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ヤンでれ…  作者: XXXX
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ヤンでれ……上

表紙、キャラ絵は本人がいないので消えました。(´・ω・`)

誰か描いてくれる方がいればぜひお願いしたいです、

友達に言われ、ヤンデレを書いてみることにしました。駄文ですが、読んでもらえれば幸いです。






「…兄…きて」


「ん~、あと3分……」


 誰かが体を揺さぶって起こそうとしているのがわかる、しかし体が眠いせいか、寝ぼけている桐ヶきりがや しょうの脳は睡眠を優先させ、拒否の反応を示していた。


「起きてく……い」


――おかしい。


 将は寝かけていた頭をできるだけ早く回転させる。何かがおかしいのだ、そう、いつもとは何かが違っていた。

 何が違うのかははっきりとしないが、何かが違う。


 眠い頭で考えているうちに頭がだんだん覚めていき、そしてあることに気づいた。


――声が違う


 いつも自分を起こしているのは弟のはず、なのに、今自分を起こしているのは透き通るソプラノのような声、つまり女の声。そこまで気づくと将の目は完全に覚め、目を開けた。


 するとびっくり、目の前にはとんでもない美少女の顔があり、徐々に近づいてきている。


「うわああぁ!」


 将は大声をあげると、ベッドの布団から飛び出し、背中が壁に付くまで全力で後退した。


「ななな、なにやってるんだよ静香!」


 目の前で四つん這いになって迫ってきた彼女の名は、宮代 静香{みやしろ しずか}、とんでもない美少女で、容姿は腰まで伸びている漆黒の黒髪、小さい人形のような愛らしい顔、完璧すぎるプロポーション、雪のように白い肌、現代ではありえないほどの大和撫子だ、しかも成績は常に満点、スポーツ、武術などもでき、もはや弱点などない完璧超人、学校にはもちろんファンクラブも存在する、女子、男子、教師合わせて9割以上が会員というもはや巨大組織だ。将の父の再婚相手の連れ子で、一週間前くらいから桐ヶ谷家に住んでいる、しかし婚姻届を出す前日に父が交通事故で死んでしまい、正確には他人で同棲の形になる。


 なぜ同棲の形で居座っているのかはわからないが、今はそんなことを気にせず、自分の家族だと思っている。


「…あと少しでしたのに…」


 自分の口に指を添えながら拗ねたように静香は呟いた。将はそのあまりの可愛らしさと艶めかしさにに一瞬見とれてしまったが、首をぶんぶん横に振ると、すぐにベッドから這い出た。


「着替えるから早く出てってくれよ!」


 顔が赤くなっているのがわかる。これ以上一緒にいると朝の生理現象が発生してしまう、そう感じた将は、扉を指さしながら出て行くように命じるが、


「お兄様!」


「うわっ!」


 話を聞いていないのか、静香は背中に飛びついてきた。


 いきなりうしろから抱きつかれ、思わず前に倒れそうになるのを何とか踏み留まるが、そのせいで背中に伝わってくる柔らかな感触をより強く感じてしまい。将の息子が静かに覚醒を始めてしまっていた。


「あ、あぶないだろ!は、はやく出てけよ!」


「ええ~どうしようかな~」


 悪戯好きな悪魔みたいなことを言いながら、静香は抱きつきながら胸などを手で触ってくる。将は必死に振りほどこうとするが、その華奢な体のどこにそんな力があるのか、びくともしない。


「ああ、お兄様、いい匂いです…」


 首の匂いを嗅いでいるのか、静香が肩に顔を乗せてきた、首に静香の吐息が掛かり、思わず背中がゾクリとする。しかも女の子独特ないい匂いがし、将の息子は静香に覚醒を完了していた。


「や、やめろ静香」


 何かに耐えるように弱弱しく口にすると、静香は将の状態に気づいたのか、にやりと笑いながら触れていた手を少しずつ下へ移動してきた。


「ば、ちょっ、やめろって!」


――まずい!


 すぐに止めようと静香の腕を掴むが、まるで万力機械のように腕は止まらない。そんな将の焦った様子を楽しみながら、静香はなおも手を進め、そしてついにそこへ手が到達しそうになった瞬間。


「お兄ちゃん、朝だよ~」


 ガチャッという音ともに扉が開かれ、弟の桐ヶきりがや みのるが部屋の中へと入ってきた。それと同時に二人とも手を止め、実の方へ視線を向ける。


「なにしてるの?朝ごはんできてるから早く降りてきなさいって母さんが」


「ああわかった、すぐ行くよ」


「うん!」


 実は将に頭を撫でて貰うと、上機嫌で部屋から出て行った。

 

――危なかった、もし実が来なかったら…


 そう思うとぞっとする、実が来てくれて本当に良かった……

 

 そこで将はようやく静香の腕の拘束がなくなっていることに気づいた。


 さすがの静香も弟の前では冷静になったか。


「服は……後でいいか、静香、先降りてるぞ~」


 そう言い残すと、将は一人先に部屋を出て行った。


 そんな様子を後ろから見ていた静香はショックを受けていた。なにに対して? それは――、


 …なんで?…なんでそんな安心したような顔するの?


