震・ヤンでれ…風呂…
……なんでこんなことになったんだろう
将は湯船につかりながら考えていた、この状況は一体なんなんだろうと
チラッと横目でシャワーの方を確認する。
「お兄様、髪の毛洗ってくださいよ」
そこには、生まれた姿のまま座っている義妹の姿があった。
こんな状況になった理由を知るには、今から少し前、帰ってきた直後に振り返る必要がある。
「ごちそうさまでした~」
帰宅した将達は、ご飯を作って待っていてくれていた千鶴さん達と共に、夕飯を一緒に食べた。
お腹もいっぱいになったし、そろそろに風呂にでも入るかな。
そう考えながらお腹を押さえていると、実もご飯を食べ終わったようで、食器を台所へと運んでいた。
そこで最近実と風呂に入っていないことに気付き、台所に届くくらいの音量で声を出す。
「実~たまには一緒に風呂入ろう「ブーーーー!!」」
実を風呂へ誘おうとしたら、反応したのは実ではなく、目の前でお茶を啜っていた静香で、全力で顔面にお茶シャワーをお見舞いしてきた。
おかげで机も顔もお茶だらけにされてしまった。
「突然何を言い出すんですか! お兄様!」
「お前は一体何を吹きだしてんだよ!」
近くに置いてあったティッシュで顔と床を吹きながら静香を睨むと、顔を赤くしながら静香も睨み返してきた。
「そんなことより! 実君とお風呂なんて! 何考えてるんですか!? まさか……ショタ……なんですか?」
「ちげーよ!! 別に兄弟でお風呂入ってもなんの問題ないだろう!」
相当なショックを受けたのか、静香は俯き、何か一人でぶつぶつ言いだしてしまった。
それにしても静香のせいで顔がベトベトだ、先に風呂入っちまうか。
「静香、実が来たら先に入ってるって言っといてくれな」
何かにやにやしだした静香にそれだけ言うと、リビングを出て、風呂場へと移動した。
浴室に辿りついた将は、服を脱ぎながら、先程の静香を思い出して何か嫌な予感がよぎるのを感じた。
だがさすがに顔面べとべとでの状態でベッドに入るほど、将は落ちぶれていない。
服を脱ぎ終わり、風呂場へ入ると、さっそくシャワーを顔面から思いっきりかぶった。
「あ~気持ちいい~なんか何もかもどうでもなってくるな~」
そのまま髪と体を念入りに洗ってから、風呂へとダイブ。
「あ~やばいな~これ」
つい声が漏れる。足から全体に伝わってくる温かさの虜になりなりそうだ。
お湯の気持ち良さに心も体もゆったりしていると、ガチャッと浴室の扉が開く音が聞こえた。
そういえば実と風呂に入るのなんて久しぶりだな~、静香達が来る前は結構一緒に入ることはあったけど、最近は全然なかったからな~
昔明に「お前ブラコン過ぎだろ」と言われたことがある。あの時は否定したが、今考えると間違いではなかったかもしれない。
ガチャッ
そんなことを考えているうちに、浴室から――
「お邪魔致します」
実ではない体が出てきた。
「……」
良く見ると、体は雪のように白く細くて、それでも出ているところはしっかり出ており、美しい長い黒髪が垂れ下がっていた。
そして不意に目が合った。
「そんなに見つめないでくださいお兄様」
「し、静香!?」
ポッと顔を赤くする静香、ここまで見て初めて理解した将は、慌てて背を向ける。
「なんでお前が入ってくるんだよ!」
「なんでって、いいじゃないですか別に」
「いやどう考えても良くないでしょ!?」
「でもお兄様が言ったんじゃないですか」
俺が言った?
テンパリながらも必死に考えるが、まったく覚えがないので聞き返して見る。
「何を」
すると静香は即答で、
「兄妹だからおかしくないって」
と答えた。
「いやそっちの兄妹じゃないから! こっちの兄弟、弟の方だよ!」
どういう勘違いしたらそっちの変換がされるんだ!?
今さらながら妹に恐怖した将だった。
「そうなんですか? まぁいいじゃないですか、兄妹なんですから」
しかし静香の方はまるで気にしないような素振りを見せている。更に、何かを思いついたように「あ!」と声を出す。
「もしかしてお兄様……意識してます?」
「し、してねぇ!」
明らかな挑発だったが、ここは否定しておかないと、兄として、兄妹として色々ダメになりそうなのでしかたがない。
もちろんこのことを予想していたが如く、静香はうれしそうな声で話を続ける。
「なら別に問題ありませんよね」
「いや、でも」
それでも何とか止めようとする将に、それを聞いた静香は喜びから一転、悲しみに満ちた声で言った。
「それとも私とは兄妹ではないと言うんですか?」
おそらく演技が混ざっているのだろう、わかってはいるが、もはや将には彼女を止めることはできなかった。
と、まぁ結局今に至るわけなんだけどね。
「お兄様聞いてますか?」
「自分で洗いなさい」
「え~~」と文句を言う静香はしばらくの間ぶ~ぶ~言っていたが、将が無視を続けると、すぐにまた別の手口で仕掛けてきた。
「仕方ありません……」
はぁ、と後ろから静香の溜息が聞こえてくる。
やっと諦めたか?
「叫びますか……」
「やめてください!!」
悲痛の叫びが風呂場に届きに、静香は確実に将を嵌めていく。
「じゃあ、わかってますよね?」
こんなところで悲鳴なんて上げられたら、俺の人生大変なことになってしまう。
静香の言葉に、将は小さく頷くことしかできなかった。
「じゃあとりあえずこっち向いてください。それでは洗えないですよ」
「お前ちゃんとタオルとか巻いてるだろうな?」
「大丈夫ですよ」
本当か? と少し疑うが、このままだと本当に叫ばれるかもしれないので、おそるおそる振り返ってみる。
するとそこにはタオルを巻いた静香の姿が――
「ってタオル小せぇ!!」
「何か問題が?」
振り返って目にした静香の体には、本当に大事な所しか隠していない、スポーツタオルが乗っているだけ、胸の部分は長い髪でなんとか見えないで済んでいた。
「なんでそんなタオル使ってるんだよ!」
しかもスポーツタオルの中でもかなり小さいし!
「え? 困りましたね。これ以上小さいのはないんですよ」
「なぜそっちに発想がいく!?」
どう考えても静香の脳の処理はバグっている!
「あ、ハンカチがありました!」
おお! と少し驚いた顔をする静香を見て、
「……もう髪を洗わせてください」
将はさっさとこの生き地獄を終わらせよう諦めた。