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ヤンでれ…  作者: XXXX
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震・ヤンでれ…無理…

「初めまして、新崎 凛です」


 そう言いながら凛は礼儀正しく頭を下げた。まるでさっきの出来事が嘘かのような見事な立ち振る舞

いだ。


「え~、ではとりあえず、質問がある奴は手をあげろ」


「は~い」


 少し凛から距離をとりながら教師が言った瞬間、男子達が一斉に手をあげた。


「では荒井」


「はい! なんでアイドルやめたんですか?」


 気づいていなかったが、凛は「TENSHI」という大人気アイドルだったらしい。なぜか先週突然引退宣言をしたらしく、会社は大打撃を食らって困っているという。


 そりゃあ困るわな。


 凛は特に興味なさそうに淡々と答える。


「将君に寄生虫が付いたからです」


 寄生虫とはおそらく、というかほぼ確定的に静香のことだろう、さっきそう言ってたし。


「い、一応聞きますが、その、好きな人は…」


「いませんよ」


 その一言にクラス全員が沈黙し、そして次の瞬間にわっと男子達が騒ぎ出した。


「そのかわり、愛してる人はいます…」


 男子達が倒れた……


「どうせ、ゴキブリでしょ…」


 となりから静香の恐ろしい一言が聞こえた、明らかに不機嫌な顔をしていらっしゃる。


「寄生虫はだまっててください」


 どうやら聞こえていたようだ。なんという地獄耳。


 睨み合うふたりの間に、すさまじい殺気が激突しているのが、目にうつりそうなほどよくわかる。


「じゃ、じゃあ質問はこれくらいにして…新崎の席は…」


「先生」


 先生の声を遮って凛が発言する。


「私、将君の隣が良いです」


 しかしすでに将の隣には、静香が座っており、一番後ろの席なため、となりは静香の席しかない。


「しかし、そこにはすでに宮代が…」


「私、この学校で知り合いは彼だけなんです、だめですか?」


「先生、そんな奴の言うこと聞く必要ありません、廊下にでも座らせとけばいいんですよ」


 そう言って静香と凛が黙って先生を威嚇しはじめた。


 かわいそうに、これはどちらを選んでも死しか訪れないな。


 将は心の中で合掌しながら、怯える先生を見守った。


「え、え~と」


 先生が出席簿を何度もみながら二人の顔を見ていると、ふいに将と目が合う。


 すると奴の目がきらり、と光った気がした。


 とてつもなく嫌な予感がする。


「よし! じゃあ将に決めてもらおう」


 やっぱり責任転化しやがったあの野郎! しかもどや顔で!


 そして二人の視線が今度はこちらを向く、視線だけで死にたい気分になってくる。


「…先生」


「…なんだ?」


「机…もって来て良いですか?」


「…許可」





 結局もう一つ席をもってきて隣に座らせることで納得してもらった。


 現在はホームルームが終わり、転校生の席に人が群がっているところだ。


「すげー人気だな、凛の奴」


「そうですね…」


 明らかに不愉快そうな顔をしながら集団を見据える静香。


「もう少し仲良くできないのか?」


「仲良く…ですか? すいません、いくらお兄様の頼みでもそれはちょっと…」


「そんなに嫌いなのか?」


「嫌いというか…お兄様に手を出さなければいいのですが…その…なんていうんでしょう、本能がこ

う…ポキッと」


「ポキッてなに!?」


 そういいながらジェスチャーで何かを折る動作を繰り返す静香。


 あらためて義妹の危険度を知った瞬間であった…




 そして放課後、なんだかんだいって今日は凛の取り巻きが常にいたおかげで、今朝のようなバトルは

起こらずにすんだ。


「帰りましょう、お兄様」


 静香が自分の鞄を両手持ちながら立ち上がった。


「そうだな」


 今日は色々と疲れたから早く寝たい…


「将君」


「ん?」


 そこで騒ぎの元凶である凛が、取り巻きをどかして出てきた。


「私も一緒に帰っていい?」


「ああ、「だめに決まってるでしょ…」」


 全て言い終わる前に割り込まれてしまった。犯人はもちろん静香だ。


「寄生虫に聞いてないわ」


「なんですって?」


 ああ、二人の間に再び嵐が吹き荒れようとしている。


「はぁ、二人とも、喧嘩すんなら席はなれてもらうぞ」


「でも…」


[ですが…]


 それでも納得いかない顔で、睨みあっている


「はぁ~、じゃあ一人で…」


「私たち仲良しになった」


「はい」


 帰る、といおうとしたところで二人が肩を組み始めた。


 すんごい嫌そうな顔してんな……まぁ喧嘩するよかマシだが……


 そんなこんなで、結局三人で帰ることになった。


 わけなんだけど……


「くっつくな」


「嫌」


「やです」


 昇降口を出たところから、二人が両腕に引っ付いて来て離れてくれない。


 そしてあつまる視線、嫉妬、殺気。速攻で胃に穴が開きそうな環境だ。


「生きた心地がしねぇ…」


「排除しますか? お兄様」

  

 またまたジェスチャーで何かを折るような動作を繰り返す静香をみて、将は溜め息をつく。


「やめてくれ…」


 





 帰り道、こんな調子で商店街を歩いていたら、


「よう兄ちゃん、可愛い子二人も連れてなにやってんだ?」


 見るからにやばそうなヤンキー二人に絡まれてしまった。なんていうか、漫画にでるモブキャラっぽい。


「おお、可愛い! どうだ譲ちゃん、こんな男ほっといて俺らと遊ぼうぜ」


 二人の戦闘力なら問題ないだろうけど、ここは止めに入っておくか。

 

 仕方ないと思いつつ、静香たちを後ろに隠すようにして、将は二人の前に立ちふさがる。


「お前ら、その辺で“バキっ”っ痛」


「男は黙ってな」


 そういって片方の不良に殴り倒されてしまった。

 

 口の中が切れたのか、血の味が口に広がっていく、最悪だ。


 というかいきなり殴るやつがいるか!? 野蛮人かよ!


 そんな将を見ながら大笑いする二人組の声が響き渡る。


「だっせ~!」


 ガッ!


「へっ?」


 痛みに耐えてなんとかうっすらと目をあけると、そこには間抜けな声を出した二人の顔を鷲づかみにした静香達が…


 ゴンッ!!


「ギャあああああ!!」


 物凄い勢いで地面に叩きつけていた。


 叩きつけた後頭部をもう一度持ち上げると、地面と頭の間に血の糸ができる。


「「死ね」」


「やめろ!」


 もう一度叩きつけようとした二人を両脇に抱えながらその場から逃げ出した。



「なんで止めたの? 将君」


「そうですよお兄様、あれは正当防殺だよ?」


 文字おかしいよ文字。


「はじめて聞いたよ。そんなの…」


 人を殺めそうだったというのに、全然反省してない二人を見て、将来が少し心配になるが、今回は自分が情けないため、叱ることはできない。


 筋トレでもはじめようかな……


「そういえば凛、お前家どこなんだ?」


 思い出したように凛にきく、転校してきたということはここらへんに家があるんだろう。


「ああ、それはついてからのお楽しみ」


「別に楽しみにしてないです」


「はは……はぁ」


 こいつらが仲良くする日なんてくるんだろうか?


 相変わらず睨み合ってる二人を見ながら溜息を零す将であった。


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