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2 自分を形作るもの

5月


結論から言うとスカーバラ家は没落した。

これまでの貢献を考慮され、かろうじてスカーバラという家名は残ったが、人々の興味が薄れるまで、由緒正しき家名は嘲笑の象徴として揶揄され続けるだろう。


そして、スカーバラ家の財産は全て没収された。

その後、自分の派閥で寄子同然だった貴族の援助を受け、なんとか自分たちが生活できる小さな基盤を作ることができた。


そんな家の事情の中で、彼女は政略結婚に利用される事を嫌い、今も他人を頼らず、誰にも媚びず、誰にも心を許さず、誰にも感情を読ませない、そんな人間でいることを続けていた。


つまり、相も変わらず人から好かれない、可愛げのない女でいる事を選んでいた。


通常であればそんなワガママは許されないだろう。

しかし、スカーバラ家は没落しても過去の立派な栄誉は残っていた。

彼女が高飛車で可愛げのない態度でも、それが許される程度には…。


相変わらず前後左右、それに上下を加えてあらゆる方向に彼女は他人との距離を作っていた。

唯一、仕方無く気を使うのは今の仕事を世話してくれた貴族の令嬢に対してだけである。



「この依頼は、達成できなかった場合違約金が発生します。ご理解の上、依頼を受けますか?」


「あぁ、分かってる。この依頼を受けるよ」


「承知しました。それでは違約金が前払いで8シルバーになります。このお金は依頼達成時に報酬と一緒に返還されます」


「えぇ…っと、ほい、8シルバーな」


「…確かにお預かりしました。それでは依頼が達成できましたら証明できる物をお持ちの上、ギルドにお越し下さい」


「りょーかい、ありがとねー」


「次の方、こちらにどうぞ」


慣れた手際でギルドの受付を捌いているのがザハグランロッテだ。

彼女はいま、ギルドの受付嬢として働いていた。



「グランロッテさんのお客さんはみんな普通の人ばかりだし…いいなぁ…」


休憩中、同僚のサラがそうボヤいた。

それに対して彼女は何も答えない。

答えるつもりもなかった。


サラがボヤくのも理解はできる。

ギルドの受付は、粗暴な冒険者を相手にする職業である。

好ましくない男どもから挨拶の様にナンパされる場所なのだ。


時には危ない奴も混じっていたりするから注意も欠かせない。

まあ、そういう危ない輩は大抵冒険者同士の自浄作用によって排除されるのがせめてもの救いだ。


そんな場所で、サラは毎日の様にナンパされまくっている。

ちなみにサラは既婚者である。

ザハグランロッテも働き初めはナンパの洗礼を受けた。

しかし、持ち前の距離感で冒険者のナンパを完全にシャットアウトしてのけた。


例えば、

「なあなあ、仕事が終わったら飯に行こうぜ!奢るからよ!」

という奴がいれば、

「貴方には、興味が湧く余地すらないわね。仕事の邪魔…不愉快よ」

という感じで冷たくあしらったり、


「おい!少しくらい付き合えよ!」

なんて強引な奴がいれば、

「これ以上私に関わるなら除名処分を申請した上で関係各所に通達するわ」

そう言って脅して退けた後に追い打ちで憲兵に突き出したりと…。


些細な事でも徹底して距離を取る行動を選ぶ彼女に対し、冒険者は次第に距離を置くようになった。

ノリで生きているような冒険者は彼女を構っても面白くないと学習する事になったのだ。


とはいえ、普通に依頼を受けにくる冒険者もいるので、普通の冒険者からの評判はそこそこだった。

そして、結果としてザハグランロッテに近付かないような冒険者はサラの方に集中する事になり、今に至る。