 そう


 …いや…それよりも…


 宮代静香は


 …あの弟に見せた笑顔…私には見せない笑顔


 桐ヶ谷将に


 …義弟が…憎い…

 

 ヤンデイタ…



・・・・・・・

・・・・・

・・・



「おはよう千鶴さん」


「あら、おはよう将くん」


 リビングに顔を出すと、静香の母、宮代千鶴みやしろ ちずるさんが笑顔で出迎えてくれていた、将は挨拶を済ますと、すでに座っている実の隣の椅子に座る。


「お兄ちゃん今朝はお姉ちゃんと何してたの?」


 実の純粋な質問に、一瞬どきっとしてしまう。


「えーと、べ、別になにもしてないぞ」

 

 ”えっちなことしてました”なんてさすがに言えないな。


「ごめんなさいね将くん、いつも静香が迷惑かけて」


 適当に話しを流していると、まるで何があったかを悟っているような言い方をしながら、千鶴さんが牛乳とパンを持ってきてくれた。


「いえ、そんなことないですよ」


 本当は結構な迷惑を受けているが、母親の手前笑顔で返答する。


 そう、静香との朝の騒動は、一度二度ではなくほぼ毎日続いてるのだ。朝、学校、夜、どこにいてもとにかくくっついてくる。静香程の美少女に懐かれ、最初は浮かれていたが、だんだんとエスカレートしてきており、最近ではなるべくくっつかないよう気を付けていた。


 というか家より学校のほうが大変だよ、主に男子の殺気のこもった視線が、


 ふぅ、と小さな溜め息を零しながら、焼き立てのパンに苺ジャムを塗って齧りつく。サクサクの食感に甘い風味が、朝の疲れを癒してくれている。


「おはようございます」


 少しすると静香もリビングにやってきて、いつものように将の隣に座り、母親からパンと牛乳を受け取る。


「千鶴さん、今日は帰り遅いんですか?」


「そうね~、遅くなると思うから夕飯食べててもらえる?」


「わかりました」


 千鶴さんのことはよくわかっていないが、どこかの大手会社の社長をしているらしい、本当ならこんな普通の一軒家でなく、もっとでかい家があるのに、なぜかここに住んでいる。将にもその理由はわかっていなかった。


「そろそろ出ないとやばいな、実、先に行きな、静香、悪いけど着替えてくるから先に外に出ててくれ」


「うん、わかった」


「わかりました、お兄様」


 三人とも自分の食器を片付け、リビングを出た。実は言われた通り一人で「いってきます」と言って先に行った。


 そして将は制服に着替えるために自室に戻ってきたわけだが、


「…で、なんでお前まで俺の部屋に来るんだ? 静香」


「着替えを手伝おうかと思って」


 なぜか静香まで着いてきました。 


「いらない」


「む~」


 勝手に部屋までついてきて、不満を言う静香を追い返し、急いで制服に着替え始める。


 相変わらず得意ではないネクタイ結びに少し手こずりながらも、なんとか紺の制服を着こなし、鞄を持って部屋を出る。


「おまたせ」


 玄関で待っていた静香に軽く謝ると、一緒に家を出る。しかし家を出て数秒、後ろから千鶴さんが追いかけてきた。


「将くん! 忘れ物!」


「忘れ物?」


 そういって差し出されたものはお弁当、そういえば急いでいたせいですっかり忘れてた。


「千鶴の愛妻弁当」


「おわっ!」


 千鶴さんの一言に、受け取りかけていた弁当を一瞬離してしまい、慌てて持ち直す。


 そんな将を見て千鶴さんは口を押さえながら笑っていた、からかわれているのがわかっていても顔を赤くなってしまう。そんな自分を情けないと思う。


 いや仕方ないんだ、だって千鶴さん子持ちとは思えないほど綺麗だし、静香の容姿は間違いなく母親にだ。


「あらあら慌てちゃって、かわいい」


「冗談はよしてくださいよ、千鶴さん」


「あら、ごめんなさい」


「はぁ、もういいです。行こうか静香…ってあれ?」


 千鶴さんにからかわれ、逃げるように後ろにいるはずの静香に声をかけたつもりだったが、いつの間にか静香の姿はなかった。


「あら、先いっちゃったのかしら」


「そうですね、俺も追いかけることにします」


「いってらっしゃい」


 将は千鶴さんい行って来ますと返す、すぐに静香の後を追うのだった。





「はぁはぁはぁっ」


 宮代静香は疲れた体を休ませるために、電信柱に手を付き荒くなった息を整える。


 静香は兄が母から弁当を受け取るところをじっと見ていた、すると母は兄に愛妻弁当と言っ渡し、それを兄は赤くなりながら受け取っていた。


 それを見た途端、無意識のうちに静香は走り出していた。


 自分の中にどす黒い何かが渦巻いてるのを感じる。


――お母様…本気だ…


 静香は確信したのだ。自分の母が本気で兄に好意を抱いていることに、何年も家族をやっているのだ、さっきの母の行動が冗談ではないことがわかる。


 なぜなら母は冗談などを言う人間ではないと知っているから、となるとあの弁当の意味は――


「嫌だ…」


――いくらお母様でも、お兄様だけは絶対に渡さない。触れさせたくもない!


