27
私は間違っていた。奢っていた。
神聖な宗教画から抜け出してきたような美しい女性を前に、私は途方に暮れる。
私と同じ顔、同じ姿。
けれど彼女は私であって私ではない。『壱己が夢見る私』だ。壱己が望む、私の姿だ。
傷み果てた壱己を癒すその人は、どこまでも清らかで崇高だった。限りなく優しく、慈しみに満ちて、だから壱己はその人の胸で安らぐことが出来る。
心の底で壱己が求めているのは、そういう人なのだ。
私は奢っていた。
自分の全てを差し出せば壱己は満たされるだなんて、傲慢だった。私なんかじゃ、全然足りなかった。
弱くて無力で臆病で。こんなふうに他人の夢を覗き見てしまうような、薄気味悪い能力を持っていて。傷付くのも傷付けるのも嫌でそれをひた隠しにして、息を潜めて暮らしてる。姑息で卑小な私。
そんな私が、自分の全てを差し出したところで何が変わるんだろう。誰が救われるんだろう。取るに足らないちっぽけな私、私が壱己の何を、満たしてあげられるというのだろう。
私はこんなに綺麗じゃない。どう足掻いても、こんな女にはなれない。壱己が望む私を、私は与えることが出来ない。
「……ごめん」
この世で一番大切なひと。誰より幸せになって欲しいと願った、たった一人の。
「ごめんね、壱己」
私は貴方を幸せにしてあげることが出来ない。
夢の中で、私は涙を零す。
その涙が爪先に落ちた瞬間、夢から醒めた。




