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ヤンでれ…  作者: XXXX
21/32

震・ヤンでれ…ヤクザ…

 誰か、助けてください。


 突然何を言ってるんだと思われるのも重々承知で、章は叫びたい衝動にかられていた。


 汗を流しながら正面を見る将と、その将の背中でおもしろいものを見るように同じく正面を見る彼女、頭の上にウサギの人形を乗せられ、緊張感がまったく伝わってこない。


 そんな二人の視線の先にあるのは、真っ黒な車。まるで将たちを通さないように横向きに止まっている。


 さらに後ろにも同じ黒い車が来て、取り囲むように止まる。

この車何がすごいって、横になげぇ! 将は車に詳しいわけではないので車種まではわからないが、威圧感はハンパない。


 そしてそんな車から出てきたのは、


「おい、その子を返してもらおうか? ああ?」


 リアルヤクザきたーーー!!


 頭が人間じゃない赤色していて、顔にはやけどのような後、さらに3っつものピアスを左耳につけている。そんなにつけて痛くないのかな、とか思ったが、どう考えてもそんなことを聞いていい状況ではなかったのでやめておく。


 そんなことよりも、このヤクザが言うその子というのは、まちがいなく背中に乗っている少女のことを言っているのだろう。


「きいてんのか? てめぇ」


「は、はい」


「ならさっさと渡せ」


 はい! どうぞ持っていっちゃってください!


 って言ってすぐにでも渡したいけど、さすがにそんなことはできない。


 だってどう考えても渡したらこの子の人生終わっちゃいそうだし。


 背中に乗せているため、表情は確認できないが、きっと怯えてるに違いない。


「おい、聞いてんのか? 早くしねぇと散らすぞ?」


 何をーーーーーーー!?


 どうしよう、どうすればいい? このままだと間違いなく二人とも散らされてしまう、何かはわからないけど何かを散らされまう!


 冷静にどうすればいいのか考えようとするが、テンパりすぎてうまく頭が回らない。


 せめてこの子だけは、とかっこいいことを考えるも、そう都合よくそんな案は閃いてこない。


 ここまでは、汗を頬から流し、将がそう思ったそのときーー


「もう、豆男さん、そんな怖い顔しちゃだめですよ、めっ!」


「あ、へい! すいやせんお嬢!」


 背中から、可愛い声が聞こえた。


 しかも、さっきまで殺す勢いのガンを飛ばしてきていたヤクザが、将に向かって深々と頭を下げてきた。


 いや違う、正確には、将の背中に乗っている彼女に頭を下げている。どういうことだ?



 とりあえず話が見えない将は、背中に乗っている彼女に問うてみる。


「な、なぁ、このお方は、お前の知り合いなのか?」


「ああん!! てめぇ! お嬢にお前呼ばわりとは、殺されてぇのか!!」


「いえ!! 滅相もございません!!」


 すごい形相で迫ってくるヤクザの顔に、反射的に敬礼のポーズを取る将。


 だが、そんなヤクザさんの頭に小さなゲンコツが落ちた。


「もう! 豆男さん! ダメだっていったでしょ!」


「は! 申し訳ございません! お嬢!」


 さささっと後ろに下がって再び後ろに下がるヤクザさん、未だに話はよく掴めていないが、二人のやり取りを見る限り、ヤクザさんの名前は豆男というまったく似合わない名前をしており、背中の彼女に頭が上がらないらしい。


 すると突然、頭をポンポンと叩かれ、「もう降ろしてくれていいよ」と言われた、将は黙って腰を曲げると、背中に乗っていた軽い重量感がなくなったことに、少しほっとする。


 一方背中から降りた彼女は、まっすぐ豆男さんの元へと駆け寄って行く。


「ただいま~、豆男」

 あんな怖い人を呼び捨てにするとは、コイツ実はかなり肝座ってるのか?

 そんな彼女を豆男さん? が温かく迎い入れる。

「お帰りなさいやせ! お嬢!」


 豆男さん? は美しい姿勢頭を下げると、そのまま将の方へと視線を飛ばした。


「ところでお嬢? この殿方とは一体どういうご関係で?」 


 口調自体はとても優しいのだが、目には確実に殺意が籠っている。


 もしも保健室での一件がバレたら、このまま東京湾に沈されるくらいにやばい目をしている。


 けど大丈夫! さっきのおんぶで、その件については他言無用なは――


「保健室で秘密を共有する仲だよ!」


 即刻バラされた―――!!!! 


「ほ、保健室!? お、お嬢! そこで一体何が!?」


 豆男さんは驚愕の顔で彼女へと詰め寄る。


 対する彼女はこちらに振り向き、目でなんらかの合図を送って来た。


 なにを伝えたいのかはさっぱりわからないが、とりあえず命だけは助けてもらえるように視線で返す。


 すると、彼女は豆男さんの方に向き直って、恥ずかしそうにぬいぐるみで顔を隠しながら、ぼそりと言った。


「……あの、二人だけの……秘密だから……」


 終わったーーーーー!! っていうか何! そのいかにも何かありました宣言!


 こうなったら本当のことを話してでも生き延びるしかない! そう思った将だったが、どうやら時既に遅しだったようだ。


 死刑宣告を進言した彼女の言葉を聞いて、豆男さんは真っ先に手を叩いた。


 パン! っという音が鳴り響いたと思ったら、次の瞬間、車から降りてきたムキムキマッチョのお兄さん達に囲まれてしまっていた。


 そして豆男さんがリーダーのように一歩近づいてくる。


「何か、言うことはあるか? 小僧」


「ちょ、ちょっと待ってください! 誤解です! 俺達何にもしてません!」


「ほぉ、じゃあ保健室でふたりっきりの秘密って何なんだ? ああ?」


「そ、それは、ええと、なんて言えばいいのか良く分からないんですけど、とにかく! あなた方が考えてるようなことはしていません!!」


「信じられるか! お嬢見てぇな美少女と二人っきりで、ムラッとこない奴なんているか!」


 そ、その発言はどうなんだ?  と思うが、怒り心頭の豆男さんには、おそらく何を言っても信じてもらえなさそうだ。


 な、なんとか良い誤魔化しを思いつかないと、そうだ!


