表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/115

28 差し出される手…②


意識が朦朧としている。

私はまた体調を崩してしまったようだ。

身体の節々が痛く、何をする気も起こらない。


私の思いを無視して、私の意思は逃れるように幻を見る。



「ザハグランロッテちゃん。美味しいデザートの店があるらしいから行ってみようよ」


そう言って私に伸ばされた手を…私は仕方なくというポーズで受け入れる。

それが堪らなく私の安心を生む手だったとしても…。



「今日も仕事かぁ。俺が仕事してる間、ザハグランロッテちゃんは暇じゃない?面白い本があればいいね!」


私に向かって手が差し出される。

この男に出会うまで、そんな優しい手がある事を…私は知らなかった…。


知ってしまった…不安が芽生えた。



「お腹空いたなぁ…今からご飯食べに行こうか!」


何気ない会話……。

大抵は私が聞くばかりの会話。

楽しそうに差し出される手を、私は嬉しいと思いながら取る。


いつか無くなるのだと思いながら……。



「楽器弾きたいけど街中だと怒られちゃうからさ、山に行こうと思うんだけど一緒に行かない?」


私は毎日本を読んでいるだけだ。

働きたくないわけでは無い…ただ、望まれる方を選んでいる。


私に向けられる嬉しそうな顔を見るのが好きだから。


まぼろしのように私の前から消えるのが怖い……。

この手は…まぼろし。

あの手は……現実……?



「仕事も終わったし、お風呂入りたいな。火の縄張りに温泉があるらしいよ。ザハグランロッテちゃんも行こうよ」


本を読みながら……あの男が消えないか、私はいつも見張っている。

たまに目が合うと胸が弾む……。


いつまで私の視界に入っていてくれるのだろう……。


私は不安を消し去りたくて差し出された手を掴む……。



「そろそろ新しい服を見に行こう…え?大丈夫だよ!ザハグランロッテちゃんの服なら何着あってもいいと思うよ」


着るものなんて、綺麗であれば私は何でも良かった…。

私が汚れていると、あの男は何故か喜んだ…私を見ながら少し安心した顔で…。


理由も無く差し出された手…私が失いたくない手……。



「今日は夜の『木かげ』、居酒屋にご飯食べに行こう。ザハグランロッテちゃんの好きな料理を頼もうか」


あの男の手料理が私は好きだ……外で食べる料理よりも。

でも…外で食べるとき、私は心がお腹いっぱいになるくらい尽くされ…満たされる……それも嬉しい。


今日は心が満たされる日…。

手が…その手が消えるのが怖い……。



「ちょっと外に出てくるから待っててくれる?」


あの男はちょくちょく私を置いていく……それが堪らなく嫌だった。

私は死んでも構わない…でも、一人は嫌だ…いつからか嫌になっていた……。


置いていかれる…手は差し出されない。



「………してくるよ」


「ここにいてね…」


「………ごめん」



嫌だ…置いて行かないで…。

一人にしないで…いやだ……いや…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




■内容はほぼ同じですが、性的描写を省いていないバージョンです


【R18】因果の否定、混沌の世界でハッピーエンドを渇望する物語



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