だからサラの担当する冒険者は面倒な奴らばかりになっているのだ。


それを、押し付けられたと思い込み、いつ逆恨みに変わるか分からない。

なので、彼女はサラに対しても距離を取っている。

それが自分を守る距離にもなると彼女は信じている。


ある日、ギルドの仕事で隣町のギルドに行くことになった。

予定の数日前まで結構な雨が降っていて、当日の天気がどうなるか彼女は不安を感じたが、どうやら晴れてくれるようだ。


隣町までは馬車を使うし、ギルドに所属する冒険者が報酬を受けて護衛に付く事になっていた。


距離的にも当日に着く程度なので、そう大したものではない。

荷物も隣町で使う着替えを数日分持っていくだけだ。


「さあ、出発するよ。忘れ物は大丈夫ですか?」


「私は問題ないわ」


雑な言葉と丁寧語の混じる御者を務めるのはギルドの冒険者である。

その御者の確認に、ザハグランロッテは愛想も無く端的に答えておいた。


御者は彼女の態度を気にすることなく、他の同行者にも同じ様に問題ないか確認しに行った。

そして確認を終えると隣町に向けて馬車を動かし始めた。


馬車の周りは馬に乗った5人の冒険者が護衛として並走している。

この冒険者たちは隣町のギルドで仕事を受けるのが目的で護衛任務を受けていると聞いた。

要は、この地に飽きたから別の地域で仕事がしたい者たちだ。



しばらくは特に問題なく進んでいたが、先行する護衛の冒険者が先の橋で問題を見つけたらしく報告に戻って来た。


「うーん。通れると思いますが…絶対とは言い切れませんね…」


冒険者の報告通り、橋は不安定になっており、御者は自信なさげにしている。

見れば先日の雨で川の水が増水しており、かなり橋が壊れているようだった。


「馬車ごと落ちたらアホらしいわね。私は歩いて橋を渡るわ」


その場の話し合いが長くなりそうだと感じた彼女は、その無駄を嫌った。

歩いて渡ると宣言し、さっさと橋を渡ると、残った一団に無言の圧力をかけた。


それを見た護衛の冒険者たちは話し合うのを止め、馬を降りて一旦橋を渡る事になった。


悩むより試す…そういう流れに変化したのだ。


人は凸凹した橋の上を、馬は川の中を歩いて渡った。

馬車は水の抵抗を受けるので人が牽いて橋を渡るしかなかった。

しかし馬車の車輪は段差に弱い。

補助されてやっと橋を渡る事ができる…そのくらいには苦労する。

そうして渡った先で新たなトラブルが発生する。


「これじゃあスピードも出せませんや」


御者は困った顔で車輪を指差している。

橋を渡るときに馬車の車軸が破損してしまったようだ。

ゆっくりなら走れるが、その速度は人が徒歩で普通に歩く速さの半分くらいまで遅くなる…という話だ。


「やれやれ、1日で着く距離がとんだ災難だな…」


護衛の冒険者をまとめている女冒険者は、立て続けに発生するトラブルにボヤいているがそれも仕方ないだろう。


「直せそうにないのか?」


「ええ…これは部品が無いので街まで行かないと修理は無理ですね…」


「それならどこかで野営をする必要があるな…」


女冒険者は、御者と話してから野営の必要性を考慮し始めていた。

深く考えている様子の女冒険者をザハグランロッテは観察していたのだが、視線に感づいたのか、ザハグランロッテは女冒険者と目が合ってしまった。

すると、女冒険者は彼女と目を合わせたまま近づき、話しかけてきた。


「すまないね。1日で済むってギルドからの依頼だったから、街では自己紹介も省いたが、こうなってはそういう訳にも行かないだろう。私の名前はローズという。馬車のトラブルで、今日のうちに隣町までというのは無理そうなんだ。野営になると思うから頭に入れておいて欲しい」


