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転生してもホラーにビビりまくるとは!?  作者: 半田捨句
プロローグ ~旅立ち~
7/29

7.初戦の後

「今日のところはもう寝よう。」

 もう気力の残っていない俺は枯れかけた声で二人に話しかけた。川で顔を洗ってから寝所に帰り横になろうとすると、レオが

「オレ達は主様(ぬしさま)の守りのため部屋前で番をしよう。」

 と少し前に聞いた台詞を言っていたため、熱弁をふるい一緒に寝るように説いた。レオは索敵が苦手なようだが直感に長けて身体そのものは強いと言い、だからこそ中距離戦ならまだしも近接戦でコマに負けたことにはかなりショックを受けていた。確かによく見ると全体的にレオの方が大きく、力強く見える。

 寝床に横たわると二人の位置を細かく指定し、川の字になってちょうど両方に触れられるような体勢となった。これで2倍もふもふだ!今後のことは寝てから考えると決めて、今度こそ俺は深い眠りに落ちたのだった。


-----------


 目が覚めるとレオがいなかった。コマ曰く張り切って獲物を探しに行ったとのこと。狩りは直観力が高い分レオの方が上手いらしい。

 川で顔を洗いながら気になったことを聞いてみた。

「二人はテレパシーとかは使えないの?」

「テレパシー…?念話のことだな。今は使える。同じ主人に使えているからだろう。というか(あるじ)にもずっと使っているだろう?」

「え…?」

 よく考えてみれば昨日からコマの口はずっと閉じている。離れても同じ音量で声は聞こえていたし、今もコマは水を飲みながらだ。

 ということは…?

(レオ、いまどういう状況だ?)

 レオに届けと念じてみた。

主様(ぬしさま)!今から獲物を持って帰るところだ!楽しみに待っててくれ!)

 頭の中ででレオの声が響いた。つまり声に出さなくても伝わり、遠隔でも会話できるということか。これは便利だ!

「それともう1つ。我らが揃ったことで前に守護していた御方がいたことを思い出した。なんとなくではあるが、居場所の方向も分かるようになった。獅子を感じていた時と同じだ。」

「気性の荒い御方ではない…?」

「それも獅子の時と同じく名前も顔もはっきりとは思い出せん。獅子にも確認したが同じようだ。」

「そうか。とりあえず会ってみないとわからないというやつか。ところで昨日なんか衝撃波みたいなの出してたよな?」

「あれはかつて吽波(うんは)と呼んでいた。見ていた通り周囲に飛ばすことが出来て、全方向ある程度コントロールすることができる。」

 そういえば俺の方には飛んできてなかったな。つまりそれくらいは精密に管理できるということか。

「一方で獅子が飛ばしていたのは阿呆…」

「阿呆じゃない阿砲(あほう)だ!なんかわからんが漢字で響いてきたぞ!!そもそもオレは頭より身体が先に動くだけで阿呆じゃねえ!!…主様(ぬしさま)、オレの阿砲(あほう)は直進して貫通力のある攻撃だ。小回りは効かないが威力はそこそこあるぞ。」

「身をもって体感したからな。強力な武器を得て頼もしい限りだ。」

 レオはごめんなさいと申し訳なさそうにしていた。

「あと、2人揃っていれば(あるじ)に強力な結界を張れるぞ。我々は守護が本懐だからその固さには自信をもっている。(あるじ)は人より少し頑丈なくらいで、強くはないからな。」

 …俺、強くないのか。弱いとは思っていなかったがいざ言われると少しへこむ。

主様(ぬしさま)、こんなことも出来るぞ!」

 挽回しようとしたのか、焦るようにそう言うと獅子はみるみる人の形へと変貌していった。筋骨隆々、浅黒い肌の長身に赤い長髪、正に大獅子のような…女性だった。最小限の毛皮で胸と腰回りを隠している。

「おまえ、女だったのか…ということはコマも…?」

 狛犬は同じように人の形へと変わっていった。こちらはすらっとした着物の男性だ。灰色の着物に紺の帯、青い髪は腰まであるストレートで、額にはΛ形の朱が入っている。

「…人との関わりが多かったのでな。この姿の方が何かと都合が良かったのだ。その時代に合うようにこれまでも化身していた。二人で行動することが多かったから男女の()()()になるようにしていた。もっともこの姿形は主の思いも多少関係するがな。」

 なるほど、俺の2人へのイメージはこんな感じだったのか。確かに違和感はない。…レオは立派なたてがみがあるから男性になるかと思ったが、コマと比べると声も高いし、話し方も軽いからこういう女性型になったのか。

「人型で戦えるのか?」

「出来ねぇことはないが…オレの阿砲(あほう)は出せねぇ。殴り合いとかなら普通の人間には負けねぇかな。狛犬の方は索敵と極弱の吽波(うんは)は出せるが身体能力だけなら主様以下かな。」

「人型になると我は一般人程度になってしまう。結界も張れるが少し弱いだろうな。」

「そういえばその結界ってどんな感じなんだ?」

 2人は目配せをして左にコマ、右にレオが立ち、柏手を打った。その瞬間に俺の周りに直方体の空気の歪みのようなものが発生した。吹いていた風も感じなくなり、飛んできた落ち葉はその歪みから中へは入って来れないようだった。

「これは…すごいな。」

「何も通さない結界で、その気になれば音も光も遮断できるぜ。だが一つだけ欠点があって、これを張ってる間はオレたち1歩も動けねぇのよ。」

 それは…使い所を選びそうだな。

「どれくらいの時間続けられるんだ?」

「もって半日くらいと思っていたが、今の感じではいくらでも張ってられそうだ。限界はあるだろうがな。人型を保つのも数刻が精一杯だったはずだが、特に疲れる感じはない。…おそらく(あるじ)との契約のお陰だろう。」

 コマは誇らしげに微笑んでいた。

注:遠隔や特殊な場合でなければ念話は会話形式で書いています。

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