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ノア・ナイトメアの本当の目的

「はっ……」


 さっきまで悪夢を見ていたはずのエーリカが、突然目覚めて、上体を起こす。


「いったぁぁぁいっ!!」


 すると、エーリカの顔を覗き込んでいたマーレと額がぶつかった。

 エーリカは「ああ、ごめん、マーレ……」と、寝起きの低い声で謝った。


 エーリカは激しく息を乱し、額に大量の汗を浮かべていた。


「エーリカちゃん、左腕治ってない!?」

「あ、ああ、そうね……」


 勇者の剣技によって失われたはずのエーリカの左腕は、元通りになっていた。相変わらず、半生半死ハーフゾンビらしく、どす黒く腐敗した色をしているが。


 エーリカは何ごともなかったかのように、慣れた手つきで白い包帯を左腕に巻き直した。


「腕が戻ったのはよかったけど、エーリカちゃん……寝てる間に、すっごいうなされてたよ」

「大丈夫、エーリカ?」


 マーレと僕の心配を他所よそに、エーリカはノアの棺に駆け寄った。


 そして、棺の透明な蓋を開けて、その中で眠るノアの体を抱きしめた。


「ノア様、ノア様っ……あぁ……」


 エーリカはノアの名を何度も呼ぶ。彼女がこんなにも感情を乱しているのは、とても珍しい。


「エーリカ、もしかして泣いてるの?」

「……」


 沈黙が馬車の中に満ちる。

 雨粒が、馬車の屋根を打つ「ポツ、ポツ」という音がうるさく聞こえる。


「エーリカちゃん、アタシでよければ、お話聞くよ」


 マーレはエーリカに寄り添う姿勢を示した。


 しかしエーリカは「ほっといて」と素っ気なく言った。いつものエーリカの、浴用に乏しい低い声だった。


 マーレは「そっか」と声のトーンを落とし、毛布にくるまって身を縮めた。


 そんな中、ヴァルハイト一切の反応を示さず、ノアの棺の隣に座って新聞を読んでいる。


……いまさらだが、目元に赤い布を巻いていて、どうして文字が読めるのだろう?


「ヴァルハイト、」


 僕は彼を呼んだ。


「なんだ、アレス?」

「その……すごく聞きにくいんだけど……僕たちに隠していることあるよね?」


 ヴァルハイトは「はぁ」と息を吐いて間を置いた。


「人にも、悪魔にも、他人に話せないことの一つや二つあるだろう」

「一つや二つじゃない。ヴァルハイトは、すごく大きなことをたくさん隠してるよ」


 ノア・ナイトメアは謎が多すぎる。ヴァルハイトやエーリカに聞きたいことは、山ほどあった。


「教えてよ。僕たちは、同じノア・ナイトメアの仲間なんだから」

「……」


 ヴァルハイトは新聞を丸めて握った。そんな彼に、核心に迫る質問を次々に投げつけた。


「――どうして、ノア・ナイトメアは悪魔狩りをしているの?どうして僕たちは、勇者と戦わなきゃいけないの?どうして、ノアさんは殺されて、ヴァルハイトは悪魔になったの?……どうして、エーリカは泣いているの?」


 ヴァルハイトは腰を浮かせて座り直した。


「話せば長くなる……だが、貴様が聞きたいというならば、聞かせてやろう」

「うん、聞きたいよ、知りたいよ」


 毛布から顔を覗かせたマーレも「アタシも、知りたいかも」と賛同してくれた。


 そして、ついにヴァルハイトがノア・ナイトメアの真相を語る。


「まず、ノア・ナイトメアの目的は悪魔狩りではない。それは、活動資金を得て、人々の信頼を得るための建前に過ぎない――我々の真の目標は、【賢者の石】を発見して、その石でノアをよみがえらせることだ」


 ノア・ナイトメアの目的は、悪魔狩りではなく、賢者の石によるノアの復活……僕は言葉を詰まらせた。何と言っていいのか、分からなかった。


「賢者の石って、勇者の一番弟子の【大賢者】が作ったとされる伝説の石よね?」

「その通りだ、マーレ。死者すらも蘇らせる魔力がこめられた伝説の石を探し求めて、オレとエーリカは旅をしていたのだ」


 ヴァルハイトはタバコを口に咥えたが、ノアの顔を見下ろして、火を付けなかった。


「つまり、僕とマーレを仲間に入れてくれたのって……」


「むろん、貴様らに賢者の石の探索に協力してもらうためだ。探す【目】は多いほうがいいだろう」


 つまり、僕とマーレを仲間に入れてくれたのも、街に出た悪魔を倒して市民の信頼を得ていたのも、ロレーヌ村の依頼を引き受けたのも……全部、【賢者の石】を探すための仲間を得るためだったと言えるだろう。


「賢者の石を見つけ出してノアを蘇生し、ノアを女王に復位させてドイツ帝国を再興する……それが、ノア・ナイトメアの最終目標だ」


「え……え、ちょっと待ってヴァルハイト、いきなり話がわけワカメになってるんだけど」


 マーレが困惑する。僕も、いきなり話のスケールが大きくなりすぎて、ついていけなくなった。


「これも、貴様らには話していなかったことだ――ノアは、ドイツの女王で、オレは帝国の宰相※で、エーリカはノアに仕えるメイドだった」



※日本でいう総理大臣



 つまり、ノアはドイツの頂点に立つ皇帝で、ヴァルハイトはドイツの政治のトップだったということだ。そんな偉い二人が、なぜ、悪魔狩りの旅に……?


「貴様らに、洗いざらい、すべて教えてやろう――オレとノアとエーリカの過去に何があったのか……



先代勇者ライラの裏切り


オレの老師の死


女王ノア


王族ハプスブルク家とオーストリアの大帝国


ノア女王のドイツ帝国の成立


強欲の悪魔ナポレオン


ロシアとの同盟


エーリカの悲劇的な過去


ノアの死産


憎き嫉妬の悪魔ミヒャエル


オレが悪魔になった経緯


賢者の石……



世界の真実が、ここにある。




第1章 悪夢の始まり編 ―完―

♦読者のみなさまへ♦


一章完結です。お疲れ様でした。

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