ローズと名乗った女冒険者は状況をそう言って説明してくれた。


ザハグランロッテは事前に冒険者の情報をギルドから教えられていたので、この女がローズという名前である事も、冒険者ランクがCである事も知っている。

更に言えばザハグランロッテの為にギルドが女の隊長を用意してくれたのも知っている。


「トラブルなら仕方ないわ。私にできる事は無いけれど了承して頂戴」


愛想の無いザハグランロッテの口調にローズは苦笑したが、その後は笑いながら了承してくれた。


ギルドから私の性格は伝わっているのね…。


ちなみにローズの冒険者ランクのCというのは経験豊富な部類で、かなり安心できるランクだったりする。


「馬車は高価だから置いていけないんだよね…」


足止めは仕方が無いから勘弁してくれ…そう笑うローズを、ザハグランロッテは相手にせず、無表情のまま自分の疑問を投げつける。


「それで、私はどうしていればいいのかしら」


彼女の度重なる失礼とも言える態度に、流石のローズも肩をすくめたが、それでもあまり気にしていない様子だった。


「お嬢さんは馬車の中でゆっくりしていれば良いよ。これは護衛の範疇だからね」


「そう…それならそうさせてもらうわね」


要件は済んだとばかりに馬車に向かうザハグランロッテだが、実は自分のこの態度が正解だったのか葛藤していた。


もう少し愛想良くした方が良い場面だったかしら…。


かといって長年の処世術は、今更変え方も分からない。


ここまでの移動中、護衛をしている男の冒険者が影で愛想が無いとか能面女とか言っているのは知っている。

その様に言われるのは癪だが、原因が自分にあるのもまた事実なので、聞こえていないフリをしながら甘んじて受け入れている。


とはいえ野営までするなら少し悪手だったかも…。


悩んだ所で今更である。

それでも、隣町に安全に着こうと思えばこれ迄の態度はマイナスだったかもしれない、そう思わずにはいられなかった。


無意味と思いつつ、しばらく考えていると馬車がようやく動き始めた。

どうやら先に進む段取りは終わったらしい。


………。

思ったよりも遅いスピードに、ザハグランロッテは先行きの不安を感じた。

嫌な予感が当たらないよう祈るばかりだ。





「…に、……物…だ。数……ない…だろ…」


ん…外が…騒がしい??