 でもどうやって?


 そんなことを考えている静香の前にアリが二匹、虫の死骸を取り合っていた。そんな光景を静香はじっと見つめる。


 周りから他の生徒が静香を見ているが、そんなことは気にしない。


 するとやがて、片方のアリがもう片方のアリをかみ殺し、死骸を運んでいく。これが自然の摂理


 弱肉強食。


「これだ…」


 静香はそう小さく呟くと、不気味な笑みを浮かべながら、学校への道を歩み始めたのだった。





 いつの間にかいなくなっていた静香を追うように、少し急いで通学路を進むが、静香の姿は一向に見えてこない。


「どうしたんだろ、静香の奴、先に行くなんて珍しいな…まさか待ち伏せなんてないよな?」


 冗談で口にしてみたが、後から気づいた。


 ありえる。


 そうだ、相手はあの静香だ、公衆の面前で突然抱きついて来てもおかしくない。そう考えると将は常に周りを気にしながら学校へと向かった。




「すいません」


「で、遅れた理由は?」


 今現在、将は担任の教師、平沢先生にしかられている。まぁ結論を言うと遅刻したのだ、あまりに周りを気をつけすぎたせいで、門を通ったあとにチャイムが鳴ってしまった。しかも教室に入った瞬間に静香に抱きつかれ、結局警戒した意味はなかった。


とりあえず抱きついてきた静香をかわし、男子からの殺気に耐え、今は遅れた理由を問われていた。


「ゆっくり歩いてたら遅れました。」


「そうか、じゃあ廊下に立ってろ。」


 遅れただけで? そう思った将は反論しようとしたが、先生も静香のファンだったことを思い出し、あきらめて廊下に立っていることにした、教室を出るとき、静香が教師をにらみながら鉛筆を折っていたのは見間違いではないだろう。


 ホームルームが終わり先生が教室から出ていき、将は自分の教室に入った。


 自分の席に座ると、右の席に座っている静香からさっそく声をかけられた。


「お兄様! 大丈夫ですか?」


「大丈夫って、ただ立ってただけだよ」

 

 静香が心配そうに体をぺたぺた触ってくる、俺どんだけひ弱だと思われてんだ。


「そうですけど」


 静香は将に関してだけはすごい心配性だ、こないだは転んだだけで救急車を呼ばれそうになり、大惨事となったこともあるくらいだ。

 

 兄としてなんだが情けなくなってくる。


「はっはっは!さすがだな~将」


「突然なんだよ、明」


 今度は左の席から声をかけられた、親友の古河こが あきらだ。スポーツは何でもでき、勉強もそこそこできる。しかもイケメンで明るいということで、当然女子からはもてもてだ。


「いや~朝から笑わせてもらったよ。まさか遅れた理由が”ゆっくりました”だなんて、くくっ、馬鹿にしてるとしか思えない理由じゃねぇか」


「本当のことなんだからしかたないだろ」


――まさか静香を警戒してきたなんて言えないしな


「ふ~んまぁいいや、それより将、お前放課後暇か?」


「ああ、ひ「暇じゃありません」」


 暇だと言おうとしたら、なぜか話しを聞いていた静香に返答されてしまった。将が何か言おうとすると、それを遮るように明が口を出した。


「久々にゲーセン行こうと思ったんだけど、もちろん宮代さんも一緒に」


「行きません、あんなタバコ臭いところ」


 基本的に静香はタバコが嫌いらしく、あまりゲーセンには行きたがらない。これはおとなしく帰るかな。


 そこで終わりかとおもわれたが、明が邪悪な笑みを浮かべながら告げた。


「カップルで撮る、プリクラもあるんだけど」


「行きます! ちょうど今日暇だったんです!」


「即答!?」


 さっきは暇じゃないとかいってたのに何いってんだ? 将は横目で静香を睨むが、静香は気づいているのかいないのか、明と話を続けている。


「じゃあ放課後」


「はい」


 結局最後まで何も言えないまま終わってしまった…しかも勝手にゲーセンに行く約束までされてしまっている。


 ま、最近行ってなかったしいいけどね。







この時は思いもしなかった…まさかあんなことになるなんて…


 

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