震・ヤンでれ…深夜…
「んじゃ、おやすみ」
「「お休みなさい」」
現在将は就寝につくところだった。風呂から出た凛が、一緒に寝たいと言い出したときはどうしようかと思ったが、なんとか2時間かけ説得し、静香の部屋で寝るように説得した。部屋の前で二人と別れ、自室に入り、すぐに電気を消し、とりあえずベッドにダイブ。
「今日は色々ありすぎて疲れた…あいつら…少しでも仲良くなれば…」
そこまで考えたところで、将は睡魔に負けてしまった。
深夜2時、愛しのお兄様に、
(凛と一緒に寝てやってくれよ)
といわれてしまったので、百万歩ゆず……らずに、お兄様からもらった枕で手を打った。そんなこんなで現在静香の部屋では、二人の美少女が睨み合っていた。
「で? どちらの方がお兄様を愛してる、という話を始めてから3時間が経過しています」
「そうだね」
静香たちは11時にこの部屋に来てからずっと、どちらの方が将は愛してるか、ということについて議論していた。だが正直、お互い同じようなことを繰り貸し言っているだけで、終わりがまったく見えてこない。本当なら開始10分で戦闘が始まりそうだったが、隣の部屋で将が寝ているため、言い合いしかできない状況であった。
何か良い方法はないかしら? と少し静香が思考を働かせると、ある妙案が彼女の頭に閃いた。
「ゲームで決着をつけるって言うのはどう?」
「ゲーム?」
「そう、お兄様が最近ハマってる格闘ゲームで」
彼女が思いついた妙案とは、最近将が買ったという格闘ゲームの対戦だ。しかし、その妙案に凛は乗ってこなかった。
「そんなことで決めるようなことではないでしょう?」
やれやれと首を左右に振りながらあきれた素振りを見せる。ここまでは静香の予想通り、後は--
「--勝った方が、お兄様とキスできるー-」
とても小さく、聞こえるか聞こえないかの音量で言うと、凛の体がぴくっと反応をしめし、
「……そのゲームはどこ?」
先程とは打って変わった態度の凛に、思わず口元がにやけるのがわかった。
「お兄様の部屋よ……」
「さぁ、始めましょう」
なぜか勝手に兄の部屋に入った挙句、勝手に兄のゲームを付け、しかも兄の唇が賞品になっているなど、夢にも思わずに、将はただぐっすりと熟睡していた。
兄を起こさないために、音量はつけずにゲームを開始する。
「それ、次貸しなさいよ」
そう言ったのは凛、静香が今読んでいるのは説明書、お互いゲームなどまったくやったことのない初心者のため、とりあえず読んでおこうと考えた。
「ん……」
ぽいっと、読み終わった説明書を相手に投げつける。それを受け取った凛もまた、パラパラと流し読みをし、説明書を机に投げつけた。
「いい? 一本勝負よ。勝った方がお兄様の唇をいただく、いいですね?」
「わかりました。あとで取り消しなんてなしですよ?」
「それはこちらの台詞」
お互いに軽く挑発的口調で会話しつつ、キャラを決める。
こんなGなんかに、絶対負けてなんかやりませんわ…
今ここに、伝説の対戦が生まれる…
二人が選んだのは、そのゲームの、言わば主人公的キャラと、そのライバルキャラ、お互いのステータスはほぼ同じで、どちらも万能キャラであった。
始まった直後から、お互いの会話が一切おきなくなった。ただただ将の唇を手に入れるため、このゲームに全てを捧げていた。
開始から10分、画面内のキャラは激しく動いているが、お互いのキャラは1ダメージも受けてはいない。それもそのはず、受けるはずがないのだ。このゲームには、受け流し、簡単に言えばギリギリでガードすると、ダメージは発生しないというものがある。これは上級者なら無意識に敵の攻撃に反応し、全国レベルなら8.9割はこのガードで防いでいる。
確かにこの二人は、今まで一度もゲームなどをやったことはない。そのため、コンボなどはまったくと言っていいほどできない。しかし、受け流しは別だ、これならば複雑な操作はいらない。彼女達は、相手キャラの手が突き出される瞬間、全て狙って受け流していた。高速で切りつける必殺技だろうが、見切り不能な一瞬の斬撃だろうが、全て目で見て防いでいた。
絶対に負けない…
彼女達の長い夜は、まだ終わらない。
「ん……」
朝か…、静香が起こしに来ていないということは、珍しくかなりの早起きをしたのだろうか?
