16.沿海の決戦④
「ガトウ、ミュイ、山の精の気配が海の奥底へ消えていった。その痕跡はないかと探っていたところこの葉が流れ着いたのだ。まるで我らに届けるかのように。」
コマの報告を受けていた。この葉は明らかに山の精から届けられたものだろう。ということは山の精はその子らであるガトウ、ミュイを守っているということだ。
「沿海の精はどこへ?」
「…気配がこちらに向かっている。」
すると、海面が盛り上がり沿海の精が顔を出した。…大きさがさらに小さくなっている。もはや海から出ている大きさは俺よりも小さい。
「沿海の精!!何があったんだ!!」
「そなたらは…無事か。見ての通り昨日の衝突で当方の眷属もさらにやられてしまった。…昨夕、山の精とともに少し沖で待機していたのだが、そなたらが黒い影に攻撃を始めた途端、少し沖に不気味な、何とも言えない大きな影が現れたのだ。こいつも仲間か!と思い叩こうとしたのだがそのとたんに山の精が血相を変えて海の中へ入っていった。当方も後を追うと、そなたらと一緒におった巨躯の男が海中で暴れておった。それはすさまじい暴れ方だったが、とはいえ海の中、徐々に弱っていった。山の精はすさまじい結界を張り、暴れていた男を守った。そして気づけばもう一人海中に引きずり込まれていたものも山の精は保護した。…森の精はすさまじい力の持ち主とはいえ、本来あるべきでない海中であれば二日と持つまい。当方にあやつを助ける力はもうない。せいぜい逃げ回って、そなたらにこの情報を届けることが精一杯だった。…頼む!当方の古い友人を…助けてくれ!!」
沿海の精の話は衝撃的だった。そして山の精の力に尊敬と感謝の念を抱きながら、思いついたことがあった。
あの影は共犯者がいるわけではなく、疑似餌だったのではないか?
そう思ったのには理由がある。まず、影そのものにコマが気配を感じていないこと、影に攻撃した相手ではない仲間が消えていること、そしてあの呪いのような独特の感覚があの影には見られなかったことだ。
つまり、影に夢中で攻撃している影から別の本体が襲ってくる、まさに疑似餌なのだろう。
その影に攻撃した者が高熱を出したりするのは説明がつかないが、海の者に対しては毒となるようなものがあったのだろうか。
つまり、あの影をスルーして海の中へと向かわなければならない。
「コマ、レオの結界を張れば海の中でも問題ないか?」
「うんにゃ…主様には纏わせるタイプの結界を張れないからな。単身で海の中は難しそうだ。ひたすら結界ごと沈んで行ってしまう。」
やはり難しいか。
「…では、船があればそれごと結界を張ることは可能か?」
「船であれば主とともに守れよう。その場合は我等も船に乗ることとなるが。」
コマは肯定した。
「船に乗るのであれば、私の加護も働くだろう。」
なんと釣りの神の加護も得られるようだ!
船を作るしかないな!…どうやって作るかはわからないが。タイムリミットがある中でどうやって作業をしようか。
そのやり取りを聞いていた沿海の精が語り掛けてきた。
「そなたら船に乗ろうとしているのだろう?当方と山の精から授けるものがある。」




