28 差し出される手…②
意識が朦朧としている。
私はまた体調を崩してしまったようだ。
身体の節々が痛く、何をする気も起こらない。
私の思いを無視して、私の意思は逃れるように幻を見る。
「ザハグランロッテちゃん。美味しいデザートの店があるらしいから行ってみようよ」
そう言って私に伸ばされた手を…私は仕方なくというポーズで受け入れる。
それが堪らなく私の安心を生む手だったとしても…。
「今日も仕事かぁ。俺が仕事してる間、ザハグランロッテちゃんは暇じゃない?面白い本があればいいね!」
私に向かって手が差し出される。
この男に出会うまで、そんな優しい手がある事を…私は知らなかった…。
知ってしまった…不安が芽生えた。
「お腹空いたなぁ…今からご飯食べに行こうか!」
何気ない会話……。
大抵は私が聞くばかりの会話。
楽しそうに差し出される手を、私は嬉しいと思いながら取る。
いつか無くなるのだと思いながら……。
「楽器弾きたいけど街中だと怒られちゃうからさ、山に行こうと思うんだけど一緒に行かない?」
私は毎日本を読んでいるだけだ。
働きたくないわけでは無い…ただ、望まれる方を選んでいる。
私に向けられる嬉しそうな顔を見るのが好きだから。
まぼろしのように私の前から消えるのが怖い……。
この手は…まぼろし。
あの手は……現実……?
「仕事も終わったし、お風呂入りたいな。火の縄張りに温泉があるらしいよ。ザハグランロッテちゃんも行こうよ」
本を読みながら……あの男が消えないか、私はいつも見張っている。
たまに目が合うと胸が弾む……。
いつまで私の視界に入っていてくれるのだろう……。
私は不安を消し去りたくて差し出された手を掴む……。
「そろそろ新しい服を見に行こう…え?大丈夫だよ!ザハグランロッテちゃんの服なら何着あってもいいと思うよ」
着るものなんて、綺麗であれば私は何でも良かった…。
私が汚れていると、あの男は何故か喜んだ…私を見ながら少し安心した顔で…。
理由も無く差し出された手…私が失いたくない手……。
「今日は夜の『木かげ』、居酒屋にご飯食べに行こう。ザハグランロッテちゃんの好きな料理を頼もうか」
あの男の手料理が私は好きだ……外で食べる料理よりも。
でも…外で食べるとき、私は心がお腹いっぱいになるくらい尽くされ…満たされる……それも嬉しい。
今日は心が満たされる日…。
手が…その手が消えるのが怖い……。
「ちょっと外に出てくるから待っててくれる?」
あの男はちょくちょく私を置いていく……それが堪らなく嫌だった。
私は死んでも構わない…でも、一人は嫌だ…いつからか嫌になっていた……。
置いていかれる…手は差し出されない。
「………してくるよ」
「ここにいてね…」
「………ごめん」
嫌だ…置いて行かないで…。
一人にしないで…いやだ……いや…




