震・ヤンでれ…ホラー…
待ってくれていた方、大変お待たせしました、今回から正式に復帰したいと思います。 駄文ですが、読んでもらえれば幸いです。
尚、あとがきに重大発表がありますので、ぜひ読んでおいてください。
結局話あった結果、今日は将の罰ゲームということで、静香達が選ぶということになった。
大丈夫、今までの会話の中で一度たりともホラー映画の話は話題にあがってないんだ。選ばれるはずがない。うん
さりげなくホラーがデートの映画に向いてないこともアピールしたし、静香のことだからきっと恋愛物を選んでくるはずだ。正直好きではないがホラーなんかよりは断然良いさ。
と、自分に勇気を与えていると、チケットをもった静香と凛がカウンターから戻って来た。
「チケット買ってきました、お兄様」
「おつかれさん」
「いいえ、はい、これチケットだよ」
はい、と凛が将の分のチケットを手渡す。
「ああ、ありが……」
手渡されたチケットを受け取って、思わず言葉が途切れる。
渡されたチケットはホラー、ってあれ?
「? どうかしましたか? お兄様?」
「な、なんで」
予想外の展開につい素で聞き返してしまう将。
いや、だって本当、さっきの話し合いからなんでこういう結果につながるのかまったく見えてこないし、
「なんでって、将君がなんでもいいっていったからだよ」
「そ、それは」
こんな結果になるとはかんがえてなかったからだよ。なんていえないし……
だがこのままでは怖いものが苦手という知られたくない事実がばれてしまう。しかもよりによってこいつらに……
それだけはなんとか阻止したい。
「あ、あのさぁ、俺やっぱり恋愛映画みたいんだけどダメかな?」
急いで進路修正をする将だが、2人はそんな将に疑問符を浮かべる。
「今更何をいってるんですか? お兄様」
「そうだよ将君、それにチケット交換なんて店員さんにも迷惑だよ」
まさか周りに迷惑しかかけていないこいつらから、迷惑なんて言葉が出てくるとは思わなかった! 普段は言うことを聞いてくれるのに、どうしてこういうときだけ……
「それはそうかもしれないけど」
「あれ、まさかお兄様、怖いの苦手なんですか?」
「い、いや? そんなことないけど?」
「じゃあいいじゃない将くん、結構怖いみたいだよ? これ」
「実に楽しみです」
凛の言葉に将は唾を飲み込む。
見れば2人とも結構ノリノリの様子。この二人いつからホラー好きになりやがった、普段そんなこと全然話題に出ないのに・
「どうしたんですかお兄様、あんまり楽しみじゃないみたいですが……」
「確かに、顔色もよくないみたいですよ?」
ああ、お前らのせいで大分な。という言葉を押し込み、笑顔を浮かべる。
「へ、平気だ。それよりなんでそれにしたんだ?」
なぜこれを選んだのか気になって聞いてみる。すると2人は声を合わせていった。
「お兄様がホラー苦手だから」
「将君がホラー苦手だから」
……
…
…?
「お前らたちわりぃ!」
「何いってるの? 将君が私達に任せたんだよ?」
何食わぬ顔で凛が言う。
ぐ! それを言われると反論のしようがない、というかそもそもこいつらに任せたのが間違いだった!
将が自分の失態に頭を抱えていると、静香が笑顔でこちらの肩に手を乗せた。
「大丈夫ですよお兄様」
「何が」
「もし怖くなっても私に抱きついて構わないですから」
「全然大丈夫じゃない!」
「あ、それは私にお願いね」
「聞いてない!?」
二人は完全に将を無視すると、どちらが将に抱きついてもらうかという意味不明の議論を討論し始めた。
どうする? 状況は最悪だ……こうなったら……逃げるしかない!!
