なにやら得意げな顔で
「今年に入って馬と船でだいぶ負けてるからね。早く借金を返済しないと」
その顔や発言、全く妖怪に見えず、むし俺より人間らしいと思ってしまった