そんなことを考えつつ、眠い目をこすりながら体を起こした。
「ふぁ~~って、お前ら何人の部屋で勝手にゲームしてんだ?」
朝っぱらから、二人の美少女がカチカチゲームをやっているという、世にも珍しいもの見た将は、二人の元へと近づいていった。
「お~い、聞こえてる? っていうか何やってんだ? お前ら」
まったく返答がない。二人はただじっと画面を見つめたまま、コントローラーを動かしていた。その後も声をかけるが、石化の魔法でもくらったのか、まったく反応してくれない。
いつもなら、静かでいいか、と思う将だったが、朝っぱらから無視を受けるのは少しつらい。画面を見ると、お互いの体力はお互いにMAX、これなら消して平気か。そう考えた将は、ゲームの電源を引っこ抜いた。
「あれ?」
そこでようやく二人が、動きを出す。
「ようやく動いたか、どんだけハマったんだよ……」
「お兄様! おはようございます」
「将君、おはよう」
「おはよう」
まさかここまで二人がゲームにハマるとはな~、でもま、これで二人も仲良くなってわけか。
「結局、決着はつかなかったね。このK」
「まぁ、あのままやってたら私の勝ちに決まってましたが」
前言撤回、相変わらず仲悪い。
獣のように唸りあう二人を、どうどうと落ち着かせる。
「あのままやってれば、お兄様の唇は私ものでしたのに!」
「何を言ってるの? 寝言も大概にしなさい!」
「お前ら、寝言は寝て言え」
もはや止める気も失せた。まさか勝手に自分の唇がかけられているとは予想もしなかったことだ。まったくこいつらは、と二人を睨んでいると、そこで将に名案が浮かんだ。
「なぁ、その戦い、俺も入っていいか?」
「え?」
「お兄様も?」
突然の将の言葉に、二人が思わず顔を見合わせる。そんな二人を見てフッと将が笑みを零す。
「もし俺が勝ったら、お前らは仲良くすること、俺が負けたら、俺を一日好きにしていいぜ」
「「乗った!!」」
将の提案に全力で乗っかると、二人は顔を洗うため、一度下へと降りていった。
「あいつら、昨日始めたばかりで俺に勝てるとおもってるのか?」
ふ、格の違いってやつを見せつけてやるかな。
一人、勝ちを確信していた将は、肩ならしに少し練習しようと、ゲームの電源を付け直す。
「ん? 対戦履歴?」
ああ、さっきのか
この格闘ゲームは、常にネットで全国に流れており、操作しないかぎり対戦はネット公開されている。
「え?」
二人の対戦動画をちらっと見ようと思ったつもりだったが、その対戦動画の再生回数と、対戦時間を見て思わず顎が外れそうになる。
「対戦時間…7時間35分?」
恐る恐る再生を押し、数分だけ見ると、将はすぐにゲームを止めた……
「私が勝つに決まってるわ」
「もう一度顔洗いなおしてきたら?」
顔を洗い終わった後、尚も喧嘩しつづけながら、二人は将の部屋へ戻ってきた。
「お兄様、お待たせ--」
「? どうかしたの?」
先に中を覗き込んだ静香の顔が無表情に変わるのを見て、凛もまた中を覗くと、そこには将の姿が消えていた。
「まったく…」
「将君ったら…」
「「お仕置きだよ……」」
二人が嫌な意味でハモった瞬間でした。
お待たせしました~。今回は暴走させようと思いましたが、大人しめになってしまいました。
え~その大きな理由が… 実は最近、一時の気の迷いにより、神・ヤンでれという100%R-18作品を書いてしまい。こちらが大人しくなりました。
ノクターンノベルスで投稿しようと思いましたが、冷静に考えるとかなり恥ずかしいので、胸の内に封印しておきますww
これからもよろしくね~、感想、アドバイス、要望など待ってます!




