12.遠征の後
「タケルよ、格上だからというわけではないが、私に敬語はいらない。心の中で敬意を持っていればもはや言葉上の位置づけは不要だ。あとは戦略上の話だ。敬語を使われている相手はわかりやすく上の立ち位置なのだから、敵もそこを狙い撃ちにするだろう。少なくとも私はそうする。タケルは…強くはないしな。」
強くないと言われるのは少し慣れてきたかもしれない。というか周りが強すぎて何も感じなくなってきた。
「わかった、敬語はやめよう。思ったんだが、味方の能力を上げるサポーター的な技能を俺が持っているとは考えられないか?確認のしようはないが。ちなみにコトシロは何ができるのか教えてもらえないか。」
「格上を眷属にできることは考えにくい。可能性としてはタケルが神階の外にいて格にかかわらず眷属にでき、かつ眷属に力を分け与えられるような能力があるということだろうか。今のうちはそれくらいしか考えられないな。さて、私は託宣と釣りの神だ。全ての言葉は理解することができるし、釣りに出れば必要な釣果は必ず得られるだろう。あとは、天の逆手を打てば異空間を作ることができるし、海から遠く離れていなければ海と空間をつなげることができる。」
「…主人公感が強いなあ。というか強力すぎませんかね?さっきの戦いで海や異空間とつなげられたら負けていたのでは?」
「主よ。我らの結界は両方に耐えることができるぞ。」
コマはそこだけは負けたくないようだ。
「いやでも声が届かくなると真名を伝えられないのでは?…ちなみに異空間というのは?」
「オレの阿砲が吸い込まれていったのがそれだな。」
レオはコトシロに会えてうれしそうにしている。
「今はもう少しできることが多い。これまでは自分の身を隠したりできるくらいだったが、小規模な異空間を『運営』することができるようになった。いくつかの倉庫を持っていると思ってもらえればいい。」
「めちゃ便利!めちゃめちゃ便利!!主人公感!!いいなあ。」
「その主人公感とはなんだ…?むしろ私はタケルの眷属となったからできることが増えたのだ。ちなみに私が誰かの眷属となることが初めての経験で楽しみである。そして『運営』と言ったろう。タケルに異空間を貸与することもできる。…ほら、どうだ?」
なんだって…天の逆手!!としてみたが何も起こらない。失敗?
「天の逆手はあくまで私の業だからな。まねでは難しい。異空間が広がるという想像がつきやすい動きを考えるのだ。」
異空間…?四次元…?ポケット……!!まさか!!
お腹の前の空間に両手を突っ込むと、手が消えた。その奥には果ての見えない空間が広がっている。かっこよくない!が!超便利なのは確かだ!
「ありがたく使わせてもらおう。…ところでコトシロ、言葉は文字も含むか?」
「もちろん。話し言葉を二次元に記載できるようにしたのが文字だ。言語なき文字はない。」
「ならこれを見てもらえないか。」
俺は手帳を渡した。パラパラとめくるコトシロ。最後の最後までチェックして―
「読めない箇所はないが…自分で確認してみればよい。」
そんなこと言われても…ん?
んん???
プロフィール欄が読めるぞ…?
「私の言語能力は広域付与だ。だから広域で言語の混乱が見られただろう。」
なるほど、さすが神。便利なことこの上ない。主人公かと思ったがこれはお助け師匠の立ち位置だな。
「だがタケルのもとでしか現れないページがあるようだ」
プロフィール欄からさらにその続きにページが現れた。
コトシロの祝福を受け、ようやく手帳を読み進めることとした。




