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36 繋ぎたい想い…①

8月上旬


静かに背後から近づいて行くと、ミカドが声を掛けるより先に、向こうも気が付いていた。


…流石に警戒は出来てるか。…いや、できてなかったら逆に困るな…。


「ユーゴ」


小声で見張りをしているユーゴに声を掛けると、ユーゴも軽く手を上げて応えた。


ミカドは早速建物の様子を尋ねてみた。


「様子はどう?」


ユーゴはミカドの問い掛けに停滞の意味を含ませた、ため息を一つ……。


「はぁ…特に動きもねぇし、変化は無いな。ガキが居るならまだ中のはずだ…」


変化無し…その手短な報告にミカドはホッと胸を撫で下ろした。


…良かった。…移動でもされてたらロスさんの計画と展開が変わるからな。


ホッとしたミカドの横で、エニアがボソリと呟いた発言にギョッとしてしまう。


「…相手は死んでも良いんだっけ?」


それを聞いたミカドは慌てた。



「いや、ロスさんも言ってたろ?殺すと向こうも引っ込みがつかなくなるって」


「あーそういや、言ってたなぁ」

ホセも忘れていたらしい。


「お前らさぁ…」



エニアの物騒発言に続いてホセのお惚け発言だ。

これが自分の仲間かと思うと頭を抱えて考えるのを放棄したくなった。


…俺がロスさんを信用できない原因って、もしかしてこの2人のせいか?

…俺がロスさんの立場ならこの2人をいつでも捨てられるように考えたかも……。



「まぁいいや。見張りはあそこの2人だけ?」


「ああ、だいぶ気は抜けてる様に見えるんだが…少し開けててあそこに行くのにどうしても目立つ…」


気を取り直したミカドの確認に、ユーゴは見張りの様子を追加して答える。



「お…?なら一気に行っちまうか?」


「いやいや…うーん、出来れば一人のタイミングを狙いたいな」


いつも気持ちが前のめりのホセは、今回も勇み足になっているようだ。

気分を下げるのもどうかと思い、ミカドは軽く止める程度に抑えておいた。


…ギルドと違ってここは静かに攻めないと駄目なんだぞ?…ホセも一緒に話を聞いてたよな……?



「…馬鹿ね、ミカドは相手が一人の方が殺りやすいって言ってるのよ」


そういう意味じゃないよ…?


エニアの間違った解釈に心の中でツッコみながら、不安が込み上げる。


この後の展開が恐ろしかった。

しかし、ミカドは頭を振ってやはり考えるのを放棄した。



「おい、1人いなくなったぞ!」


まだここで足止めが続くと思って、集中する前だったユーゴは、突然変化した状況に慌てている。


「あ、ホントだ!み、ミカド!?どうする!?」


「う、うん…ち、ちょっと待って…」


ユーゴが慌て、ホセが釣られて慌て……周りが慌てていると、自分まで慌ててしまうから不思議だな…とか思いながら慌てていた。


ミカドも急な変化と仲間の慌てぶりのせいで頭が追いつかなくなっていた。



なんの事はない、全員心構えができていなかったのだ。


…落ち着け…俺…。

…こういう時ほど落ち着かないと……そうだ!…見えないだけで他にも見張りが居るんじゃ無いか…?


ミカドは自分にそう言い聞かせながら、努めて冷静に…視線を周囲に走らせた。


…他に隠れてるとかは無さそうだけど。



「…行ってくる」


「え…?何が??」


『何処に…?』ミカドがそう思った時には、既にエニアが物陰から出て姿を晒し、建物に向かってトコトコと歩き始めていた。


止める間もなかった、というか混乱している間に、エニアは結構先まで歩いていた。


「お、おい!エニアの奴!」


慌てたホセが頭を振りながら、ミカドとエニアを交互に忙しなく見比べ、目で訴えている。


恐らく『いいのか!?』とでも言いたいのだろう。


「良くないに決まってるだろ!?けど、もう見てるしか無いじゃんか!?」


言い合いをしている間にもエニアはどんどん進んで行く。

そして、ミカド達が慌てている間に地のマフィアと接触を果たしてしまった。


ミカドはヒヤヒヤしながら様子を窺い、何かあれば直ぐに飛び出そうと身構えた。



「ホセ!ユーゴも!エニアがやられそうなら直ぐに助けに行くぞ!!準備しとけよ!」


「…準備?もう終わったみたいだけど」


緊張感の無いホセの声。

見ると確かに見張りは無力化され、地面に力無く横たわっていた。


エニアが倒れた見張りの上に乗って手を振っていた。



「…あいつ、殺して無いだろうな」


「ど、どうだろ…?あっ、エニアの奴!戻って来るぞ!?」


無力化した見張りの足首を、エニアは片手で雑に掴み、敵への配慮を一切見せずに引きずっている。


「いや、運び方…」


思わず敵の見張りに同情して声が出た。

ニコニコしたエニアの様子は凄く楽しそうで、それがとても怖かった。


…駄目だダメだ!…ぼーっとしてた!!…ホセとエニアのペースに引っ張られたら駄目なんだよ…!!


