震・ヤンでれ…脅迫…
「ねぇ~、まだ着かないの~?」
「もう少しだから我慢しろ、ってかいうかまだ5分くらいしか歩いてないぞ」
どんだけ体力ないんだこの女
トカゲやらカマキリなどに気を取られて、時間が経っているように見えるが、実際に進んだ時間はまだ5分程度。
にも関わらず、当の本人は、やけに大きなウサギのぬいぐるみを抱いて、道の隅に座り込んでいた。
「疲れた~、もう歩けない~」
俺だって帰りたいんだよ!!
思わず殴りたい衝動に駆られたが、なんとか抑え忍んで笑顔を向け、熱い拳をポケットに納める。危ない危ない
「ほら、我が儘言ってないでさっさと立て」
「む~、私にこんな重労働させるとは……あ、いいこと思いつきました!」
絶対にいいことじゃない。
言うやいなや、バッとその場から跳ね上がり、一人満足気に頷く彼女を見て、将はこの上なく不安な表情を作った。
今までの流れから、彼女の提案がまったく嫌な予感しかしないのは言うまでもないだろう。
そんな嫌な予感の塊である彼女は、いそいそとこちらに駆け寄ると、両手を広げて笑顔で一言、はい
「と、いうわけで、おんぶしてください」
「いやいや自然に言っても嫌だから、しないから」
「え~」といいながら一瞬うなだれた彼女だったが、何かに気付いたようにハッと顔をあげると、みるみるうちに顔を赤くした。
そして身を守るように腕で自分の体を抱きながら、彼女は恥ずかしそうに言った。
「……さすがに抱っこは嫌ですよ?」
「いや、お前どんだけ自分の都合のいいように事運んでるんだよ! 俺だって嫌だわ」
「なんだ、じゃあやっぱりおんぶじゃないですか」
「いやいや違うでしょ!」
「あ、まさか抱えるのですか!? 脇に抱えるのですか!?」
「抱えねぇよ! 抱っこしねぇよ! おんぶしねぇよ!」
む~、と頬を膨らませながら尚諦めずに、おんぶをねだる少女と、それを断固拒否する男子高校生。
まるで仲の良い兄妹に見えるかも知れないが、決してそんなことはない。ただの醜い争いである。
だがいつまでも続くと思われたそんな醜い戦いも、彼女の何気ない”一言”によって、あっけなく終止符が打たれることとなった。
「あんまり嫌々言うと、さっきの保健室のこと学校中に流しますよ!」
………………
…………
……
「これでいいのか?」
「おお~、楽ちん~♪」
結局脅しに敗れ去った将は、羞恥と怒りを抑えながらも、おんぶを実行に移した。
けど仕方ない、もし断って本当にばらされたら、学校中の生徒から、「よ、変態」というさわやかな挨拶をされるかもしれないのだ。 そうしたらもう学校には二度といけなくなってしまう。
「これであの件は終わりだからな!」
「わかってますよ~、あ、川にコイが居ますよ!」
ほら! と言いながら橋の下に流れるコイを指さしながら、頭の上でキャッキャ騒ぐ少女。
ああ、このままコイツ落として帰っていいかな?
そんなことをちょっぴり考えながら、彼女の帰宅路を歩む、将なのだった。
一方その頃学校では、ちょうど静香達が到着したところだった。
「これは……」
保健室に入って目にしたのは、もぬけの殻となった保健室だった。ベッドに寝ていたお兄様の姿も消えている。
部屋の様子を見た凛が、すぐに隣の静香に口に開いた。
「……どう思う?」
「そうですね、まず第三者の仕業で間違いないでしょう、まずあの状態からお兄様が自力で抜け出すことは不可能です」
「そうね、ベルトが綺麗に回収されてるところを見ると、無理やり連れて行かれたっていう感じでもなさそうね」
「机の椅子の位置や、薬品の位置が変わっていないところをみると、先生がやったわけでもなさそうです」
「そして今はまだ2、3年は授業中、となれば、考えられるのは1年が保健室に来て、将君を解放したってところかしら」
冷静に分析しながら、考えられる可能性を上げていく。
静香は、兄が寝ていたベッドのぬくもりを確かめるように、布団や枕に手をつける。
「……まだ少し暖かいですが、どうやら既に22分程経過しているようです」
「そう、っていうことはもう家に帰ったのかしら」
「それはないと思います」
「なんでよ」
手がかりを探すために薬品などを見ていた凛が、そこで静香に向き直す。
「さっき帰ってる途中、お兄様の匂いを感じました、気のせいかと思いましたが、気のせいじゃなかったようです」
「さっき? でもあっちは将君と帰り道が違うよね?」
「はい、理由はわかりませんが……それともう一つ」
やっぱりこれは……
その“何か”に気がついた静香は、急激に襲い掛かって来る、怒りの感情を感じ取った。
“……せ……!”
頭の中で、自分自身が何かを訴えてくる感覚が襲いかかる。
「っツ!」
怒りに感情を支配されぬよう、八つ当たりのように一発枕を殴り付ける、拳は枕を突き破り、ベッドの板まで貫通していた、少し拳に痺れが走るが、おかげで何とか心を落ち着かせることに成功したようだ。
凛はそんな静香に疑問を抱いたが、すぐに興味をなくし。机に置いてあった薬などを手に取って見初めていた。
今だ頭に残る怒りの感情を抑え込みながら、なるべくいつもどおりの口調で、冷静に、かつ淡々に、静香は先程の続きをゆっくりと告げた。
「……この部屋に、私達以外の、雌の匂いが充満しています」
次の瞬間、保健室に鳴り響いた音は、人の声ではなく、凛が手で握り潰した、ビンの砕け散る音だった。
久々の更新です。
ここでユーザーの人にお願いです。
実は今短編を執筆しているのですが、このサイトに投稿するわけにはいかないものなのです、ですが誰かに読んでほしいので、誰か読んで感想をくれる人を探しています。(まだ製作中ですが)
もしも読んでくださる人がおりましたら、メッセージか、感想に書き込んでください、お願いします(ちなみに内容は恋愛)。
もちろんこの小説の感想、アドバイスもあればよろしくお願い致します!