外から言葉では言い表せない不穏な雰囲気を感じ、彼女は馬車の荷台から顔を覗かせ様子を窺った。


するとローズと他の冒険者がああでもないこうでもないと意見のやり取りをしているのが見えた。

聞こえてくる単語から魔物が先にいるのではないかと予想する。


意見を言い合っているという事は、おそらくまだどうするか行動を決めあぐねているのだろう。


進みながら議論しているのは馬車のスピードが遅いからだろう。

動きが遅く焦りを感じ難いという理由もあるかもしれない。

しかしザハグランロッテは、嫌な感じがして直ぐにでも引き返したいという気持ちになっていた。


不安を拭えないまま様子を窺っていた彼女に、ローズが気が付いた。

ローズはザハグランロッテに近寄ると、先の状況を説明してくれた。


「この先に魔物がいるらしい。数は一体ということだが油断はできないから。いま話し合っているところなんだ」


「このまま進むつもり?」


「数が一体なら問題ないはずだ。けど確証がないからな。今は斥候を出している」


「そう…」


「…心配しなくても貴女が危ない目に合わないよう、私たちがいるんだ。しっかり守るさ」


不安が表に出ていたのかローズに気を使われてしまった。


「無理をする必要は無いでしょう。私は引き返したほうが良いと思う」


彼女は言っても無駄だろうと思いながらも、自分の考えを伝えてみる。


「はぁ?それだとギルドの仕事をすっぽかす事になるぞ?」


まるでザハグランロッテの考えが見当違いでもあるかのようなローズの反応に、思わず苛つきを覚える。

けれど、ここで揉めたり簡単に引くのは違う気がした彼女は、ローズにもう少し強く出てみることにした。


「順番は間違えない事ね。ギルドの仕事より無事でいる事が大前提でしょう」


「……ふむ…よし、それならそれを踏まえて相談してこよう」


険のある口調で提案したので反発も覚悟したが、ローズは不満を飲み込み、彼女の意見を尊重してくれたようだ。


やっぱり…落ち着いているわね…。

ランクC冒険者か…私よりよほど大人ね…。

先程のやり取りを思い返しながら、彼女は自分の高圧的な対応を少し恥ずかしく感じていた。



ローズたちが話し合う間、やる事が無いのでぼーっと景色を眺めていた。

目の前には森と山が広がっている。

静かだが、この山や森の中には数え切れない魔物や魔獣が潜んでいるのだ。


そう考えると、ここもやっぱり安全とは言えないわね…。


「お嬢さん」


もの思いに耽っていた彼女は不意に声をかけられてようやく、すぐそばにローズが来ていたことに気が付いた。


「私の名前はザハ・グランロッテよ」


特に意味は無いが、気付いていなかったと思われたくなくて、お嬢さんと呼んだローズに訂正を求めた。


名前が微妙に違うのは、没落貴族だと分かると面倒な事が多くなるため、家を出てからはスカーバラではなく、グランロッテという偽名を名乗っているからだ。


「これは失礼。グランロッテ譲」


「何かしら?」


「話し合った結果だが、このまま進む事になった」


やはりザハグランロッテの意見は通らなかったらしい。

とても愚かな選択だと思ったが、それを口にしても関係性が悪くなるだけなので黙っておく。


「…理由は?」


「引き返す方が安全だし、一度はそうなったんだが…あの橋がな…」


そう言われて彼女は壊れかけた橋を思い出した。


「もう一度馬車を渡らせるのはちょっと…、今度は車軸が完全に壊れる恐れがあるだろう?」


確かにそうだ…橋の事は頭から抜けていたわね…。

愚かな判断だと喧嘩腰に言い返さなくてよかったと思った。


「馬車が壊れても物が有れば修理は依頼者持ちだが、馬車そのものが無い場合は依頼を受けた側が弁償する事になるからな。しかもかなり高額だ」


つまり…。

ここまでは私の護衛だったけど…これからは馬車の護衛がしたいみたいね…。


「斥候に1人、馬車の近くで私が魔物を監視。残りの4人で休憩しながら馬車の動きを補佐させる…」


ローズはザハグランロッテの反応を見ながら話を先に進める。


「今回の依頼は隣町に行くついでに受けた依頼だから、私以外は報酬が安いんだ。だから不確かな情報で馬車を失くしてまで引き返すと大損になるって事さ…」


「はぁ…浅はかね」


「冒険者は遊びじゃねぇからな…」


ザハグランロッテの冷ややかな発言に、初めてローズが不快感を示した。


「価値観の相違ね。私は貴方たちの拝金主義に興味は無いけれど、引き返すのは無理そうね」


お金より命の方が大事…そう言いたかっただけなのに、声に出たのは嫌味の強い言葉だった。

言い過ぎたと後悔したがもう遅かった。


「強気な女は嫌いじゃないが、分をわきまえない奴はダメだ。自分すら守れないくせに…可愛げのない女だな」


ローズはそう言って背中を向けた。

最後に見せた軽蔑の顔が彼女の心に鈍く突き刺さった。


……まぁ…嫌われるのは慣れているもの…。


自己嫌悪で落ち込んでいると遠くから叫んだと思われる声が耳に入った。


「魔物が…ゴブリンの群れだ!」


一体という情報で、事態を軽くみていたローズ達が慌てている。

その姿に、ザハグランロッテの気分は少し上向いた…が。


バカ…!自分の方が正しいとか…そんなのはどうでもいい事…!