我に返ったミカドはエニアが合流する前に、ユーゴの仲間に指示を飛ばしておいた。


そして捕まえた敵の見張りを縛らせ、数名はその場に待機させる事にした。



「よ、よし!気を取り直して慎重に行こう…今のは無かった事にしよう……」


「あんた、大変だな……」


同情されたミカドは、ホセとエニアだけではなく、ユーゴも仲間に欲しくなった。



…こ、こういう話が通じる仲間が欲しい!


エニアの暴走で、初っ端から行きあたりばったりになってしまった。

こんな調子が続けば成功するものも失敗に終わってしまうだろう。


幸い捕まえた見張り以外に、他の敵は見当たらない。

敵が見えないからと安心できないが、騒ぎが起きていないので、ひとまず安心しても良いだろう。


あと、自分が主導しなければイレギュラーが頻発してやはり失敗してしまうと実感した。


だからミカドは覚悟を決めて自分から建物に近付く事にした。



「調べるから静かに付いてきて」


…返事を待たずに行動に移す。…もうあいつ等の意見は聞かない!

…移動は素早く、俺の思うように動いてやる!!




『エニアのおかげ…?』で建物まですんなりと着いたミカドはドアに耳を当て、中の物音を慎重に探る。



ホセが真面目な顔で中の様子を聞いてくる。

ミカドは何だかそれが気に入らなかった。


「どうだ?」


…お前ら以外に問題は無いよ。

「中は静かだな…物音も全く聞こえないし…ユーゴ、そっちは?」


ホセの問いかけに答えたミカドは、窓から中を確認するユーゴに問いかけた。


「寝てる奴らが何人か見えるんだが、起きてる奴は見当たらねぇな。全部で何人いるのか分からねぇし……」


…このまま見てても埒が明かない…か。


室内から音は聞こえず、窓から見える敵の姿も完全に警戒を解いて弛緩しきっているようだ。


これなら戦闘になる危険は極限まで抑えられそうだった。



「これから試しにドアを開けてみる。絶対に騒がず静かにしてくれよ?これは子供の無事が掛かってるんだからな?」


「分かってるって!何をそんなに心配してんだよ!全くミカドは心配性だなぁ…」


「ミカドはもっとロスさんの作戦を信じた方が良いよ?」


…お前らが問題起こすから心配してんだよ!


ミカドは理解しているか不安で念入りに…しっかりと言い聞かせ、ホセとエニアの様子を窺うと真剣な表情をしていた。


2人から軽率な行動の気配を感じないのを確認したミカドはドアノブに手を伸ばした。



ドアノブを捻り、静かにドアを開く。


『ギィ…』


夜中の空気にドアの軋む音が響いた。

静かだからだろう、小さな音でも大きく響いたように感じる。


緊張が高まり額から汗が流れた。


そういえば今は8月上旬、夜でもかなり暑かったなと、益体もない事をミカドは思い浮かべていた。


…くそ…集中が。


集中力を今一つ欠いたまま、小さく開いたドアから中の様子を慎重に窺う。


汗がじわりじわりと浮かび上がり、着ている服が汗で肌にピタッと貼り付く。

動きを阻害される不快感がミカドの不安を増幅させていく。


…何だ?…やっぱり全員寝てるのか??

…起きている人の気配はしないな。うん、そう…ナナもそうなんだ。



「大丈夫そうだな…」


「じゃあやるか!」


「その前に…室内が明るすぎるから、俺一人で暗くしてくる。頼むから静かにしててくれよ……?」


「分かってるよ!ミカドが安全かちゃんと見ててやるからな!危なくなったら直ぐに助けるからな!」


気が逸っているホセを見ると安心なんてとても無理だった。

膨らむ不安を何とか飲み込んで、ミカドは建物の中に侵入した。



…部屋を少し暗くしないと。


動いている人はいなくても、部屋の中には地のマフィアがウヨウヨいる。

静かに照明器具に近寄り、一つずつ部屋の明るさを暗く調整して回る。


『そうだミカド、建物に入ったら部屋を暗くしておいた方が良いぞ。暗ければ見られても敵だと認識されにくいし』


『ああ?他にも眠りを深くしたり隠れたり…あ、部屋の間取りとか家具の配置も把握してから動くと更に色々有利になるからな』


『それに、暗くてもミカドには蛇ちゃんがいるから問題無いだろ?圧倒的な優位が取れる…だから、蛇ちゃんも…頼りにしてるからね』



ミカドはロスのアドバイスを思い出しながら、部屋の視界をどんどん悪くしていった。


敵方から見れば完全に怪しい動きをしていたが、最初の照明を落とした後は動きやすくなった。

ミカドは暗いルートを選んでサクサク部屋を暗くしていった。


…酒の臭いが強いな。…みんな酔い潰れてるのか…?


『どうせ勝ったと思って宴会してる』


これもロスの言っていた事だ。

目の前の光景が、ロスの読みが当たっていた証拠だろう。


自分の考えより断然深く当たるロスの読みに、ミカドは胸がモヤモヤしていた。



…良いことなんだ。…嫉妬なんて、うん…分かってるよ。ありがとう。


ナナと協力しながら、ミカドは部屋の照明を丁度いい明るさまで暗くする事に成功した。



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■内容はほぼ同じですが、性的描写を省いていないバージョンです


【R18】因果の否定、混沌の世界でハッピーエンドを渇望する物語



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