 周りのヤクザの方達と目を合わせないように、将は今思いついた名案を答える。


 これで、どうだ!!


「俺、ロリコンじゃないですから!!」


「てめぇ!! お嬢に魅力がないって言いてぇのか!!」


「いいえ! 魅力いっぱいです!!」


 だめでした……


「ほぉ……やっぱり……覚悟はできてるんだろうな。小僧」


 というかますます怒らせてしまったようで、豆男さん&ヤクザの人達が、指をポキポキならしながら、すごい顔で迫ってくる。


 何か逃れるすべはないかと模索するが、何も思い付かない将。


 ――このままでは……そうだ彼女は!?


 最後の希望を胸に、将は豆男さんの横から彼女の様子を窺う。


「えへへ……」


 結果・ぬいぐるみに顔を埋めて照れていた。


 その瞬間将は悟った、自分の終わりを――


 いつの間にか豆男さんの手が、除々に首元に近づいてきて、掴まれたと思った次の瞬間。

 

 ドオオオオオォォォォン!! という爆発音が、将の後ろから鳴りひびいた。

 




 保健室をさんざん荒らした静香達は現在、将が他の女と学校を出た事を知り、将を追いかけ、再び外を走りまわっていた。


「それでG、あなた本当にお兄様の居場所はわかるんでしょうね」


 さすがの静香でも、外でお兄様の匂を辿って探すには、少しばかり時間を食ってしまう。そこで今回は、Gがお兄様を探す役目となった。なんでもなにか策があるらしい。


「ふん、私はKみたいな野生的なやり方ではなく、確実なデジタル的なやり方だから、心配無用」


 そういってGは鞄の外ポケットから音楽プレイヤーを取りだした。


「何をしているの?」


「黙って見てなさい」


 イラッときたが、今は仕方ない、お兄様を見つけるためだ我慢する。


 拳を強く握り閉めて怒りを抑え、改めてGの取り出した音楽プレイヤーに目をやると、彼女はピピッと機械を操作した途端、突然音楽プレイヤーにアンテナのようなものがつきだした。


「まさか、発信機?」


「人間の発明品は有効活用しないとね」


 Gは見せびらかすように機械見せつけてくる。


――こいつ、いつの間にお兄様に発信機を、でもお兄様の身の回りのは毎日チェックしているし、一体どこに――


 と考えだした瞬間、すぐに答えは導かれた。


 毎日欠かさずお兄様の物をチェックしている私の目をすり抜けて、お兄様に発信機を取り付ける方法など、考えてみれば一つしか存在しない。


 それはずばり、食事だ。


 おそらく食べ物の中に小型発信機でも詰めておいたのだろう。この方法なら、静香に見つからず、将に発信機を取り付けることが可能。


 Gのことだ、お兄様に危害がない発信機を飲ませたんだろうが、油断も隙もあったものではない。


「どのくらい離れている?」


「そこまででもないよ、今の速度なら、あと2分くらいで到着する」


 だが今回はその発信機のおかげでこうして追うことができるのだ。今回ばかりは大目に見て上げよう。


 そうこう考えてるうちに静香の嗅覚も機能し、お兄様の匂いを察知した。だがそこで、静香は一つ違和感を感じた。


 お兄様と雌一匹以外に、複数の下種男の匂いを感じとったのだ、


 そこで、少し前を先行していたGが発信機をポケットにしまって、言葉だけこちらに投げかけてきた


「そこの角を曲がった道の先にいるわ」


「そのようね」


 静香は匂いを気にしながら、Gに続いて曲がり角を曲がった。


 そこで二人が目にしたものは……


「あれは……!」


「将君!?」


 複数の黒服の男どもに囲まれている将の姿だった。


 黒のベンツが横向きに置かれているため確認にしづらいが、間違いない、お兄様だ。あの黒服の傍に


いる雌が気になるが、今はお兄様を助けるのが先決。


「G!」


「わかってる!」


 おそらくGも同じことを考えていたのだろう、左右に分かれて速度を上昇した私達は、互いに視線を一瞬合わせる。


 それを合図に少し右前を走っていたGがベンツの前に飛び乗って、エンジン部分にパンチを叩きこみ、すぐに離脱。


 ドオオオオォォォン! と少し派手な爆発を起こして燃え始めるベンツ、それに気付いた全員がこちらへと視線を向けた。


「な、なんだお前達!」


 今の最優先事項は、お兄様の救出、こいつらの排除は後回しだ。


 静香と凛は、掴み掛かってきたヤクザの顔を踏み台にして将のところまで飛ぶと、二人で将の両腕を掴んで一気に後退し、距離を取る。


「大丈夫ですか!? お兄様!!」


「将君平気!?」


「あ、ああ、うん、大丈夫」


 どうやら手を出される前に救出できたみたいだ、良かった。


 ぺたぺたと将の体を触り怪我がないことを確認して、二人はほっと胸を撫で下ろし、ゆっくりとヤクザたちへと視線を向ける。

 残りの数は11人、こちらを半円の形で取り囲んでいる。それに対してこちらは二人、普通に考えて状況は最悪の展開なのだが、


「G、あなたは左」


「それじゃあKは右」


 二人の目には、殺意と怒りの色がしっかりと現れていた。

 


 ずいぶん久しぶりの投稿です、これからもよろしくおねがいします

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