その女、凶暴につき
明日は入学式であるにも関わらず、宗太は夜遅くまで仲間とゲームに勤しんでいた。蜘蛛の巣が張り巡らされたカーテンが外界を完全に遮断し、パソコンからの光がだけが散らかったペットボトルや積み重なった茶碗を照らす。
「赤三、カバーカバー」
宗太の手は止まることは無い。宗太の声で起きたのか、外から鳥のさえずりが聞こえてきた
「っち、あークソ。死ね」
深いため息を漏らす
「まじお前のせいだからな。明日覚えとけよ」
「わりーぃ。明日なんかおごってやるから堪忍してや。てかもう今日か」
デジタル時計は黄緑色で4・44分を指す。
「うわ、444やん縁起悪」
「はぁーねむいからもう寝るわ」
通話越しに聞こえてくるあくびの音や椅子をきしませる音、本当はまだやりたいが、数時間後に学校があるので、さすがに寝ないとまずい。しぼんだ目をこすると、友達はもうすでに通話を抜けていた
「なんか声ぐらいかけてからいけよ。あいつほんと常識ねえわ」
電源ボタンをクリックして画面を暗くさせる。体を大きく伸ばしてベッドに倒れ込んだ。アラームをかけようとスマホを開くとまぶしい光が目を痛ませる。どうせ母にたたき起こされるまで寝ているので意味はないが、これをかけておかないと起きようとした感を伝えれないのでつけている。
布団を体にかけ目を閉じるとさっき聞こえた鳥の鳴き声が、さらによく聞こえてくる。耳を澄まし聞いていると、その時発砲音が聞こえた
「え、銃声?」
自然と目がぱっと開き、数年ぶりにカーテンを開け外を見ると、近所の家の人がつぎつぎ窓を開けだし始めた。あんまり近所に顔を見られたくない宗太は、そっとカーテンを閉める。
「聞き間違い⋯じゃないよなぁ」
明日近くに住んでいる友達がいるので、そいつに学校で聞こうと決め、再び目を閉じるよう努めた
「バリンッ!!」
今度はさらに近くでガラスが割れる音が響く、いや⋯近くというより、俺部屋の窓が割れ、誰かが飛び込んできた。入ってきたのは小柄な女で、散らばったガラスの上で割れた窓から体を乗り出し、発砲し始めた
銃声は鼓膜が痛めさせる。耳をふさぎながら
「ちょ、何してんの、ここ俺ん家なんだけど」
銃声に負けないよう大声で叫ぶも、少女はちらりとこっちを見ただけで発砲を止めない。
「ほんと近所迷惑なんで」
無理やり止めてやろうと、ベットから足を下ろす、と着足地点にあったガラスの破片が足の肉に食い込んだ
「あ〃ーーい〃っだいいいい」
「チョゲタダ。ポンチカ」
聞いたことのない言語を話し少女は発砲をやめ、体を床で足をさする宗太に向ける。
「サガムンゾ、ホシイダケ?」
そういい少女は銃口を宗太の額に押し付けた。よくわからないけど静かにしろ的なことを言っているのだろう⋯
「静かにします」
震える口で静かに答える
「ウラビダ」
額から拳銃を離してそう吐き捨てる少女の瞳は死んだような赤色だった。
(強盗⋯いや殺人犯か、いやまて銃を持って重心もぶれず打ち続けられるってことは、だいぶ訓練された人間か⋯だとしたら自衛隊の⋯⋯なんだ?)
どう頑張っても答えは見つからない。発砲をやめた少女は俺の部屋をうろうろしながら、何かを探しているような感じだ。そして、あれだけの騒音、一回から迫ってくる足音が近づいてくる
「宗太ーあんた何やってるの?でっかい音したけど」
母の声は怒っているときの大きさだ。けど一体これをそう説明すればよいのか全く浮かばない⋯
窓からいきなり女が飛び込んでて銃撃戦か何かをしている⋯⋯やっぱりどう考えてもいける気がしない
宗太は諦めに徹し、布団に体を隠して、諦めて今の現状を見てもらうことにした。俺が何か言うより、銃持ったこの女を見てもらったほうが絶対にいい
扉は勢いよく開いた
「宗太何やってんの⋯⋯って、あれ?」
怒号が聞こえてこない、恐る恐る布団から顔を出し見てみると、部屋は言うも通りで女もおらず、何かあった痕跡すらなかった
「な、なに?なんか変だった?」
よくわからない状況にこっちも賭けに出て、しらこく今起きた風に目をこすって今起きた風を装う
母は分かりやすく戸惑いながら
「あ、いや⋯勘違いだったのかな」
いきなり怒鳴ってきた謝り一つ入れないまま閉めた扉の裏、少女が息が立っていた
「ひぎゃーー」
宗太の悲鳴が銃声の比にならないほどでかく響く。
「すいません、すいません、すいません命だけは」
実在した不気味な恐怖に、許しを請う宗太に女は飛び掛かり、叫ぶ宗太の口をふさぎこんだ
「どうかした?」
扉の向こうから母の声が聞こえる。
(やった、お母さんがまだ近いから助けてもらえば)
だがどんだけ叫ぼうと踏ん張っても、女の塞ぐ手は力強く声が出ない。無表情のまま女は扉にむかって
「なんもない、足ぶつけた」
俺と同じ声でそう言った
「あんまりうるさいことしないでね。まだみんな寝てるんだから」
あくびをしながら階段を下る足音が聞こえてくる⋯
去ったのを確信した女はゆっくり、男の口をふさぐ手をどけた
「あ⋯あの、俺って殺されるんですか⋯」
「どうだろうね。君が協力してくれかどうかかな」
女は拳銃を宗太の瞳に強く押し付ける
「⋯⋯はい⋯なんでもさせていただきます」
「良かった。なら協力してもらうよ」
「ちなみに何をすればいいんですか⋯」
おぼつかない口調で尋ねる宗太、女は平気な顔で
「サンタクロースが越境攻撃を仕掛けてくるから、対空迫撃砲で迎え撃つ」
女は銃口を離しながらそう言った




