震・ヤンでれ…DEAD…
女の子は小さな悲鳴を上げ、ペタンッと地面に尻もちをついた。
「あ、ごめっ」
「へ、変態さんがしゃべりました~!」
「変態じゃねぇぇ!!!」
「ひうっ!」
将の怒声に、びくりと体を震わせると、ウサギのぬいぐるみに隠れるように小さく丸くなった。
「ああ、ごめん! でも本当に変態じゃないんだ!」
「変態さんじゃ……ないですか?」
女の子がおそるおそるぬいぐるみから顔をのぞかせてくる。
よかった、なんとか誤解は解けそうだ。
「うん、違うよ」
「じゃあ、ド変態さんですか?」
「そうそう、って違うよ! 普通だよ、ノーマルだよ!」
「ふ、普通の人はそんなことしません」
ぐっ! 確かにその通りだ。もし立場が逆だったら間違いなく自分も同じことを言うに違いない。
「これにはその……海よりも深い事情があるんだよ」
「海よりも深い……? 事情に深さなんてあるの?」
「え? そこ聞く? どうだろう、考えたこともなかったけど……」
「そうなんですかぁ」
「うん……ってそんなことはどうでもいいよ! それより事情を聞いてくれ」
なんなんだこの子は……
少しおかしな女の子に翻弄されながらも、将はなんとか事情を説明した。話終えると、女の子はゆっくりと立ち上がりながらも、疑いの視線を向けてきた。
「怪しさ150%です……」
そりゃそう簡単に信じてもらえるわけないか。
「そ、それよりさ、君はなんでこんなところに来たの? どこか具合…は良さそうだし、怪我でもしたの?」
将は誰かを呼ばれたら困ると考え、なんとか女の子をこの場にとどめようとする。
「わ、私はその……帰り道が……わからなくて」
「は、帰り道?」
女の子は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、小さく頷いた。
「帰り道って……いつも帰ってる道でしょ?」
「いつもはその……車でお迎えがくるから」
「そうなのか? でもなんで保健室?」
「だって、何か困ったことがあったら保健室に行けって、お兄ちゃんが」
なんて迷惑な兄貴だ。
「住所とか分かる?」
「はい」
女の子はウサギのぬいぐるみの首についているチャックを外すと、中からピンク色の携帯を取り出した。
なんかグロいな……
そんなことを考えていると、携帯を操作した女の子が、こちらに画面を向けてきた。
「見づらいな……」
遠目から何とか携帯の画面を覗き、住所を確認すると、近所までは行かないが、それなりにうちに近い住所だった。
「そこならわかるから、紙に書いてあげるよ」
「本当ですか?」
「ああ、じゃあ紙とペン貸してくれる」
「はい!」
彼女は元気よく返事をすると、ぬいぐるみを抱えてトコトコと近づいてきた。小動物みたいで実に可愛らしい。
ちょうど隣まで近寄ってくると、またウサギの首から手を突っ込んで、何かのプリントの裏と、シャーペンを一本取りだし、お腹におかれた。
「えっと、書けないからこのベルト外してもらっていいかな?」
「や」
見事な即答
「じゃあ書けない」
「え~! それは困ります! なんとかしてください!」
「なんとかするのはそっちだよ! このベルト取ってくれれば何でもしてあげるから!」
「それはやです!」
「なぜそこまで!?」
「だって外したら、変態さんに襲われてしまいます……」
そう言って軽蔑の眼差しを向けながら少し距離を取られた。
なんかショックだ……
「襲わないし! 変態じゃないし!」
「そこまで言うならチャンスを上げるです!」
「チャンス?」
「はい、私が出す質問の答え次第で変態さんじゃないかどうか見極めます!」
「おう! 望むところよ!」
あれ? 俺道教えるのに立場逆じゃね?
「じゃあいきます!」
この状況に違和感を覚えた将だったが、女の子はそんなことをまるで気にせずに、叫んだ。
「猫か犬、あなたはどちらが好きですか?」
「……え?」
「え? じゃないです! どちらが好きかを聞いているんですよ?」
「いや、そういうことじゃなくて」
なぜ変態から犬や猫に派生した?
すると彼女は、ハッと何かに気付いたような素振りを見せると、ぬいぐるみで少し顔を隠しながら、申し訳なさそうに言った。
「あ、もしかして猫と犬知りませんでしたか?」
「そんなわけあるか!」
「ひうっ! じゃ、じゃあ早く答えてくださいよ」
「だから~ってああもう!」
ううっ、とまた泣きそうになっている彼女に付き合ってるのが、だんだんバカバカしく思い、ほぼヤケクソ気味に答えた。
「犬だよ犬! 小型犬!」
「犬……」
「ほら答えたぞ……っておい、どうした?」
気付くと彼女は自分の横に立ち、ぬいぐるみの首からまた何かを取りだした。
カッターだ。
彼女はぬいぐるみを地面に落とすと、両手でカチカチっと刃を数センチ出し、今だに「犬……」と呟き、飛び出た鋭い刃を見つめている。
やばい、嫌な予感しかしない。
「おい、落ち着け、落ち着いてそれを捨てないさい。な?」
説得を試みるが、彼女は首を左右に振って、拒否の反応を示した。その目には既に先程の涙は残っていない。あるのは何かを決意した力強い瞳。
「大丈夫……です」
「何が!?」
「すぐに済みますから」
「済ます!?」
やっぱりこの子、殺る気だ!
彼女はカッターを逆さに持ち替え、両手を目いっぱい高くあげる。
死にたくないという本能が働き、なんとか抜けだそうとするが、無慈悲にもベルトは将を強く結び付けて離れない。
誰か助け――
「えいっ!」
グサッ!
求めた助けは誰にも届かず、可愛い掛け声と共に、刃はまっすぐに将の胸へと吸い込まれていった。
桐ケ谷 将17歳、こうして彼の人生は幕を閉じたのだった。
DEAD END
最近ヤンデレの漫画を探していたら、友達に
「未来日記は俺の中で最高のヤンデレ漫画だ」
とか言っていたので、昨日試しに1巻買ったら……めっちゃおもしれぇ!という感じで深夜1時に全巻買いに行ってしまった作者です。
みなさんも機会があればぜひ一度読んでみてください
あ、こちらもよろしくお願いしますね。