幸い二人は現在熱い口論をかわしている、今なら隙をついてここから逃げることができるかもしれ――
「あ、ちなみに逃げたら1週間抱き枕の刑だからね」
「もしくわ3年間毎日デート権」
――ないと思う時期が私にもありました。
「ようし! 早く見に逝こうぜ!」
将は元気よくそういうと、会場へと走るのだった。
命は大事だよね。
………
……
映画を見終った将達一向は、現在同じデパート内にあった店で昼飯を摂取しているところだった。
正直映画は最悪だった。怖いから寝てしまおうと思ったら、わざとらしく両手を静香達に掴まれるし、怖いシーンの時は両腕に二人が飛びついてきて、恐怖と視線のダブルパンチで、正直生きた心地がしなかった。
そんなげっそりした将に対して彼女達は、
「映画楽しかったですね。お兄様!」
「映画なんて久しぶりですごい面白かったよ、将君!」
まるでエステにでも行ってきたかのように肌がつやつやしていた。
「……ああ、そうかよ……」
「? お兄様、元気ありませんがどうかしましたか?」
「具合悪いの? 将君」
それが人の苦手なホラー映画を無理やりみせた奴らの言い草か? ああ?
といってやりたいが、静香達のことだから素で言ってるのかもしれないし。言ったら言ったでどうせ面倒ごとになることは目に見えているので、ここは我慢しておく。
「べ、別に具合なんて悪くないぞ」
「本当ですか? ですがお兄様、お飲み物以外なにも頼んでいないみたいですが……」
静香の言う通り、将の前にはドリンクバーのコーラしか置かれていない、ちなみに静香はナポリタン、凛はエビドリアをそれぞれ注文していた。
「もしかして将君、そんなにあの映画怖かった?」
凛がそう言うと、二人は見るからに暗い表情を作った。
それに対し、将はぶんぶんと首を横に振る。
「ああ、いや、確かに怖くなかったわけじゃないけど、それが理由じゃないから」
確かに映画は怖かったけど、さすがにそれが理由で飯が喉を通らない、なんて情けない男とは、決して思われたくない。喉に飯が通らない理由、それは――
視線1「なんだよあいつ、あんな可愛い子二人もはびこらせて」
視線2「俺の彼女より可愛いじゃねぇかちくしょう、死ね!」
視線3「殺したい、殺してぇ、殺す!」
みたいな視線がそこら中の席から将に向かって突き刺さっているからだ。
さすがにこんな状態で飯を食っていられる状態ではない。
「じゃあ何か他に理由があるんですか? お兄様」
心配そうな顔をする義妹に、「視線が痛くて」と言いそうになったが、一瞬のうちに封じる。この出来過ぎた義妹のことだ。口にした瞬間、
『任せてください! 全部排除しますから! 10秒で!』
といって店員もろとも客を外に投げ出すのが目に浮かぶぜ。いや、浮かぶのもどうかと思うんだけどさ。
とりあえずなんか適当に言いわけを言っておかないと、
「ああ、いや」
「あ、わかった!」
ん? 言いわけを考えていた矢先、凛が突然そう言って何かひらめいたような顔を見せた。
そして――
「はい、あ~ん」
……え?
「はい?」
「あれ? 違った?」
凛はエビドリアを乗せたスプーンをこちらに差し出しながら頭を傾げた。
いや、どう考えても違うという言葉しかでないんだけど。と言おうと思ったら、静香が横から割り込んできた。
「ちょっと! 何やってるんですか! Gの分際で!」
「何って、将君は私に食べさせてほしいから料理を注文しなかったんだよ?」
「違います!!」
そうだ! 違うぞ!! 今回は心の底から静香を応援する!
「お兄様は私に食べさせてほしいんです!」
そう言って横から静香もナポリタンが巻き付いたフォークを差し出してきた。
増えた!?
「ちょっと! 私が先にしてたのに、横から割りこないでよ! 泥棒K!」
「おい二人共、人の話を聞いて、」
「後先なんて関係ありません!問題はお兄様がどちらを選ぶか、です」
「いいわ、それなら将君に決めてもらいましょう」
「もちろんです」
二人はキッとお互い一度睨みあうと、同時にスプーンとフォークを差し出してくる。
「「はい!お兄様(将君)! あ~ん!」
「くれませんよねぇ」
はぁ、と諦めにちかい溜息を漏らす。
男なら誰でも喜ぶ展開に、将は早く終わりがくることを祈るばかりだった。