一瞬喜んでしまった自分に呆れてしまう。

ギルドの職員である彼女はゴブリンの群れがどのくらい脅威なのか、ある程度理解している。


Fクラス冒険者ならゴブリン1体を相手にできるが、負ける事もある。

Eクラス冒険者ならゴブリン1体に勝てるが、2体は無理な場合が多い。

Dクラス冒険者ならゴブリン2体を相手に勝負できる。

Cクラス冒険者ならゴブリン3体相手に勝負できる。

Bクラス冒険者ならゴブリンが10体いても逃げ切れる。

Aクラス冒険者ならゴブリンが何体いようが逃げ切れる。

Sクラス冒険者ならゴブリンが何体いても勝負できる。


これは冒険者が1人でゴブリンに対応する場合の目安である。

1人で対応する場合、仮にゴブリンが3体同時に仕掛けてくればAクラス冒険者でも安全に勝つのは難しいだろう。


そもそもBクラス以上の冒険者なら基本的にゴブリン相手に死ぬような立ち回りに持ち込ませない。

今回の様にゴブリンの群れに会敵してしまうツメの甘さは、ローズがまだCクラス冒険者としての力量だと証明しているようなものだった。


彼女の護衛はローズを入れて5人。


Cクラス冒険者はローズのみ…。

Dクラス冒険者が2人…。

残りはEクラス冒険者が2人か…。

群れが10体くらいなら勝負になるかしら…。


出発迄に確認しておいた護衛の情報を思い出しながら彼女は頭の中で計算した。


ああ…でも私を守りながらだと…8体くらいになるのかしら…。





………結論から言うとゴブリンの群れは予想よりも多かった。

恐らく20体はいなかったと思うが、それでも護衛達は連携がまともに取れずに翻弄された。


戦闘というのは想像以上に力も気力もスタミナも消費するものだ。

連携が取れれば気力を維持しながらスタミナを長く持たせることができるが、連携が取れなければ底の抜けたバケツの様に気力もスタミナも消費する。


ローズたちは頑張った…と思う。

既にEクラス冒険者は2名ともゴブリンにやられてしまい、ローズは守りたかった馬車を捨て、撤退戦を選択した。


こちらで戦えるのはCクラスのローズとDクラスの冒険者が2人しかいない。

勝たなくても良いとはいえ、既に疲労困憊の上、まだゴブリンたちは8体も残っていた。


この状態で1体とはいえ対応できる数を超えているのだ。

状況は最悪、死が喉元まで迫っていると言っても過言ではなかった。


「はぁ…はぁ…お前たち!あの…丘の向こうまで行って…それから散開して逃げるよ!!」

肩で息をしながらローズは護衛仲間にそう告げた。

そして彼女を見てこう続けた。


「譲ちゃん…悪いが、護衛はここまでだ……丘を越えたら…自力で逃げろ!」


「ふん、自分の事は自分でやるわ。今度はお金よりも命を大事にする事ね、次があればだけど」


「はっ!最後まで可愛げのない譲ちゃんだ!」


いつも通り澄ました顔で彼女はそう言い放ち、ローズは憎らしげな顔をしながら嫌味を言い返す。


「せいぜい生き延びることね」


彼女は再度…いや、最後の嫌味を言い放った後、背中を向けて歩き出した。


それを見たゴブリンが彼女を追いかけようとしたが、ローズが立ち塞がり1体のゴブリンを斬り伏せた。


「散開して丘を目指せ!」


ローズの号令で冒険者たちは丘を目指して各々が別のルートでゴブリン達を惑わせようとする。


そして、ザハグランロッテはローズ達の動きに合わせて森の中に身を潜めた。

ローズ達が一斉にアチコチに散ったのだからゴブリンの気もアチコチに散る。

しかし、やはり全部のゴブリンがローズ達を見ていた訳ではなかった。


2体のゴブリンが自分の姿を捜しているのに気付き、思わず舌打ちを鳴らした。


「やっぱりダメか…」


ジッとしていれば見つかって殺されるか、おもちゃにされるのがオチである。

彼女は考える。


通ったことの無い道を進むより…。

街に戻る方がマシ…かな…?

馬車には荷の中に食べ物もある…。

それでゴブリンも満足するかもしれない…。


希望としてはか細過ぎる。

それでも、彼女はまだ諦めず森の中に身を隠しながら来た道を馬車に向かって戻り始めた。








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■内容はほぼ同じですが、性的描写を省いていないバージョンです


【R18】因果の否定、混沌の世界でハッピーエンドを渇望する物語



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