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 私は間違っていた。奢っていた。


 神聖な宗教画から抜け出してきたような美しい女性ひとを前に、私は途方に暮れる。


 私と同じ顔、同じ姿。

 けれど彼女は私であって私ではない。『壱己が夢見る私』だ。壱己が望む、私の姿だ。


 いたみ果てた壱己を癒すその人は、どこまでも清らかで崇高だった。限りなく優しく、慈しみに満ちて、だから壱己はその人の胸で安らぐことが出来る。

 心の底で壱己が求めているのは、そういう人なのだ。

 

 私は奢っていた。

 自分の全てを差し出せば壱己は満たされるだなんて、傲慢だった。私なんかじゃ、全然足りなかった。 

 弱くて無力で臆病で。こんなふうに他人の夢を覗き見てしまうような、薄気味悪い能力を持っていて。傷付くのも傷付けるのも嫌でそれをひた隠しにして、息を潜めて暮らしてる。姑息で卑小な私。

 そんな私が、自分の全てを差し出したところで何が変わるんだろう。誰が救われるんだろう。取るに足らないちっぽけな私、私が壱己の何を、満たしてあげられるというのだろう。


 私はこんなに綺麗じゃない。どう足掻いても、こんなひとにはなれない。壱己が望む私を、私は与えることが出来ない。


 「……ごめん」


 この世で一番大切なひと。誰より幸せになって欲しいと願った、たった一人の。


 「ごめんね、壱己」


 私は貴方を幸せにしてあげることが出来ない。


 夢の中で、私は涙をこぼす。




 その涙が爪先に落ちた瞬間、夢から醒めた。




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