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ヤンでれ…  作者: XXXX
13/32

震・ヤンでれ…帰宅…

 合図と共に、モニターに映し出された二人のキャラクターが激しく動き始めた。空中、地上、で激しくガードと攻撃が繰り返されている。

 二人が共通しているのは、小パンしか出さない。ガードは全て当たる寸前、投げ抜けはCPU以上ということだ。

 投げ抜けに関しては、投げられるときに出てくるビックリマークのアイコンが見えないほど高速な投げ抜けだ。


 というか良くゲームが反応してると思うよ。


 この大会は2回戦方式で、先に二本勝ちした方の勝利という、まぁ普通の大会とさほど変わらないのだ。

 大会中、二人の威圧か何かのせいなのか。周りの観客まで黙りこんでいる。ふつうはこんな戦いがあったら動画を取ろうとする奴とか出てきそうだが、誰も何も言わず、ただ黙って試合の行く末を見守った。


 ってかこの戦いは終わるのか?


 今だライフの減らない二人を見て、溜息を零す将であった。




「……では、今日の大会はこれで終了します。ありがとうございました。」


 店員のお礼の言葉で大会は締めくくられ、終わりを迎えた。


 まぁ結局、決勝戦の結果は――


「あと少しで倒せたんですよ? お兄様」


「それはこっちのセリフです」


 二人が両腕にしがみ付いて喧嘩をしている。


 結果は引き分け、二人は結局タイムアップという結果になり、お互いのノーダメージのため引き分け。勝者はなしだ。


 ということは、あの賭けも必然的になくなるわけで、俺にとってはこれ程いい終わり方はなかったと言える。めでたしめでたし


「もしかしてお兄様。“よかった、賭けはなしか”とか思っていらっしゃいますか?」


「え?」


 なんで分かった?


「顔に出てるよ将君」


 凛に指摘され、思わず表情を硬くした。


「まぁでもほら、勝者は結局いなかったわけだし、あの賭けはなしでしょ?」


「何を言ってるの将君? あの場合は二人が優勝っていうことになるんだよ?」


「そうです。ですからあの約束は健在ですよ」


「は? いや、俺二人のお願いなんてかなえられないし」


 色々な意味を含めてね。


「大丈夫です、二人の願いが同じなら、不本意ですが一緒で問題ありません。」


「私もかなり嫌だけど、それしかないなら仕方ないから我慢する」


嫌ならやめろよと思いながらも、二人は勝手に話を進行させていく


「一応聞くが、なんだ? そのお願いって奴は……」


 すると将の言葉に、しがみ付いていた二人が同時に見上げて言った。


「「デート!」」


 ……デート?


①デート②喧嘩勃発③病院行き


 この三つが頭の中に思い浮かぶ。


 行きたくねぇ!!


そんな将の考えに感づいたのか、じっと凛が見上げてきた。


「もしかして将君、今行きたくないなんて思った?」


「いや……そんなこと……ない」


 本当はそんなことあるんだが、凛の上目使いが妙に可愛いと思ってしまい、つい顔をそらしてしまう。それに気付いた静香に腕に力を入れられ、痛い思いをしてしまった。


「じゃあ決まりですね。今度の土曜日に開始ということで」


 結局流されるまま、デートの日程は決まってしまった。俺将来確実に尻にしかれるだろうなと感じながら、帰りの道を歩いていく三人。


 その中で、将はただ一人感じていた。


 周りの視線……痛いです。





 あれから時間が経過し、せっかくなので色々デパートを見て回ったりしていると、いつの間にか夜の7時になったところだった。

 ちなみにロリコンはは修行するらしく、バイト代を全ておろして再びゲーセンへ行ってしまった。

 今はようやく駅に着き、自宅に向かって歩いている時だった。


「すいません。今日はこれから用事があるので、ここで別れさせてもらいます」


言いだしたのは凛であった。あと少しで家に着くと言う時に、唐突に凛が腕から離れてそう言った。


「さっさと消えなさいよ」


「静香、そんなこと言うなよ。でもこんな時間にどこに行くんだ?」


 鋭く冷たく言う静香の頭をコツンッと叩きながら、凛にその理由を窺う。


「うん、少し野菜を買いに八百屋に」


「ああ、そういうことか、ならまたうちで食べたらどうだ?」


 どうせ千鶴さんのことだから、文句を言いつつ作ってくれるだろう。


 一番の問題である静香は、「今日はもう頭洗いません……」とか汚いことを言っているので、ほおっておけば問題ないだろう。


「ううん、今日はやめておくわ、明日のご飯のこととかもあるし」


 本当に残念そうな顔をしながら頭を下げる静香。


「そっか、なら仕方ないな。また明日学校で会おう」


「はい、では」


 笑顔で別れを告げると、凛はゆっくりと歩いて行った。その背中を見届けると、自分達も再び帰路に着いた。


「ほら、いつまでもぼーっとしてないで俺達も早く行くぞ」


 いつまでも頭を撫でている静香を置いて、将はゆっくりと歩き始めた。


 その後、家に帰るまで、静香はずっと外で放心状態だったらしい。



 凛は将達と別れた後、商店街を突き抜け、真夜中の学校へと訪れていた。


 「みんな集まってくれましたか?」


 場所は校庭、目の前には、たくさんの男子達がうようよと群がってきている。これらの人間は全て凛の親衛隊、もといファンクラブだ。


 「突然どうしたの? 学校なんかに呼び出したりして」


 「それには理由があります」


 誰もが思っていることを代弁する男子に、凛は先程から持っているものを前に突き出し、場を静寂させた。


 持っているのは槍のような棒だ。凛はその棒を地面に突き立て、まっすぐにファン達を見て、切り裂くような鋭い声で言った。


「これより……桐ケ谷 将を殺します」


 男子達は、一瞬凛が何を言っているのか理解出来ていないようだった。だがそんなこと知らないといった感じで、更に言葉を進める。


「誰かこの中で、私と一緒に桐ケ谷 将を殺しに行きたい。もしくは半殺しにしたい人がいたら、前に出てください」


 この言葉に、全員顔を見合わせ不思議に思ったが、一人の男子が前に出ると、我先にと、次々と男子が前へと出てくる。

 普通に考えれば、昨日までべったり将にくっついていた凛が、突然こんなことを言い出すなんておかしいと思うはずだが、今のファン達には、日頃から溜まっている将への恨み、妬みで、そんなことを考えもしなかった。


 そして1分も経たずに、ほぼ全員が前に集まり、和気藹藹と話をしていた。


「どうやってやりましょうか」

「とりあえず3回は殴りたい」

「俺も!」


 などの会話だ。


 そんな男子諸君を、凛は笑顔で出迎えた。


「集まってくださった皆さん、ありがとうございます」


 ぺこりとお礼を言うと、そのまま集まったものたちの人数を数え始める。


 ざっと百ちょいくらいかな? どうしよう、思ったより時間借かりそうだ。


 もう一度見渡して、仕方ないか、と諦めを付けると、地面に突き刺した棒を勢いよく引き抜き、構えを取った。


「ではこれより、将君の敵を排除させていただきます」


 凛の言葉に、敵がえ? という表情に変わるのが分かる。


 そして凛は目の前にいる敵に向かって突っ込んでいったのだった。


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