18.沿海の決戦⑥
海岸に着くと陽は傾きかけていた。
コマとコトシロが駆け寄ってきたが、何の情報も得られなかったことや村の状況を伝えると、肩を落としていた。
皆に檄を飛ばす。
「ミュイとガトウを助けるため、絶対にあの影の名を明かすんだ。今のところ手がかりはないが、狛犬、獅子、事代主神とくるとおそらく日本に纏わる神の類だろう。浜のほうへ意識を引き付けてもらいながら、船で近づいて俺が思いつく真名を投げかけ続ける。当たるまでやり続ける。」
「では浜での陽動は私が行おう。」
「オレも手伝いたいが…どうする?」
コトシロとレオが手を挙げる。陽動としては二人のほうがいいだろう。
「二人に任せよう。コマは俺と来てくれ。」
「船は当方が導こう。戦闘能力はないが、少しなら守ることもできる。」
沿海の精も加勢してくれるようだ。心強い。
「よし、では決まりだ。いまから――—」
「主!!」
海岸に中止すると、夕闇のまだ薄い海岸線上に黒い影がうっすら漂っていた。
今日はすでに3つの影がゆらめいている。よくみると昨日より波打ち際が近づいている。空を見ると満月が昇ってくるところだ。つまり大潮か。それと影の動きが連動しているかは不明だが。
そう思ったときにはもうレオとコトシロが左右に散会し影に攻撃を加えていた。攻撃を嫌がっているように見えないこともないが、明確な効果はなさそうだ。
頃合いを見計らっていると、レオとコトシロは徐々にこちらから離れるように攻撃をし続け、影も少しずつそちらに動いていった。あまり細かい打ち合わせはできていなかったが、即席でうまいことやってくれている。
(今か…!)
十分に影が離れたのを確認し、そっと船に乗り込んだ。船全体に薄い結界を張り、沿海の精がそっとゆっくりと船を導いていく。
「山の精の気配があるところまで一直線に行く。警戒はおこたらぬよう。」
コマはじっと目を閉じて動かない。結界と索敵に意識を集中しているのだろう。
満月に照らされているとは言え、砂浜の炎から離れると水面は真っ黒で不気味に揺らめいている。俺はミュイ印の干し肉を噛み、助けるんだという強い意志を確認した。
コトシロとレオがとうとう見えなくなるころ、コマの目が開いた。
(主…近づいている。)
一気に鳥肌が全身を覆った。未知の場所で未知のものと戦う時の恐怖は計り知れない。船底の下には死の気配がたゆたっている。
不吉なことを考えていると突然船が止まった。
あるべくないものがそこにあった。
…海面がそこだけ黒く盛り上がっている。
どういう理屈も何も、明らかに怪異のせいだ。
俺たちはひっそりと戦闘態勢をとった。




