15.沿海の決戦③
増えた…さらに?
なんでだ…?どういう理由で増える?トリガーはなんだ?
「コトシロ、どうやって増えたんだ?」
「それが、急に海の上にもう一つ現れた。海の中からでてきたようにも見えたが、瞬きの間だった。…私に瞬きは必要ないので比喩だが。」
コトシロゆえの真面目な言葉なのか、それとも一種の混乱なのかはわからないが一瞬で影が現れたのだろう。3つに増えた影はやはり動く気配はない。
「なぜ増えたのか、そしてなぜ奴らは動かないのだろう?」
原因も意図もわからないものは怖い。やはり怪物は正体不明でなければならない、というのはその通りだろう。
「主様…ちょっと思ったんだが、海へ仲間が取り込まれると影が増える…ってことはないか?」
レオは自信なさそうに言っている。直観が効いているわけではなさそうだ。
確かに仲間が取り込まれてから影が1つずつ増えている。
海…
複数…
影…
人を取り込み増える…
海辺から出てこない…
これはもしかしてあいつだろうか?
「コマ、レオ、影に近づいてみようと思う。もし万が一変なことがあればすぐに結界を張ってくれ。」
「タケル!看破したか!?」
コトシロが緊張した面持ちで、しかし少しうれしそうな顔をした。
「今の状況からは…あいつだと思う。」
3つに増えた影にまっすぐと向かっていく。傍にコトシロも控えてもらい、コマ、レオは少し離れたところで警戒してもらう。
身じろぎもしない影達に向かい、俺は声を張った。
「お前たちは…『七人ミサキ』だ!!」
影が揺らいだ!
そのまま広がっていくかと思ったがその揺らぎは治まり。
…影は4つに増えた。
「結界を!!」
俺はコトシロとともに結界を張ってもらうと速やかに撤退した。
「すまない…違うかったようだ。そしてまた増えてしまった。」
「違ったか…。」
レオは申し訳なさそうにしている。
4つに増えた影は、だが、いまだに揺らめいているだけだった。
俺達は何もできないまま、あたりが明るくなっているといつの間にか影も消えていた。
ずっと神経を張り警戒を続けていたためか、それとともに全員がへたり込んだ。
「あれは…何なんだ。攻撃は効かず、攻撃もしてこず、気づくと仲間はさらわれている。…一体何なんだ!!」
俺は無力感と悲しみで空に叫んだ。ミュイの顔が浮かんだ。人懐っこいあの笑顔は、もう失われてしまったのか。ガトウの巨体も、意識する間もなく消えていった。
「…主よ。これを。」
影のいた場所を探りに行っていたコマが手のひらサイズの葉を咥えて戻ってきた。海岸にあるまじき青々とした立派な葉だ。その葉の中央に、たった3文字がそこだけ別の色素になったかのように浮いていた。
『まもる』
…まだ希望は失われていないようだ。俺は顔を上げた。




