17.沿海の決戦⑤
沿海の精は昨日皆が釣りをしていた場所のほうへ消えた。しばらくすると緑色の、どう見ても小舟にしか見えないものを引っ張って戻ってきた。
「これは、昨日そなたらが遊んでいる間に当方と山の精でもしかすると必要になるかも、と作っておいたものだ。二精の力をかけており普通であればまず沈むことはない。…普通であれば、だがな。」
「これは蔓でできているのか…?浮いているのは加護によるものなのか?」
「それもあるが、その蔓は中が空洞でもともとよく浮くそうだ。ただ昨日のことを考えるとあまり過信はできない。結界を張っても、それごとひっくり返されては元も子もないだろう。」
「なるほど。あくまで本体にできるだけ近づけるためだけに使えるということか。ではやはりそれまでにある程度の目星はつけないといけないということか。なかなか厳しいな…。いったん頭を切り替えるためにも一度村へ行こう。レオ、俺を乗せていってくれ。コマとコトシロはここで沿海の精と火の番をたのむ。」
俺はレオの背に乗り村へ急いだ。ガトウとミュイのことについては報告しておかないといけないのと、少しでも情報が欲しいからだ。向かう途中、昨夜の戦闘を思い返していた。仲間が増えていたことに慢心していた。相手が攻撃してこないのをいいことに、順番にあらゆる手を試せばいつか手がかりがつかめ打破できるだろうと甘く考えていた。その甘さのせいもあり二人はとらわれてしまった。もう少し作戦を練っておけばよかった。
悶々とする俺を乗せたレオは何も言わず、ただ黙々と走っていた。
村へ着きダリクの顔をみると険しい顔となった。俺とレオだけで帰ってきたことになにか感づいたのだろう。隣には泣きそうな顔のラトゥもいる。
「…ガトウとミュイがやられた。山の精が守っていて死んではいないようだが、二日は持たないと言われている。」
「彼らは戦士だ。命を落とすことも考えて同行したはず。…だが、友人でもあり何とか助けてほしい。」
ダリクは深々と頭を下げた。海についてのことを独自に調べてくれていたらしいが、危ないから近づくな、以外のことを知る者は誰もいないとのことだ。我々は肩を落としてダリクの家を後にした。
「…ちょっと。実はな、ガトウたちを海に行かせたことに反発するやつもいるんだ。もし二人が犠牲になることがあったら辛いだけでなく、ダリクの立場にも関わってくる。ただダリクはそこまで腹をくくって、何かあれば責任を取るつもりでもいる。何とか、何とか二人を無事に返してやってくれ…!」
追いかけてきたラトゥが俺たちに懇願した。
「これは昔から伝わる狩りのお守りだ。我々の願いが詰まっている。信じて待っているから頑張ってくれ。」
渡されたものは藁で編まれた柄のついた鍋敷きのような形のものだ。中心に穴が開いている。
(これは…”ワラダ”だな、主様。兎狩りの時に投げて音を出し、驚いた兎を捕らえる原始的なやつだ。このあたりで兎は見かけないが、何か似た動物がいたのかもな。オレも昔教えてもらって使ったことあるぞ。…主様、頑張ろうな。)
お守りをもらい決意を新たにした。レオも励ましてくれている。が、やはり情報は圧倒的に不足していた。
仕方ない…アレで行くしかないな。
俺は密かに決意を固めた。




