8.山の民⑦
歴史や地理に詳しい人を紹介してほしい、というと二人とも長老の名を推薦した。食事には来ていないとのことであり、ミュイに交代して長老のもとに連れて行ってもらった。途中でラトゥも合流した。
「おばば様、村の恩人が来たよ。聞きたいことがあるみたい。いま体調は大丈夫?」
ミュイが声をかける。その間にラトゥが長老の食事を準備していた。
「あれ…あんたがまたこの村をひとつにしてくれたのかえ…ありがとう、ありがとう…。おらの知っていることならなんでも答えるから…なんでも聞いとくれ…」
「長老様、初めまして。俺はタケルと言います。俺たちの事情にこの村を巻き込んだ形になってしまい申し訳ないと思っています。…この辺りはずっと平和だと聞きましたが、そうなんですか?」
「真面目な子だねえ…。ここはな、昔から「落星盆地」と呼ばれている地域でなあ、昔々に星が降ってきて落ち、その跡地だと言われておる。…だから中心に草は生えず、今も荒野になのじゃ。ご先祖様がいつからここに住み着いたかわからんが、おらの爺様の代以前には「洞窟山」「豊穣山」「草原山」という三山にそれぞれの集落があったらしい。大きな戦にはならなんだが小競り合いが多くてな、いっそのことまとめてしてしまえばいい、と爺様の代にいた何ともすさまじく強い戦士が長となって、今の村が始まったのじゃ…以降村長は血統ではなく最も強力な者が受け継いでいるが…それ以来争いという争いは起きておらん。」
「なるほど…。他の地から侵略を受けたことは?」
「…はるか昔には海からの侵略があったらしいが、この近海には人間嫌いのめっぽう強い主がいるらしくてな…船はすべて沈めてしまうらしい。それもあってこの村の掟には「海に近づくな」というものがある…おらも一回も海には近づいたことがねぇ。あと「豊穣山」の反対側はこちらから見ても険しいが、裏側はもっと険しく…人の来られるところでないらしい…洞窟山の洞窟は探検して戻ってこないものが出てから入らなくなっってな…向こうがどうなっているかはおらもわからん…」
「信仰とかはなにか?」
「おらたちは昔から精霊様に助けられている…山、水、土、火の精がありそれぞれの家族はその紋章を身に刻んでいる。おらは火、ミュイは森、そこのラトゥも火だな…それで区別してるわけではねぇ。ただ先祖がそうだった、てのとのたれ死んだときにわかりやすいようにな…」
「最後にすみません、俺たちのように突然現れたものはこれまでいませんでしたか?」
「うーん…聞いたことがないなあ…すまねえ。」
「いえ、貴重なお話ありがとうございました。」
ちょうどいいところでラトゥが長老の食事を運んできた。
「ザァン様、久しぶりの魚と、根菜ですよ。召し上がってください。」
俺達はお礼を言ってお暇することとした。しかしいろいろなことが知れた。俺の「洞窟山」、当たってたな。




