第七話…小犬?子犬?小犬丸!!
爺さんに別れを告げることなく納屋を飛び出した桃太郎。
懸命に東條のあとを追い、無事に明朝までに東條の屋敷まで辿り着いた。
馬を走らせ先に到着していた東條は桃太郎の姿に驚きを隠せない様子。
東條「君は…あの納屋にいた…うっ!」
東條は急に胸ぐらを掴まれ言葉を詰まらせる。
桃太郎「お前、いくらでも金は払うって言ったな!?」
苦しくて離してくれと桃太郎の手を叩く東條。
東條「あぁ…間違いなく。」
桃太郎「なら、俺が行ってやるよ。」
桃太郎は金のために山を飛び出したのだった。
爺さん、婆さんに愛情をもらい何か恩返しをしたかったが何も出来ない自分に歯痒さを感じていた。
それも獅子王を倒すことも重なり桃太郎にとっては一石二鳥の依頼。
受けない手はないと考えたのだ。
東條「本当か!?ありがとう。依頼内容は…君の家でも話した通り、私の娘…鶴羽を勘解由小路の棲む鬼ヶ島からの奪還をお願いしたい。残念ながら…私の呼びかけに反応を示してくれたのは君だけのようだ。私の従者も向かわせたいところだが、以前の襲撃・町の守護に手を回していて人手不足でな。少しでも集ってくれる者が居れば君の助けにもなったやもしれんのに…すまない。」
桃太郎「構うか!そんなもん!その金が独り占め出来んだ…好都合じゃねぇか。」
とてつもなく悪い顔をしている桃太郎。
と、そこに「ちょっと待ったー!」と大きな声が響く。
「今の話…聞かせて貰ったぜ!」
辺りを見渡す桃太郎。
桃太郎「じゃ、俺行くわ。」
その場を後にしようとする桃太郎。
「待て待て!無視するなー!」
桃太郎の目の前に150㎝ほどの長刀を背負った男が立っていた。
東條もあまりの小ささに驚きを隠せない。
それもそのはず…声をかけたのは少なくとも腕に自信がありそうな者たちばかり。
どこで噂を聞きつけ現れたのかと思いながらも…
東條「すまないが…これは子供が関われるほど甘い仕事じゃないだ。」
「俺は子供じゃねぇ!齢21の歴とした大人だ!」
桃太郎・東條「…」
「何黙ってんだよ!?あんま舐めんなよ?」
桃太郎「足手纏いだ。着いてくんな?お前、弱そうだし…」
桃太郎が歩を進めると小さき男が再び動線上に桃太郎に背を向けるように立ち道を塞ぐ。
男は刀をスーッと納めながら…
「俺は小犬丸。日の本一の剣豪になる男だ。」
すると桃太郎の頬にスーッと切り傷が現れ血が流れていた。
小犬丸「お前こそ、足手纏いだ。依頼料は俺が全部頂くぜ。」
桃太郎、ニコリと笑い。
桃太郎「おもしれぇ…俺の金を奪えるもんなら奪ってみやがれ!」
桃太郎は刀を抜き勢いよく飛び込む。
東條は「2人で行ってくれれば良い」と声をかけたが血が上った桃太郎の耳には入ることもなく無情にも2人の対決が始まった。
飛び込んで来た桃太郎の雑な大振りを小犬丸はサッと躱し首元に長刀を突きつけ言い放つ。
小犬丸「お前、刀使ったことないだろ?」
桃太郎「だったら…?」
小犬丸「一本。俺がお前の首を取った。終わりだ…」
桃太郎、膝立ちの状態から身体を翻し小犬丸のお腹に蹴りを打ち込む。
小犬丸は想定していない動きにガードが間に合わず吹き飛ばされる。
桃太郎「繋がってんだろ?俺の首…。」
再び飛びかかる桃太郎。
小犬丸の復帰が間に合わないうちに首元に向け大振りをする。
が小犬丸が腹を押さえて膝をついたことによりギリギリのところで躱した。
すると…ぐぅーという音がその場に響く。
小犬丸「…は…腹減った。」
お腹が空いただけであった。
その馬鹿らしさに思わず笑ってしまう東條。
場の空気が一変する。
桃太郎も拍子抜けの一発に刀を収め懐から包みを出して…
桃太郎「食え。俺がいつも持たされてる母ちゃんの作った団子だ。」
小犬丸は飛びつき団子を貪るように食べた。
桃太郎「お前、鬼ヶ島には詳しいか?」
小犬丸「いや、詳しくはない!俺は旅して暮らしてるからな。」
桃太郎「じゃあ、俺にこいつ(刀)を教えろ。それが条件だ。」
小犬丸「条件?」
不思議そうな目をして見つめる。
それはまさに小犬のような表情で。
桃太郎「俺が勝ったんだ。ついて来るなら条件くらい飲め!」
小犬丸「あ!てめぇ!」
桃太郎「じゃあ、団子返せ!」
小犬丸「あ…。」
すでに全部食べた後であった。
小犬丸「わかったよ!!」
悔しそうな表情を浮かべる小犬丸。
東條「そなたらの実力見せて貰った。2人で向かってくれるのであれば、私としても安心だ。娘をよろしく頼みます。」
そう告げると桃太郎はそそくさと屋敷を後にし爺さん婆さんが住む山の更に奥へと聳え立つ2つに連なる鬼ヶ島へと向かうのだった。
桃太郎「いくぞー、子犬ー。」
小犬丸「俺は小犬丸だ!!!」
小犬丸という仲間を連れて。
「へぇ〜、あいつら…面白そうじゃん。」
普段は舞台の出演・脚本・演出をやっています。
もっと多くの方に知って頂く機会と自分の可能性を少しでも追い求めて作品投稿を始めました




