6.山の民⑤
住居の中に入ると、最初に解呪を行った七人のうち六にが覚醒し、凄い勢いで食事を取っている。なお一人はいち早く目覚め既に外出しているらしい。その中の特に大柄な二人が手を止め、こちらに向かってきた。お互いに向かい合って座ると、一人が口を開いた。
「村長のダリクと、こちらが前村長のガトウだ。貴殿らの働きについては先ほど妹たちから聞いた。この度は非常に助かった。おかげで倒れていた者達だけでなく、その世話をするもの、庇護されるべきものなど全員が救われたのだ。原因となるのも貴殿らだったとはいえ、悪意があって攻撃したわけではなく自然災害のようなものだ。我等が巻き込まれただけであり、どちらかというと貴殿らも被害者であろう。それを言い訳もせずきちんと告白し、さらには治療も行ってくれたのだ。感謝こそすれ非難などもっての他だ。…牢に入れた妹らの行動は陳謝するが、結果を見るまでは信じられなかったことも理解はしてほしい。」
ダリクは一気に話した。レオよりも一回り大きい、赤黒く逞しい体には様々な文様が刻まれている。その横ではラトゥが頭を垂れており、申し訳ありませんでした、とこちらに謝罪した。
「特に怒ったりはないです。おもてなしも受けましたし。それよりもなにがあったか教えてもらえませんか?」
ダリクは隣に座るガトウと呼ばれていた年配の男に頭を下げた。つまりミュイの父親か。ガトウの体はダリクと比べ筋肉量には劣るものの体つきは近く、何よりも多数の傷と纏う雰囲気がただ者でないことを示していた。ミュイはこの父を手にかけようとしてたのかと思うと凄い覚悟だ。
「儂が説明しよう。前村長のガトウだ。皆を救ってくれたこと、重ね重ね御礼を申し上げる。数日前に採集に行った若者が、人の声聞こえるといって走り出したまま帰ってこなかった。そしてその者を探に行ったという二人もなかなか戻らず、物見に上って探していると三人が留まっているのを発見したのだ。ダリクに伝えると門番の二人とともに救出しに行った、儂は村に留まろうとも考えたが、ダリクだけでも帰さなければ、という気持ちがあり後を追いかけたのだ。すると六人全員が立膝で動けずにおり、その近くににこの世の者とは思えない存在感の人型がいたのだ。こちらを向いてすらいないが、頭の中に直接何かが入ってくる感覚があり、危険と判断してダリクを背負おうとしたところダリクの口からそのものと同じ音が聞こえ、体の自由が利かなくなり…気づくと今朝だった。」
壮絶な話だ。生身であのコトシロの攻撃に数秒でも耐えられたというのが信じられない。今度はこちらの事情を開示する番だ。
「改めて説明させてください。このコトシロという仲間は、もともとは違う世界で言葉を司る神で、我々も同じ世界から来たようなのです。ただこの世界に顕現する際に悪いものが混ざってしまい、正常な精神を失って自身の能力が悪い方向へ垂れ流しとなってしまったのです。だからこの一帯で言葉が通じなくなったり、近くにいると脳が暴走してしまったりということが起こってしまいました。俺とこのコマ、レオでコトシロの呪いを解き、今はもう正常になっています。ちなみにレオも同じような状態になっていて、黒い獣の姿で暴れまわっていたようです。」
「主は狂ってしまった者たちを救う力と、困ったものを助けたいという意志を持っている。我々三人も救われた側であり、眷属となって供をしているのだ。」
コマが説明を補強してくれた。
ダリクとガトウはとりあえず納得したようで、会話を終えた我々も食事に招待された。




