サンタクロースが赤いのはなんでなんだろうね
「はい?」
サンタと迫撃砲という並んで聞きなじみがない言葉に思わず聞き返す。女はやれやれといった顔をしながら「だからサンタが空爆を仕掛けてくるから、被害が出る前にサンタを打ち落とすってこと。わかった?」
「いやもっとわからなくなったんですけど⋯え、サンタってクリスマスのサンタですよね?」
「そうだよ。まぁそんなに時間ないから外に出る準備して。詳しい話はそれから」
なぜ知っているのか、クローゼットから俺の服を適当に取り出し、俺に差し出す
「パジャマじゃないんで出るならこのままで大丈夫ですけど⋯」
女は初めて表情を変え、「チゲナベべ⋯トンビサ」何やら母国語っぽい言葉で驚愕した
5時になると、日が顔を出し、薄暗さを残しながらも辺りが明るくなってきている。ぽつりぽつりとランニングやら散歩をする人も見える。
「私は君たち人間で言う妖怪の小豆洗い。今から戦うサンタクロースは元々西洋の妖怪だったんだけど、うまいこと人間社会に溶け込んで、今の感じになったの。それでサンタクロースの妖術だけど、基本的にはそりから降りてこないし地上30メートルより下には⋯」
「ちょちょちょ待ってください。え?あなた妖怪?」
いきなり当たり前のように説明を始めだす女に宗太が話を止める。「そうだけど」と平然と女が返すので
「いや、え⋯小豆洗いっておばあさんじゃなかったんですか?あなた言っちゃなんですけどロりですよ」
女は縦横共に小さく、小学校6年生に見える。確かに言われてみればボロの服を着ているが⋯⋯そうはいってもやはり妖怪には見えない
「言うならおばさんじゃなくておじさんだと思うよ。頭が禿げた。君たちの思っている小豆洗いは、小豆洗いの中で、一番人間に友好的で積極的に話しかけてたから小豆洗いと言えばこの人ってイメージがついたんだよ」
「あ、そうなんですか⋯けど、あなたが妖怪だっていう証拠ないじゃないですか」
その小豆洗いのことが本当だとしても、目の前にいる一見普通な少女が妖怪だと信じれる証拠は出てきていない。どちらかと言えば、子供が俺のことをだましているんじゃっとも思っている。まぁそれだとしたら、さっきの拳銃とかは説明できないが⋯まず妖怪がそんな近代武器使っていいのか⋯
「いいよ私の能力教えてあげる」
少女は白い掌を宗太に見せつけ、宗太の手を握る。直後、握った小さい手からずぶずぶとした変な触感がした。少女がゆっくり手を離す。宗太の手には小豆が握られていた
「自由自在に小豆をだすことができるの。これが根源的な力で、それのサブ的な感じで、小豆武器とし使うために、小豆を放つ拳銃とかの道具を出せるの、この二つが小豆洗いのいわゆる妖術」
ぽんぽんぽんとテンポよく能力とやらの説明を続ける少女に、細かく疑っては話が一向に進まないことを悟った宗太は、物理法則などの科学的問題は妖怪の力だから可能なんだとざっくり理解する
「あと妖怪はそういった種類別の能力と同時に、姿を消したり、さっき君の部屋につかったものをもとの状態に戻したりといった普遍的な力も持ってる。これはいわゆる怪異ってやつね。その規模とか強さとかはその妖怪のエネルギー、妖力量によってきまるから」
「大体わかりました」
「呑み込みが早くて助かる。あと私の名前は荒井あずき。あずきでいいよ。それと君は性格上ため口の方がしゃべりやすいと思うからそってで大丈夫」
「おけ」
「きりかえ早いね」
言われた直後にためらうことなくため口で話すと、あずきがそういう。そのままあずきが目指す目的地に行くため、駅に向かった
始発の駅には始発をまつ死にかけのサラリーマンがごった返していた。大手企業の父と専業主婦の母のもとで育ったきた宗太にとって、こういう現実は全然見たことがなかったので、驚きのあまり少し後ずさりしてしまう。
「私は姿消すから、君は切符買ってきて」
あずきはそう言って、どうどうと駅員のいる改札を素通りで抜けていった。あずきの言った通り見えていないといった感じで、駅員は無賃乗車のあずきに視線すら向けない。それより、駅員から見るとずっとひとりで改札を見ている風に映る俺を警戒しているようだった
しっかり買った切符を駅員に見せ改札を抜ける。何人ものサラリーマンが寝ている椅子の端、なぜか空いている2つの席をあずきは指さした。座るとすぐにあずきが缶コーヒーをポケットから取り出し、俺に差し出した
「手伝ってもらうわけだから先に代金は支払っておくよ。もらわなくてもいいけど、これ以上何も出す気はないよ」
顔だけ見れば童顔の美ロリからの差し入れは断るわけにはいかない。
「いや、ありがとう」
寒さもあり受け取るとすぐに缶を開き、口をつける。それにあずきは驚いた様子で
「妖怪からもらったものを疑わず飲むのは良くないと思うけどなぁ」
渡しておいてなんだと言いたくなるのをぐっとおさえ
「そりゃあロりからの差し入れは何が入っていようとおいしくいただくよ。小豆洗いなら、ぜんざいの方がほしかったけど」
「ボッサ」
「え、なんて?」
何か母国語でいったが宗太の耳には何と言っているのかよくわからない。相変わらずウザったらしいほどの元気な顔の電車が向こうからやってきて二人は席を立った




